我が強い女性シェフが強制送還寸前の少年たちに希望の光を灯す!主演俳優は一つ星レストランで猛特訓
腕は確かながら、我が強くシェフの指示に素直に従えず、一流レストランを飛び出した女性料理人カティは、移民の少年たちが暮らす自立支援施設の食堂を任されることに。
しかし、質より量が重要で、予算もわずかと、当然のことながら高級レストランとは別世界。
食材の調達もキッチンの用具も人手も足りない状況に不満が爆発したカティに、施設長は少年たちを調理アシスタントにしてはと提案。
このことがカティの人生と、移民の少年たちの未来を変えていく!
映画「ウィ、シェフ!」は、このようなストーリーが進展していく。
作品自体は、どん底にいるシェフと、フランスでの生活を望む強制送還寸前の少年たちが人生を好転させようと悪戦苦闘するコメディ仕立ての人間ドラマ。
ただ、その背景にフランスという国が抱える厳しい現実や世界的な移民の問題などを忍ばせ、内容としてはひじょうに骨太の社会派作品にもなっている。
この作品を通して、何を伝え、何を描こうとしたのか?
フランスの新鋭、ルイ=ジュリアン・プティ監督に訊く。全四回。
主演のオドレイ・ラミーの存在
第三回となる今回は、キャスティングについて。
主人公のカティは、オドレイ・ラミーが演じている。彼女は、監督の前作「社会の片隅で」でも主演を務めている。
彼女は監督にとってどんな存在なのだろうか?
「わたしにとってオドレイ・ラミーはひじょうに力強い存在といいますか。
わたしの映画において、大きな力になってくれる存在であり、監督としてのわたしを大いに勇気づけてくれるとともに力になってくれる存在といっていいでしょう。
わたしが映画作りにおいて、大切にしていることのひとつに、以前もお話ししたかもしれないですが、厳しい現実の問題をいい意味でユーモアをもって描きたい気持ちがあります。
たとえば前作の『社会の片隅で』でしたら、女性のホームレス、今回の『ウィ、シェフ!』であったら移民の少年たちに焦点を当てています。
彼らは決して恵まれた境遇にはいない。
ただ、そんな彼らの中にも希望はあるし、夢がある。実際に、事態を好転させた人だっている。
だから、僕自身は、必要以上に悲惨な側面ばかりを強調したくない。
むしろ、そこから新たな一歩を踏み出すような、ポジティブな側面を見出すことで、人生に絶望してしまったり、人生を諦めてしまったりした人々を勇気づけたい。
現実にある問題をきれいごとにはしたくないけど、苦境の中にもきっとある希望の光のようなものを見出して、それを描くことで人間賛歌になればと思っています。
だから、わたしの映画において、笑い、ユーモアの要素というのは欠かせないんです。
その体現者となってくれる存在といっていいのが、オドレイ・ラミーです。
彼女はコメディのテクニックをもっている俳優です。
しかも単なるコメディエンヌではない。たとえば今回のカティならば、彼女の存在を深く洞察して、その人間性や性格までをすべて精緻に表現することができる。
ですから、カティ役は彼女しか考えていませんでした。
というか、脚本の段階から、オドレイ・ラミーを想定してカティについては書いていました」
一流の腕をもつ料理人にもなっていてくれました
そのオドレイ・ラミーは、ミシュランの一つ星レストラン「アピシウス」と「ディヴェレック」のキッチンで、シェフのマチュー・パコーとクリストフ・ヴィレルメから数カ月間にわたって料理の指導を受けたという。
「そうですね。
彼女はそういった努力を惜しまない俳優です。
料理人になるべくレッスンを積んでくれました。
だから、もう撮影中はオドレイについては心配がひとつもなかったというか。
カティという人物に完璧になってくれていたし、一流の腕をもつ料理人にもなっていてくれました。
ほんとうにリクエストはなかったですね。
さきほどお話ししたように、カティ役は彼女しか考えていなかった。彼女のことを想定して脚本を書きあげました。
ただ、この気持ちは僕のものであって、オドレイ・ラミーがどう思うかはまた別の話で。
彼女にはカティ役を断る権利があったわけです。
僕が一生懸命書いたとしても、彼女が役に魅力を感じないかもしれないし、スケジュールの都合が合わない可能性だってある。
最終的に彼女は出演をOKしてくれて、『ぜひやりたい』と言ってくれたけれども、もしオドレイが引き受けてくれなかったと考えると、ちょっとゾッとするところがあります。
彼女だからカティを完璧なキャラクター人物へと導いてくれた。
『社会の片隅で』でもそう思いましたが、ほんとうにすばらしい演じ手だと今回改めて思いました」
(※第四回に続く)
「ウィ、シェフ!」
監督:ルイ=ジュリアン・プティ
出演:オドレイ・ラミー、フランソワ・クリュゼほか
公式HP:ouichef-movie.com
全国順次公開中
場面写真及びポスタービジュアルはすべて(C)Odyssee Pictures - Apollo Films Distribution - France 3 Cinéma -Pictanovo - Elemiah- Charlie Films 2022