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ついにこの人も。ハリソン・フォード、カマラ・ハリスへの投票を呼びかける

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ハリソン・フォードはあまり政治的発言をしてこなかった(写真:ロイター/アフロ)

 アメリカの未来が決まる日が、いよいよ目の前に迫ってきた。すでに8,000万人の有権者が投票を済ませているが、当日に投票するつもりでいる人も半分ほど残っているという。

 両陣営のキャンペーンはもちろんのこと、圧倒的にカマラ・ハリスを支持するハリウッドスターたちも、あの手この手でメッセージを発信。そんな中、ついに、政治的な発言では知られてこなかったハリソン・フォードが、ハリスのためのキャンペーン広告に登場した。

 1分弱の動画の冒頭で、フォードは、「私は64年間も投票してきましたが、そのこと(政治)についてはあまり語りたくないと思ってきました」と、告白。「しかし、過去のトランプ政権にかかわった大勢の人々が、『またあのようなことになってはいけない』と警告しているのです。これは無視するべきではありません。その人たちはとても重要なことを言っているのですから」と、なぜ今回、発言することにしたのかを説明する。続いて、「その人たちは、州知事や司令官です。自分がずっと所属してきた政党のリーダーに刃向かっているのです。彼らの多くは、今回、共和党でない候補者に初めて投票します。それがいかに大事なのかを、彼らは知っているのです」と、トランプを公に批判する共和党の要人の正義感と勇気を讃える。

 さらにフォードは、「カマラ・ハリスは、政策やアイデアについてあなたが異議を唱える権利を守ります。(意見が合わなければ)それらについて話し合います。そうやって前に進むのです。もう何世紀もやってきたこと。ですが、あの男は、疑問の余地のない忠誠心を要求します。彼は復讐したいとも言っています」と、トランプの名前を出すことなく、両方の候補者を比較。その上で、「私は、ハリソン・フォード。ほかの人たち同様、一票しか入れられません。私はその一票を、前に進むために投じます。私は、カマラ・ハリスに投票します」と言って、メッセージを締めくくった。

「スター・ウォーズ」の共演者マーク・ハミルは、早速、「友よ、ありがとう」という言葉を添えて、この投稿をリポストした。以前から熱心かつ頻繁に民主党支持のメッセージをソーシャルメディアで発信したり、ハリスのための寄付金集めイベントに複数登場したりしてきたハミルにとって、旧友である大スターが決断し、発言をしてくれたことは、本当に嬉しかったに違いない。

 数日前には、アーノルド・シュワルツェネッガーも、ソーシャルメディアでハリスに投票すると宣言している。そのメッセージの冒頭で、彼は「私は普段、候補者への支持を表明しないのだが」と述べた。共和党員としてカリフォルニアの州知事も務めたシュワルツェネッガーは、まさにフォードのいう「自分が所属するリーダーに刃向かう」正義感を持った人に当たる。ハリウッドセレブの中でもとりわけ大物で、これまで静かだったこのふたりが、ギリギリとはいえ発言したことは、多少なりともインパクトがあるのではないか。

誤射事件以来おとなしかったボールドウィンも発言

 そして、アレック・ボールドウィン。長年の民主党支持者で、「Saturday Night Live」でトランプを演じてバカにし、エミー賞も受賞した彼は、積極的な政治的発言で知られてきた人物だ。しかし、3年前、主演とプロデューサーを兼任するインディーズ映画「Rust」の撮影現場で、持っていた小道具の銃が発射され、撮影監督が死ぬという悲劇が起きて以来、ほとんど口を閉ざしてきた。今年7月、検察が証拠に関するルールを守らなかったとして刑事裁判が棄却となり、刑務所行きの恐れは無くなるまで、頭はそのことでいっぱいだったのではないか。

 そんな彼も、最近は「Saturday Night Live」にまたゲスト出演し、マヤ・ルドルフ演じるハリスをインタビューした保守派のキャスター役を演じて笑いを取るなど、政治色を取り戻してきている。ソーシャルメディアを通じてハリス支持を表明してもいる彼は、現地時間3日、インスタグラムに4分ほどの動画を投稿し、大統領選への強い思いを語った。

 今後の4年で重要な課題は多数あるが、彼自身が最も重視するのは、環境問題とのこと。「やり直しがきかない」からだと、その理由を説明する。「候補者のひとりはその件に情熱を持っていないばかりか、(環境が破壊されているということを)信じないのです」と、ボールドウィンは、名前を出すことなくトランプを批判。そのほかの課題についても同様に、名前を出さずしてハリスこそ正しい選択だと示し、最後は「みなさん、何をするべきかわかっていますよね」と人々に呼びかけた。

 彼らのメッセージは、どれも情熱にあふれ、明確。だが、果たしてそれらは、明日という締め切りまでに、届いてほしい人たちのもとに届くだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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