「#MeToo」1年 グーグルでセクハラ追放の一斉蜂起 世界中の社員が抗議のウォークアウト
みんなのために機能しない職場文化
[ロンドン発]米ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏のセックス強要疑惑が発覚、ソーシャルメディアを使ってセクハラを追放する「#MeToo」運動が世界中に広がって1年。グーグルでセクハラ追放の一斉蜂起が始まりました。
「私はデスクにはいません。なぜならグーグルの同僚と取引先の人たちと一緒に、セクハラと不適切な振る舞い、透明性の欠如、そして、みんなのためには機能していない職場文化に抗議して職場を離れます」
検索エンジンの巨人、米グーグルに蔓延するセクハラ、パワハラ文化に抗議して11月1日午前11時(現地時間)、世界中のグーグル社員らがこんな紙切れを机の上に残して一斉にストライキに入りました。
スマートフォン用OS(オペレーティングシステム)「アンドロイド(Android)」を開発した元グーグル副社長アンディ・ルービン氏が2014年、セクハラを理由に同社を去ったにもかかわらず、9000万ドル(101億円)も受け取っていたことが発覚。
参考:筆者エントリー「資産400億円「アンドロイドの父」の乱れた関係 ハリウッドだけではなかった グーグルでもセクハラ横行」
アルファベット研究部門「X」の責任者も
この2年間にセクハラが原因で上級管理職以上の13人を含む48人が退職したことが明るみに出たばかりなのに、10月末にグーグルの親会社アルファベットの研究部門「X」の責任者リチャード・ドバウル氏が退職したことが発表されました。
グーグルのスンダル・ピチャイ最高経営責任者(CEO)はルービン氏の不祥事が米紙ニューヨーク・タイムズにスクープされた際も全社員に謝罪メールを送りましたが、謝り方が十分ではなかったとして、再度、謝罪の一斉メールを送りました。
「私はあなたたちの多くが感じている怒りと失望について理解しています。私も同じように感じています。私たちの社会、そう、ここグーグルでも同じように非常に長く続いている問題を改善するよう全力を尽くします」
「社員は、セクハラ防止策や今後の取り扱い方をいかに改善させるか建設的なアイデアを提案しています。私たちは社員の提案を実行に移せるように検討しています」
ニューヨーク・タイムズ紙によると、過去10年間で不適切な振る舞いで告発されながらも高待遇を受け続けた役員はルービン氏を含め3人いるそうです。
男と女の間には性的な関係はつきものとは言うものの、職場の上下関係の中で自由意志に反して行われた場合、重大な人権侵害が発生します。性交渉を持つ「同意」契約書を交わしていたとしても、婚外の関係なら道徳や倫理上の問題が発生します。
配車アプリサービス、ウーバーでは昨年2月、元社員の女性がブログで「上司が露骨に体の関係を誘ってきた」と告発。今年8月には、セクハラや差別の被害を訴えた現社員や元社員計56人に対して190万ドル(2億1300万円)を賠償することで和解へ、と報じられました。
シリコンバレーの職場環境向上サイト「見て見ぬふりをされているバレーの問題」の調査では、60%の女性社員が望まぬ性的な誘いを受け、このうち65%は上司からの誘いだったことが分かっています。シリコンバレーには、セクハラ被害を受けた女性が提訴しないように、泣き寝入りを強いる「仲裁」文化が蔓延しているそうです。
グーグルの社員が経営者側に突き付けている要望は次の通りです。
・全社員に対するハラスメントや差別に関して「強制的な仲裁」で解決するのを止める
・給与や昇進の格差を撤廃する
・セクハラの透明性を高める報告書を開示する
・性的に不適切な振る舞いについて安全かつ匿名で告発できる明確で統一された全社的なプロセスを確立する
・多様性担当社を直接CEOに報告できるポストに引き上げ、取締役会にも直接、勧告できるようにする
・社員代表を取締役に指名する
「#MeToo」運動は世界中のセクハラ文化を破壊していますが、日本ではまだまだ泣き寝入り文化が根強いせいか、「#MeToo」運動の盛り上がりは伝わってきません。
(おわり)