キアヌ・リーヴスが、ますます光っている状況
2019年は、実はキアヌ・リーヴスの年だった。これまで誰も意識していなかったそんなことが、今、起こっている。この1ヶ月ほどの間に、リーヴスの出演作が3本もアメリカで公開され、しかもどれもが全然違うタイプの作品なのだ。
まずは、先月北米公開され、現在も5位以内にとどまっている「ジョン・ウィック:パラベラム」(日本公開は10月)。シリーズ3作目だが、オープニング成績は2作目の倍近く、現在までの世界興収も1作目の4倍と、絶好調だ。CGに頼らない、素手、あるいはたとえば鉛筆のようなアナログな武器を使ったアクションシーンがこのシリーズの魅力で、今回も、リーヴスは、ベルトや馬など意外な物で敵をやっつける。リーヴスのアクションスターとしての揺るぎない立ち位置を再証明するこのシリーズ最新作は、批評家の評価も良く、すでに4作目にもゴーサインが出た。
一方、今月21日に北米公開のピクサー映画「トイ・ストーリー4」(日本公開は7月12日)では、アクションフィギュアとなって暴れ回る。今作で初登場するデューク・カブーンというカナダ製のおもちゃの声を務めるのだが、リーヴスがやったのは、ただせりふを読むことだけではなかった。ジョシュ・クーリー監督によると、リーヴスはこの役に非常に乗り気で、正式なオファーがかかる前にピクサーのスタジオを訪ね、さまざまなアイデアを出してきたとのこと。デュークがアクションポーズを連発するのもそのひとつで、リーヴスはロビーのテーブルの上に飛び乗り、「俺はデューク・カブーンだぞ!」と、実際にやってみせながら提案したのだそうだ。プロデューサーのマーク・ニールセンも、デュークにはリーヴスがたっぷり反映されていると証言する。このキャラクターは、予告編の最後のほうに一瞬だけ登場するが、動き回る姿を見るのは映画が公開されてからのお楽しみだ。
しかし、最も意外なのは、「いつかはマイ・ベイビー」だろう。Netflixが先月末に配信開始したこのオリジナル映画は、キャストのほぼ全員がアジア系のロマンチックコメディ。そこに彼がサプライズのカメオ出演をしているのである。カメオとは言っても、出演時間は13分もあるし(全体の尺はおよそ1時間40分)、彼が出てくることで主人公のふたり(アリ・ウォンとランドール・パーク)の距離が近まる。つまり、ストーリー上、かなり重要な役なのだ。
演じるのは、自分自身。セレブリティシェフのサーシャ(ウォン)に、彼が自分から声をかけ、恋が始まる。夢のような出来事に舞い上がったサーシャは、16年ぶりに再会したばかりの幼なじみマーカス(パーク)とその恋人を、ダブルデートに誘う。その気取ったレストランでのリーヴスのふるまいの数々が、最高に可笑しい。支払いを済ませた後、「大丈夫だよ、6,400ドル(約70万円)なんて、『スピード』の再使用料としてもらう額にも満たないしさ」と言ったかと思うと、その後にはマーカス相手の殴り合いシーンでキメのアクションポーズを見せてくれる。さらに笑えるのが、映画の最後に流れるテーマソングだ。パークが共同作曲、共同作詞したそのラップソングは、タイトルからして「I Punched Keanu Reeves」で、「僕はキアヌ・リーヴスを殴った。それは『スピード』のシーンよりもかっこいい」というような歌詞が出てくるのである。
もちろん、それよりもさらにかっこいいのが、こんなセルフギャグを喜んでやったリーヴスであることは間違いない。リーヴスがこれらのシーンの撮影を「ジョン・ウィック:パラベラム」と並行してこなしたという事実にも、やる気のほどがうかがえる。実はリーヴスの祖母は中国系ハワイアンで、彼も一部アジア系。それが今作への出演に関係あるのかどうかはわからないが、彼は過去にも「47 RONIN」で日本人俳優たちと共演している。彼のような大スターがアジア系俳優の活躍をサポートしてくれるなんて、すばらしいこと。アジア系が関係する作品であっても、そことは全然関係なくても、これからもリーヴスが出る映画をますます応援したくなる。