Amazonの成長どこまで続くのか、TemuやSHEINなど新興勢力が脅威
米アマゾン・ドット・コムの2023年における米国電子商取引(EC)流通取引総額(GMV)は、4447億6000万ドル(約69兆8600億円)で、米国EC流通取引総額に占めるシェアは39.6%だった。米調査会社のイーマーケター(EMARKETER)がこのほどリポートをまとめた。
アマゾン、再び成長軌道に
アマゾンのシェアは2021年と2022年に、それぞれ前年比0.1ポイントと0.3ポイントの上昇にとどまっていたが、2023年は1ポイント以上上昇した。米国におけるアマゾンのEC流通取引額シェアは24年以降も伸び続け、40%を超える水準で推移するとイーマーケターは予測している。
イーマーケターによると、近年アマゾンはシェア拡大に苦戦しており、成長が止まったかのように見えた。しかし、23年に事業が回復し、主要な商品カテゴリーで競合他社を上回る流通取引額を記録した。健康やパーソナルケア・美容といった分野が好調で、同社は再び成長軌道に乗った。
アマゾンは2023年にEC事業を含む中核事業の再活性化に取り組んだ。配送の迅速化を進め、商品選択肢の拡大に注力することで、顧客の注文回数と有料プログラム「Prime(プライム)」の会員数増加につなげた。年末商戦では記録的な売り上げを達成した。
2023年におけるアマゾンのEC流通取引総額は前年比11.7%増加した。これは米国EC市場全体の伸び率8.1%を3.6ポイント上回っている。イーマーケターによると、アマゾンの伸び率が業界全体の伸びを上回ったのは2019年以降初めてとのことだ。
アマゾンの成長を阻む競合の動き
ただ、アマゾンは安閑としていられない状況だ。米小売り最大手ウォルマートと米宅配代行大手インスタカートは食料品のEC事業でアマゾンを上回っている。これらの企業は今後、食品・飲料に加え、健康・パーソナルケア・美容分野でもアマゾンへの脅威になる可能性がある。
また、最近は2つの中国系新興ECサービスが勢力を強めている。中国でネット通販「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」を展開するPDDホールディングスが手がける越境EC「Temu(ティームー)」と、アパレル越境ECを手がける「SHEIN(シーイン)」である。これら新興ECは米国で急速に人気を集めている。
ティームーは2022年秋に米国でサービスを始めた。米調査会社のセンサータワーの推計によると、それ以降若者を中心に利用者が増え、月間アクティブユーザー数は2024年1月に5140万人へと増加した。
SHEINの月間アクティブユーザー数は同じ期間に、2090万人から2600万人へと増えた。これらは今後アパレル分野でアマゾンの成長を妨げる可能性があるとイーマーケターは分析する。
アマゾン、米小売り市場シェアは4%
アマゾンは依然としてECの巨人である。前述した通り、同社の米国EC市場における金額ベースのシェアは約40%。これに対しウォルマートは7.4%にとどまる。
しかし、米国の小売り市場全体で見ると、ウォルマートのシェアは6%で、アマゾンは4%にとどまる。この状況は、アマゾンにとって成長の余地があるとも言えるが、競合はアマゾンよりも速いスピードでEC事業を成長させている。
アマゾンも近年実店舗事業に力を入れる。傘下のスーパーマーケットチェーン「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」や直営スーパー「Amazon Fresh(アマゾン・フレッシュ)」などである。だが、これら事業の売上高は、同社全売上高の3%にとどまるという状況だ(アマゾンの決算資料)。
米国のEC市場では今後数年の間に、ティームーやウォルマートなどがアマゾンの支配に挑戦してくるだろうとイーマーケターはみている。
筆者からの補足コメント:
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によりますと、アマゾンではこれまで、ウォルマートと米ディスカウントストア大手のターゲットを主な競合として注視してきました。ですが最近はTemuとSHEINがアマゾン社内会議の話題の中心になっているといいます。この2つの新興ECプラットフォームを自社サービスの優位性に対する重大な脅威と捉えているといいます。TikTokも米国で電子商取引に参入するなど、競争がますます激化してきました。
- (本コラム記事は「JBpress」2024年4月16日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)