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西武新宿線、「小江戸」用ニューレッドアロー後継はどうなる? 2026年運行開始後の姿は

小林拓矢フリーライター
通勤にも観光にも利用される「小江戸」(写真:イメージマート)

 先日、西武鉄道は「2024年度 鉄道事業設備投資計画」を発表した。その中で今後のこととして、「新宿線 有料着席サービスの刷新」を計画していることを示した。

 現在、新宿線で特急「小江戸」のために使用されている10000系「ニューレッドアロー」を、今後新たな車両に置き換えるとともに、有料着席サービスの刷新を検討しているという、柔軟な運行形態や利用者の着席機会の拡充などのサービス向上を図る。運行は2026年度中に開始する。

 西武鉄道の特急といえば、池袋線「ちちぶ」「むさし」で使用している001系「Laview」が有名である。妹島和世デザインの優美なフォルム、快適な車内で多くの人の心をつかみ、利用者を虜にした。

 この001系をそのまま、新宿線に入れればいいのではないか? と思う人も多いはずである。

池袋線系統で人気の「Laview」は8両編成
池袋線系統で人気の「Laview」は8両編成写真:イメージマート

本川越駅の制約が「ニューレッドアロー」を残した

 新宿線の終着駅である本川越駅は、10両編成が停車できるホームが2線、7両編成が停車できるホームが1線の、頭端式ホームとなっている。7両編成のホームに、「小江戸」が停車する。10000系「ニューレッドアロー」は、7両編成である。

 001系「Laview」は、入れないのだ。

 しかし、10000系「ニューレッドアロー」は、車両の老朽化という問題を抱えている。しかも足回りは、旧「レッドアロー」の5000系や、古い一般列車用のものを流用している。

 要は、くたびれた車両となっているのだ。

 しかも001系は、8両で一式、といった形で設計しているため、適当な付随車を抜き取って7両に、ということもできない。

 もし特急「小江戸」を残すなら、新型車両を投入しなければならない。しかし、「有料着席サービスの刷新を検討」とある。

 単に特急を新規に投入するだけではだめなのか、という問題がある。

東武東上線「TJライナー」の存在

 都心部から川越エリアでは、東武東上線も競合路線として存在している。「小江戸」は西武新宿から本川越まで45分から49分程度である。特急券は500円。いっぽう東武東上線「TJライナー」は池袋から川越市まで28分。座席指定券は370円。

「TJライナー」に使用する車両は、ロング・クロス転換可能な座席であり、「小江戸」のようにリクライニングできる特急専用車両ではない。サービスは西武鉄道の「小江戸」より低いけれども、速達性は高い列車が競合しているという問題がある。

東武東上線の着席サービス「TJライナー」
東武東上線の着席サービス「TJライナー」写真:イメージマート

ライナーか、特急か?

 おそらく西武鉄道は、「拝島ライナー」の本川越行きバージョン、あるいは新型特急車両の投入、両方を考えていると想定する。着席機会の拡充なども実施したいという考えだ。

 いっぽうで、本川越駅が7両編成までという制約もある。

 しかし、拝島方面については、中央線・青梅線にグリーン車が投入されるという事情もあり、それへの対抗も必要だ。

 となると、西武新宿を10両編成で出発し、小平で拝島方面と本川越方面に分割、それぞれの方向に向かうという特急列車ができる可能性もあるのだ。もっとも、そのためには小平の配線を変える必要がある。

 これだと本川越のホームでの制約も回避でき、かつ輸送力も確保でき、拝島方面へのサービスも向上する。

 デラックスさという点で他社に優位を示すには、このような方法もあるのではないだろうか。

 それとも本川越の特急ホームを延伸してしまうか。

 観光にも通勤にも便利な私鉄特急として、「小江戸」には残り続けてほしい。「TJライナー」では味わえない快適さを求める人へのサービスは、続けてほしいと思うばかりである。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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