日本の婚姻率と離婚率の実情をさぐる(2024年公開版)
厚生労働省が先日発表した人口動態統計の確定数によると、2023年における日本国内の婚姻件数は47万4741件となり、婚姻率は0.39%となることが分かった。これは前年2022年の値0.41%から0.02%ポイント低い値となる。今回はこの婚姻率と、婚姻とは反対の立ち位置にある離婚の割合である離婚率の動向を確認する。
今件は例えば婚姻率の場合、現在婚姻している人の割合ではなく、「該当年において一定人口に対し婚姻した値」である。例を挙げると、ある年の値が「0.10%」なら、その年は人口1000人につき婚姻件数は1件となる。
婚姻率は戦前では大体0.8%前後で行き来している。何度か上昇と下落の動きがあるが、確証・因果関係の説明はできないものの、おおよそ大きな戦争の直前に上昇し、戦中は下落する動きを示していることから(日露戦争、第一次世界大戦、満州事変、日中戦争が該当する)、国民の間にも戦争の雰囲気を肌身で感じて事前に婚姻する意思が高まるのかもしれない。
1947年に記録した最大値となる1.20%に至る大きな婚姻率の伸びは(実のところは1944~1946年は戦中・戦後の混乱による資料不備で値は非公開であり、1947年分は戦後初の公開値)、太平洋戦争終結直後に生じた結婚ブームによるもの。この高婚姻率がいわゆる「団塊の世代」を生み出し、この世代が結婚することで1970年前後の第二次結婚・ベビーブームの源となっている(1970年前後の婚姻率の高まりがそれに該当)。
しかしそれから20年後の1990年前後に再びの形で、第三次結婚・ベビーブームは起きていない。多少の上乗せ傾向が見られる程度(1990~2001年あたりまで、やや底上げされているのが該当)。価値観の変化や結婚時期の分散などが起きたためで、1950年代・1970年代のような盛り上がりは確認できない。以後、婚姻率は高齢化や晩婚化、価値観の変化などとともに減少傾向にある。
一方離婚率は1960年代までは減少をしていたものの、その後少しずつ上昇。2002年には戦後最高値の0.23%をつけている。それ以降は婚姻率そのものが減少しているため(今件の値は人口に対する割合であり、婚姻者に対する割合ではないことに注意)、婚姻率同様に離婚率も減少傾向にある。2011年には節目となる0.20%を切り、それ以降はさらに漸減する動きを示している。
なお2019年以降の値は今世紀分のグラフを見れば分かる通り、イレギュラー的な動きをしている(2019年の婚姻率は特に)。これは2019年の改元と2020年以降の新型コロナウイルス流行の影響によるもの。直近2023年では婚姻率が大きく下がる一方で、離婚率が上がったのが印象的ではある(グラフ上では同じ0.15%だが、小数第三位まで見ると2022年は0.147%、2023年は0.152%)。
婚姻率の減少は短期的には経済的な問題、そして中長期的には男女間の価値観の移り変わりや社会環境の変化が影響していると考えてよい。何か社会的な変化がない限り、今後もなだらかな形で低下を続けることだろう。
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