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学歴別の賃金格差を年齢階層別にさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 賃金格差は男女で、年齢による変化の度合いで違いがあるのか。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

人が高学歴を求める理由の一つとして「高学歴ほどよい会社に入れ、高い給金をもらえる」との認識がある。本当に高学歴ほど高給の傾向はあるのか、賃金動向の実情を年齢階層別の動きも併せ、厚生労働省が2020年3月に発表した、賃金構造基本統計調査の報告書から確認する。

今回検証する賃金は報告書では「賃金(所定内給与額)」と呼ばれているもの。これは各企業の規定などで定められている方法・条件によって支給された現金給与額から、超過労働給与額(残業代)や賞与などを除き、さらに所得税などを控除する前の額を指す。要は基本給に家族手当などを足したもの。

また対象としているのは「一般労働者」のみ。契約社員や派遣社員などのような非正規社員もフルタイム労働者なら該当するが、パートやアルバイトのような就労時間が短い労働者は(「短時間労働者」に該当するため)今件検証からは除外される。

今報告書によれば直近分となる2019年における学歴別・男女別の平均賃金は次の通り。

↑ 学歴別・男女別平均賃金(千円)(2019年)
↑ 学歴別・男女別平均賃金(千円)(2019年)

どの学歴でも女性よりも男性の方が平均賃金は高い。また学歴が高い方が、全般的には賃金も高い傾向がある。この結果を見る限り、高学歴ほど高賃金に間違いはない。

そして次に示すのは学歴で区分した上で、年齢階層別の賃金の実情を確認したもの。男女で大きく傾向が異なるため、男女それぞれでグラフを作っている。

↑ 学歴別平均賃金(男性、各学歴で20代前半を100とした時の値)(2019年)
↑ 学歴別平均賃金(男性、各学歴で20代前半を100とした時の値)(2019年)
↑ 学歴別平均賃金(女性、各学歴で20代前半を100とした時の値)(2019年)
↑ 学歴別平均賃金(女性、各学歴で20代前半を100とした時の値)(2019年)

今グラフの値は各学歴の20代前半の額を100とした場合のものであり、金額の絶対額には左右されない。それでもやはり男性の方が数字が大きい。これは男性の方が昇給の割合が大きい・一般労働者における正規社員比率が高いことを意味する(正規社員の方が非正規社員と比べれば概して賃金は高い)。

年を重ねることに伴う賃金の上昇だが、

・女性より男性の方がカーブが急こう配。つまり、年功序列制度による昇給の度合いが大きい(縦軸の区分は男性の方が大きな区切りだが、それでも図版上の勾配は男性が上となる)。

・男女とも高学歴の方がカーブが急こう配。高学歴の方が年を取るに連れて生じる給与の増加率が大きい(学歴・取得知識の実態効果の差が生じている)。

・男性は50代が賃金のピーク。それ以降減少するのは嘱託に転じる人、再雇用で就労する人が増えるため。

・女性は50代前半が賃金のピーク。他方、高校卒や高専・短大卒は賃金上昇の度合いは緩やかなこともあり、20代前半と比べても5割増しにすら届いていない。

などの傾向が確認できる。男女の正規社員・非正規社員の区分や出世のスピードなどの違いも要因だが、「平均賃金」の視点で確認した場合、絶対額だけでなく上昇率(昇給率)においても、女性は男性と比べて低く抑えられているのが分かる。

男性か女性かは生まれながらのもの。しかし学歴は個々の努力や運など後発的な要素によるところが大きく、「生まれながらの運命」的要素はあまり無い(家庭環境などの問題はある)。そしてやり甲斐や社会的意義はもちろんのこと、その他さまざまな要素が「仕事」には存在するが、「賃金」もその一つに違いは無い。まずは失職しないのが大前提なものの、同一条件下なら学歴が高い方が賃金も高くなる傾向にある。もちろん同じ仕事内容なら、賃金は高い方がありがたい。

学歴を得るためにはそれ相応の勉学を積み重ね、知識を吸収する必要がある。その過程で人脈も技術も資格も自分のものとして取得する機会が得られる。「学歴偏重」を賛美するわけでは無いが、「学歴」が社会に、そして自分自身にもプラスとなる「勲章」「証明」だと考えれば、それらに注目することはおかしい話では無い。

学生時の勉学によって得られるのは「将来のための選択肢」であり、それは多ければ多いほど、よりよいものを選ぶチャンスが増えることになる。今件データも、それを裏付けるものに過ぎない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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