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銀河戦3回目の優勝目指す藤井聡太七冠、ベスト8進出 決勝トーナメント1回戦で新鋭・狩山幹生四段に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月12日。第32期銀河戦決勝トーナメント1回戦・藤井聡太七冠-狩山幹生四段(当時、現在五段)戦が放映されました。(収録日は8月9日)

 結果は102手で藤井七冠が勝利。2回戦(ベスト8)に進み、広瀬章人九段と対戦します。

藤井七冠、終盤で競り勝つ

 狩山四段は11月5日、五段に昇段しています。(本稿では四段と表記)

 先手は狩山四段。戦型は得意の相掛かりを選びました。王道を歩む藤井七冠はいつも通り、変化することなく、相手の得意を堂々と受けて立ちます。

 36手目、藤井七冠は歩をぶつけて動き、ここから戦いが始まりました。角交換のあと、藤井七冠は狩山陣に角を打ち込んで馬を作っていきます。対して受けに特長のある狩山四段は、金銀2枚で藤井七冠の馬を封じ込めました。

 形勢ほぼ互角の中盤が続いたあと、藤井七冠は持駒の歩を駆使して、狩山四段の玉頭から攻めていきます。

 87手目。狩山四段は相手の歩頭に桂を打ち、反撃に出ます。対して藤井七冠はこの桂を取らず、狩山陣の要所で攻防に効いている銀を攻めていきました。このあたりで形勢は藤井七冠優勢へと傾いていきます。

 91手目。狩山四段は相手の歩頭に銀を打つ勝負手も見せます。藤井七冠は冷静にこの銀を取ったあと、ずっと眠っていた馬を金と刺し違えて切り、一気にスパートします。

 96手目。藤井七冠は当たりになっている飛を逃げず、狩山陣に銀を打ち込みます。これがきれいな決め手。もし飛を取られても、打ち歩詰めを打開する詰将棋のような手順があって、狩山玉は詰みます。持駒に受けに適した駒のない狩山玉は、あっという間に受けなしに追い込まれました。

 狩山四段が形を作ったあと、102手目、藤井七冠は金を打って狩山玉に王手。以下は詰みとなるため、狩山四段はここで投了しました。

 新鋭・狩山四段に終盤で競り勝った藤井七冠。3回目の優勝まであと3勝としました。

 本局の結果を含めて、現時点で公表されている藤井七冠の成績は22勝7敗(勝率0.759)となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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