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ハードスケジュールの中、歴史的対局を制し続ける藤井聡太七段(17)棋聖戦第1局勝利後インタビュー全文

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

終局直後、両対局者へのインタビュー

――(取材陣からの質問)藤井七段、本局を振り返って。

藤井「そうですね。ちょっと途中から苦しくしてしまったかな、と思ったんですけど。その中で勝負勝負と行ったのが、結果的にはよかったのかなという風に思います」

――先手で矢倉を選んだのは。

藤井「予定ではあったんですけど。角換わりと矢倉、当然どちらも考えたんですけど、今日は矢倉で行こうかなと」

――タイトル戦第1局を迎えて。

藤井「こうして素晴らしい環境を用意していただいて、その中で対局できるというのは非常にありがたいことだなという風に思いました」

――通常の対局と比べて違うところはあったか?

藤井「環境を整えてくださって、その中でなんとか盤上に集中できたのかな、という風に思っています」

――初挑戦で初勝利については。

藤井「やはり、なんとかまず1勝できたことをうれしく思います。こういった番勝負なので、またなんとか次の対局もしっかりがんばろうと思っています」

――渡辺棋聖、本局を振り返って。

渡辺「えーと・・・。そうですね・・・。(しばらく考えて)終盤はいろいろあって、ちょっとわからなかったですね」

――藤井七段が矢倉を選んだ点については。

渡辺「うーん・・・。(対局開始直前に先後が決まる)振り駒なんで、そんなに細かく作戦を詰めてたわけじゃなかったんですけど。それでもちょっとやっぱり、意表を衝かれたところはあったんですけど。ただ、全く指されてないってわけでもないんで。うーん・・・。まあ、将棋自体は定跡形のよくある形になったかなと思います」

――藤井七段とは朝日杯決勝以来、1年少しぶりの対局だったが、藤井七段については。

渡辺「前回は短い将棋(持ち時間各40分)だったんで。今回長い持ち時間(各4時間)で初めて指して。それをまあ、次以降に、対策として活かしていければいいかな、というところですね」

――先手となる6月28日・第2局の意気込みは。

渡辺「月末でちょっと間が空くので・・・。2局目からは手番が決まってるので、より準備して臨みたいなと。はい」

感想戦終了後、別室リモートで藤井七段インタビュー

――(取材陣からの質問)初めてのタイトル戦、第1局は勝利。改めて今の心境を教えていただけますか?

藤井「まず先勝することができてよかったなという風に思っています。また、第2局までしばらく間があるので、しっかりまた準備したいと思います」

――今日の将棋はけっこう熱戦だったと思うのですが、対局中(藤井玉に)王手が続くような場面もありましたけれども、ご自身、気持ちとしてはひやひやしたところもあったんでしょうか?

藤井「そうですね。最後、かなりきわどい展開になって・・・。時間もなかったので、本当に最後の方はわからないまま指していたという感じでした」

――勝利を意識した場面というのは、それよりももっと前だったんでしょうか。それとも本当に最後までわからないという感じだったんでしょうか。

藤井「そうですね・・・。△6七金(142手目)に▲9七玉と上がった局面でおそらく詰まないかな、という風には思いました」

――4日前に挑戦権獲得で、すぐに今日の対局ということだったと思うんですけれども。「服装は和服なのかな」と予想していた人もいたと思うんですけれども。今日はスーツということだったんですが。別にスーツがいけないということではないんですけれども、そのあたりのことをちょっと教えていただけますか?

藤井「第1局まで時間がなくて、和服自体は師匠(杉本昌隆八段)にいただいたものがあったんですけど、少し勝手がわからなかったので。和服については第2局以降で着れればなという風に思っています」

――当然、第1局を勝ったら、タイトル獲得に一歩近づいたと思うんですけれども、そのあたり、心境の変化などあるでしょうか?

藤井「やはり一つ勝つことができて、ほっとしたというところはあります。ただ、まだ先は長いので、第2局以降もしっかり指せればと思っています」

――3月以降連勝が続いておりまして、内容もトップ棋士の方を相手に素晴らしい内容で勝たれていると思いますが、いま現在のご自身の状況について、どういう風にとらえておられますか?

藤井「最近はトップ棋士の方と公式戦で対戦できるという機会も多くて。自分としては充実してるなとは感じています」

――今日の渡辺棋聖も非常に充実した棋士だと思うんですが、実際にタイトル戦という場所で相対して何か感じるところは?

藤井「長い持ち時間で対局というのは、渡辺棋聖とは初めてだったんですけど、中盤でいくつかこちらが思いつかない手を指されて。そういったあたりで、こちらも見習わなければいけないところなのかなと感じました」

――6月2日から対局再開になって4日に決勝(挑戦者決定戦)で今日8日。一週間に3局大勝負という、非常に厳しいスケジュールだろうと思うんですけど、この間、体調管理を含めて気をつけて過ごされた部分っていうのはあったんでしょうか。

藤井「ここまで対局が続くというのは、今まであまりなかったことなので・・・。体調管理に気をつけて、休む時にはしっかり休もうかと思っていました」

――いろいろな大勝負を経験してきた中で「これがタイトル戦ならではなんだな」と思った場面とか事象とかございましたでしょうか?

藤井「タイトル戦ですと普段の公式戦以上にいろいろな方に携わっていただいて、対局が実現してるんだなということを感じました」

――五番勝負の第1局を勝たれまして、3勝のうちの1勝という形。はっきりとタイトルが近づいてきたということは言えるかと思いますが、そのあたりの思いはいかがでしょうか?

藤井「先勝できたのはよかったですけれども、まだまだ始まったばかりなので、第2局以降全力を尽くしたいと思っています」

――和服のことをしつこく聞いて恐縮なんですけれども、スーツで行こうと決めたタイミングはいつになるんですか?

藤井「4日の挑決で勝った時点で、第1局についてはスーツでという風に思っていました」

――それはどなたか相談してというよりは、ご自身で決めたということなんでしょうか?

藤井「師匠にも相談して、和服は第2局以降で、という形にしました」

――今ご様子を見てるとですね、普段の対局後と変わらないという印象を受けるんですが、タイトル戦という大舞台に向かう上で、たとえば前夜であるとか、移動で向かう時であるとか、将棋会館に向かう時とか、何か違う高揚のようなものはあったんでしょうか?

藤井「対局については普段通り臨むのが一番いいかな、という風には思っていました」

――今日の将棋に関してなんですけど、内容が素晴らしくて「これぞタイトル戦」という将棋であったと思うんですけれども、指しながら、今までにないような充実というか、将棋を指している間に思っていた、今までと違う思いが芽生えたような部分というのはあるんでしょうか?

藤井「今日の将棋は最終盤、かなりきわどい展開になって・・・。それについては自分の中で充実感というのはありました」

――ネット中継の視聴者に向けて最後に一言お願いします。

藤井「ご観戦いただきましてありがとうございます。今回、渡辺棋聖との対局だったんですけど、まず一つ勝つことができてほっとしています。また第2局以降もいい将棋をお見せできればという風に思っています。ありがとうございました」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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