本格的な飛散がはじまった今年のスギ花粉症。簡単に治療をおさらいいたします
しかも、過去10年で最多の飛散かもしれないという予測がされています[1]。
そこで今回は、いままでの私自身の記事も引用しながら、スギ花粉症の治療に関する情報を簡単にまとめてみようと思います。
症状が始まったら、はやめに治療を開始しましょう
症状が強くなったらではなく、『症状を感じ始めたら早めに』治療をはじめると、今後の症状のヤマを低くすることができることがわかっています[2]。
では、どのような治療から開始すれば良いのでしょうか?
さまざまな薬剤がありますが、筆者は、抗ヒスタミン薬±鼻噴霧ステロイド薬で治療開始し、点眼用抗ヒスタミン薬を追加することが多いです。
順に解説いたしましょう。
抗ヒスタミン薬は、どれを選ぶ?
一般的には、『自動車の運転等の注意の記載が無い』製品から選択することを勧めています。自動車の運転をしない子どもでも、勉強への影響が少ないと考えられるからです。
具体的には、クラリチン(ロラタジン)、アレグラ(フェキソフェナジン)、デザレックス(デスロラタジン)、ビラノア(ビラスチン)が『自動車の運転等の注意の記載が無い』製品です(もちろん、それ以外の薬剤がいけないわけではありません)。
子どもは年齢ごとに使用できる薬剤に差があり、わかりにくくなっていますので、簡単に表を示します。
なお、小児に頻用されている粉タイプのアレグラ(フェキソフェナジン)が、2023年2月上旬以降、欠品が避けられない状況に陥っています[3]。
そこで在庫の問題で処方が困難な場合は、他の薬を選択することも多くなってきています。
鼻噴霧ステロイド薬は、どれを選ぶ?
市販の鼻噴霧薬には『血管収縮薬』が含まれることがほとんどです。血管収縮薬は、長期間使用すると薬剤性鼻炎というとても強い鼻詰まりを起こす事があり注意が必要です[4]。
処方薬の鼻噴霧ステロイド薬は、きわめて副作用がすくなく、目の症状にも少し効果が期待できるという研究結果も報告されています[5]。
できれば医療機関で処方していただくことをお勧めします。
点眼薬は、どれを選ぶ?
薬効成分として、抗ヒスタミン薬がもっとも利用されています。
抗ヒスタミン薬だけで効果が不十分な場合、ステロイドを含む点眼液が使用されることがあります。しかし、ステロイド点眼液は、『眼圧が上がる』可能性があり、ご面倒でもぜひ眼科医を受診して処方していただくことをお勧めします[6]。
抗ヒスタミン薬の点眼薬もさまざまな種類があります。
コンタクトの使用が可能かどうか、薬価、1日の点眼回数を参考にすると良いでしょう。
簡単に表を示します。
予防を考えていくならば、『舌下免疫療法』
『舌下免疫療法』は、スギ花粉症の根治が目指せるほぼ唯一の治療法で、保険適用となっています[7]。スギ花粉症に対する舌下免疫療法が、ヒノキ花粉症にも有効という報告もあります[8]。
ただし、花粉の飛散時期に開始することはできませんので、今シーズンにはもう間に合わないことになります。6月くらいから治療開始をして、来シーズンに備えることになるでしょう。
さらに重症の方には…
もちろん、メガネやマスクは重要です[9][10]。
そして、抗ヒスタミン薬の増量や、他の抗アレルギー薬の併用などを行っても難しいような重症の花粉症の方には、オマリズマブ(ゾレア)という注射薬が2019年より12歳以上に保険適用になりました。
スギ花粉症を起こすIgE抗体を中和する注射薬であり、高価ではありますが有効性は高いです[11]。
稀に筋肉注射のステロイドを実施している医療機関がありますが、全身的な副作用が強く勧められません[12]。
さて今回は、本格飛散がはじまったスギ花粉症に関して、ざっくりと治療法をお話しました。
この記事がなにかのお役に立てば幸いです。
【参考文献】
[1]【速報】花粉シーズン到来 10日から飛散開始 平年より5日早く 過去10年で最多か 東京都発表
[2]Allergol Int 2012; 61:295-304.
[3]アレルギー性疾患治療剤フェキソフェナジン塩酸塩製剤「アレグラドライシロップ 5%」 欠品のお詫び(公益社団法人日本皮膚科学会)(2023年2月15日アクセス)
[4]花粉症に、鼻にスプレーする市販薬を使ってもいいですか?
[5]花粉症による鼻症状への治療が、目の症状にも効果があるってホント?
[6]あなたの点眼液、ステロイドではないですか?まずは確認してみましょう
[7]スギ花粉症の薬を減らしたり、根治も期待できる『舌下免疫療法』とは?
[8]Kurokawa T, et al. Efficacy of Japanese cedar pollen sublingual immunotherapy tablets for Japanese cypress pollinosis. Journal of Allergy and Clinical Immunology: Global 2022.
[9]Rhinology 2005; 43:266.
[10]International Forum of Allergy & Rhinology 2013; 3:1001-6.
[11]J Allergy Clin Immunol Pract 2020; 8:3130-40.e2.