震災によるボランティア活動の活性化実態をさぐる(2024年公開版)
先の震災(東日本大震災)ではボランティア活動が大いに注目された。その活動の実情を、総務省の「令和3年社会生活基本調査」(※)の結果から確認していく。
今件における「ボランティア活動」とは、報酬を目的とせずに自分の労力や技術、時間を提供して地域社会や個人、団体の福祉増進のために行う活動を指す。ただし、交通費などの実費程度の金品の支払いが生じても報酬と見なさず、ボランティア活動に含む。一方、ボランティア団体が開催する催し物に参加しただけの場合は、該当活動とはみなされない。
そのボランティア活動の具体的種類のうち「災害に関係した活動」の行動者率は2011年において大きな増加が確認できる。
●「災害に関係した活動」の具体例
・救援物資の確保・輸送
・炊き出しなどの災害時の救援
・災害復旧のための資金の募集
・現地での労力奉仕
・災害後の被災者への救援
2006年から2011年にかけての動きは、「何らかの状況変化に伴う動き」であることは、誰が見ても一目瞭然である。そしてその理由は2011年3月に発生した震災によるものと見て間違いない(震災は3月、今調査の2011年分は10月に実施。その時点で「過去1年間に行ったか否か」を訪ねている)。特に従来ほとんど動きのなかった若年層における大きな伸び、中年層の活躍ぶりが見て取れる。
他方、2016年から2021年にかけての減少ぶりも目にとまる。これは新型コロナウイルス流行により、外出忌避や他人との接触機会が極力抑えられたのが原因。公開資料でも「1日の生活時間の配分の調査時期は、新型コロナウイルス感染症がいわゆる第5波として拡大した後、各地に順次発令されていた新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)に基づく「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」及び「まん延防止等重点措置」が2021年9月末をもって全ての地域で終了し、解除された直後となる。両措置が解除後も当面は地域によって営業時間の自粛等の取組が行われていたほか、新型コロナウイルス感染症の影響による三密回避の日常化や数度の行動制限により、前回調査となる5年前の2016年に比べ、生活時間の配分は変化し、新しい生活様式が浮き彫りとなるような結果となっていることがうかがえる」と説明されており、ボランティア活動の観点では、新型コロナウイルスの流行が忌避要因となってしまったことがうかがえる。
2006年から2011年への変移を年齢階層別に確認したのが次のグラフ。
元々20代や30代は行動者率が低めだったのも一因だが、この層の大きな伸びが実体として表れている。先の震災におけるボランティア活動に、多数の若年層が参加するようすが伝えられているが、それが単なる見た目だけのもの、演出的な切り貼りによるものではないことが、改めて確認できる。また、2006年時点では最多階層が40代後半から60代にかけてだったものが、2011年では30代後半から40代後半にシフトしたことも、注目すべき動きではある。
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※令和3年社会生活基本調査
国勢調査の調査区のうち、総務大臣の指定する約7600調査区に対して行われたもので、指定調査区から選定した約9万1000世帯に居住する10歳以上の世帯員約19万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2021年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2021年10月16日から10月24日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と、調査員への提出あるいはインターネットでの回答による回収方式。
調査は5年おきに実施されており、過去の調査もほぼ同様の様式で行われている。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。