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王者サントリーと対戦。神戸製鋼、逆転プレーオフ進出への鍵は。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
写真中央はエリス。タレントの力を引き出す試合運びに期待。(写真:アフロスポーツ)

 日本最高峰のラグビートップリーグでは、今季、レッドカンファレンスとホワイトカンファレンスの上位2チームがプレーオフへ進める。第11節終了時点で、各組1チームずつはすでにその権利を獲得。2位以下の争いが注目される。

 神戸製鋼は、勝ち点は36でレッドカンファレンス8チーム中3位。2位のトヨタ自動車(勝ち点38)を追う。12月17日に東京・秩父宮ラグビー場である第12節の相手は、すでにプレーオフ行きを決めた昨季王者のサントリーだ。

 すでに安全水域に入った王者にマストウィンの勝負を挑む神戸製鋼は、前年度と同じヘッドコーチのもとでプレーしているのは実に3季ぶり。2015年にギャリー・ゴールド、16年にはアリスター・クッツェーと南アフリカ出身の名手が着任もわずか1シーズンで退団。今季はオーストラリア出身のジム・マッケイのもと、複数の選手が継続強化のありがたみについて話していたものだ。

 とはいえ今季も、開幕6連勝を決めながらその後は3敗1分。前節で近鉄から第6節以来の白星を得たところだった。

 親会社の業務内容とグラウンドのパフォーマンスを関連付けるのは、基本的には無粋なことだろう。昨季2位のヤマハから6勝目を挙げた際は鋭い出足の防御が効いたが、主力を温存させて臨んだ次戦では背後にキックを通されるなどしてキヤノンに今季2勝目をプレゼント。ここから3連敗した。チームとは生き物だと、つくづく思わせた。

 主要ポジションに強豪国代表経験者を並べるなど、戦力は対するサントリーと比肩するほど充実。才能集団がサントリーの得意な連続攻撃を遮断すべくチームとして動けば、予定調和とされる結果は生まれづらくなりそうだ。

 ちなみにサントリーは前節でNECに勝利も、看板たる攻めの起点となる「ブレイクダウン(接点)」のクオリティを課題視。接点へ絡む選手が球へ腕をかけるなど効果的なアプローチを施せば、サントリーはその選手を引きはがすべくひとつの接点に複数の人員を割く。そのサイクルが続けばサントリー側にサポートの遅れが生じ、孤立したランナーがボールを取られやすくなる。

 その傾向を受け、沢木敬介監督も「意図的にボールを運べるよう、その仕組みをやり直す」。具体例こそ明かさなかったが、ボールを持ちこんで防御へぶつかる選手の体勢をチェックするなど、少人数のサポートでボールを排出しつづける「仕組み」を見直そうとしているのかもしれない。

 裏を返せば、神戸製鋼がひずみを起こす方法のヒントはそこにありそう。近鉄戦でも後半に2度、攻守逆転からのトライを奪っている。その過程で見られた接点へのブローを、ペナルティを取られずにどこまで続けられるか。プレーの合間におけるレフリーとの対話も含め、注視されたい。

 また防御時の接点で効果的な働きをするには、1人目のタックラーがサントリーの才能たちを敵陣側へ倒したいところ。ヤマハを下した日のように、防御ラインを前に押し出せるか。その午後の防御ライン上で脅威と化したフランカーの橋本大輝前キャプテンは、サントリー戦で長期離脱からの復帰を果たす。ニュージーランド代表のスクラムハーフ、アンドリュー・エリスが表のキーマンなら、裏のキーマンは橋本となるか。

 

<第11節私的ベストフィフティーン>

1=左プロップ

山本幸輝(ヤマハ)…コカ・コーラ戦でスクラムを終始、ドミネート。

2=フッカー

三浦嶺(NTTコム)…ジャッカルは簡単にはがされず、スクラムは終始、圧倒。

3=右プロップ

浅原拓真(東芝)…クボタ戦のスクラムでは、地面と背が平行な姿勢を保ったまま相手の塊の深部へ侵入。

4=ロック

ジョー・ウィーラー(サントリー)…空中戦の安定化、スペースへの正確なパス。サントリーの攻撃システム運用を、その体躯と技術で下支えした。

5=ロック

デューク・クリシュナン(ヤマハ)…自陣ゴール前では相手モールを崩すクロール(塊を上腕で引き裂く)でピンチを脱し、攻めてはタッチライン際、ラック周辺と場所を問わず球を受けて突破。コンビを組んだヨハン・バードールも、攻防の境界線で身体を差し込んだ。

6=ブラインドサイドフランカー

大戸裕矢(ヤマハ)…防御のギャップを突く走りでトライを導き、チェイスライン上などでのタックルは確実に相手を仕留めた。

7=オープンサイドフランカー

テビタ・ツポウ(パナソニック)…接点への地道は働きかけを貫いた。勝負の決まる前に会ったピンチも、この人が摘み取った。

8=ナンバーエイト

リーチ マイケル(東芝)…キックオフ早々に敵陣22メートル線付近での接点でノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘う絡みを披露。その後は攻めても味方のオフロードパスを呼び込んで大きく突破するなど、攻守で持ち味を発揮。

9=スクラムハーフ

アンドリュー・エリス(神戸製鋼)…近鉄戦の前半10分、攻め込まれた際のジャッカルでノット・リリース・ザ・ボールを奪う。攻めては接点から接点へ移動するたびに異なるリズムで配球。

10=スタンドオフ

ロビー・ロビンソン(リコー)…豊田自動織機戦の前半16分、自陣10メートル線エリア左で球を受けるや、飛び出す防御の裏にふわりと蹴り上げてその球を自ら捕球。味方へつないで、22メートル線付近まで前進した。刹那、左から右への大きな展開の始点となってスコアを8―0に広げた。以後も相手の死角をえぐるプレー選択で主導権を握らんとした。

11=ウイング

ヘンリー ジェイミー(トヨタ自動車)…NTTドコモ戦。献身的なキックチェイスで相手の蹴り返しの距離を短縮化。球を持たぬ時のハードワークで光りながら、球を持った時は鋭いフットワークで左タッチライン際のスペースを裂いた。

12=インサイドセンター

マット・ギタウ(サントリー)…深い位置から駆け込んで、相手防御を引き付けながら外側の味方の走る先へパス。スペースへアタックするというサントリーの哲学を、その技術で実現させんとした。

13=アウトサイドセンター 

リチャード・カフィ(東芝)…味方へのサポートからトライを奪い、立ってボールをつなぐ東芝のラグビーの仕留め役を全う。相手を掴み上げるチョークタックル、後半25分頃の危険地帯へ駆け戻ってのジャッカルなど、守りでも魅する。

14=ウイング

宇薄岳央(東芝)…空中戦での競り合いで強さ示し、試合終盤には2トライ。1本目では立って球をつなごうとする仲間へ並走。2本目では球を抱えて密集の真上を通過、一気に駆け抜けた。

15=フルバック

ジオ・アプロン(トヨタ自動車)…自由自在な走りでスコアラッシュを支える。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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