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『M-1』3年連続決勝進出!「本命中の本命」オズワルドは雪辱を果たせるのか?

ラリー遠田作家・お笑い評論家

漫才の祭典『M-1グランプリ』では、決勝が行われる前に多くの人から優勝候補と呼ばれる「本命」が存在する。お笑い好きの間で、昨年末の『M-1』で最有力と言われていたのは、伊藤俊介と畠中悠の2人から成るオズワルドだった。彼らは昨年のファイナリストの中で唯一となる3年連続の決勝進出を果たしていた実力者である。

ちなみに、売れっ子女優の伊藤沙莉は伊藤の実の妹である。ツイッターなどでは兄妹で仲良くやり取りをする姿も見られる。最近では、伊藤と蛙亭のイワクラが交際中であることが明かされて話題になった。

白シャツにサスペンダーという揃いの衣装に身を包んだオズワルドは、その得体の知れない見た目にふさわしい不思議な世界観の漫才を演じる。基本的にネタ中に大きく動くことはなく、途中でコントに入るようなこともない。オズワルドの漫才は、2人の会話だけで展開される純粋な「しゃべくり漫才」である。

彼らの漫才の魅力は、独特のゆったりしたテンポと落ち着いた口調にある。畠中がとぼけた調子で素朴な疑問を投げかけたり、奇妙な提案をしたりする。伊藤がそれに戸惑いながらも受け答えをしているうちに、少しずつ不気味な世界に連れて行かれてしまう。

決勝の1本目で披露したネタは歴史的な傑作だった。友達がいないという畠中が、伊藤に「友達を1人くれないか」と相談を持ちかける。小銭を借りるような感覚で友達をねだる畠中に伊藤は恐れおののきながらも、その真意を探ろうとする。何を考えているのかわからない畠中のたたずまいと、伊藤のツッコミフレーズの切れ味の鋭さによって、うねるような大きな笑いが起こっていた。

彼らはこの漫才でファーストラウンドを1位で通過して、最終決戦に進んだ。しかし、ギリギリのところで錦鯉に競り負けて、惜しくも優勝を逃してしまった。彼らはすでにテレビの仕事を順調に増やしているし、CM出演も果たしている。だが、どんなにほかの仕事が順調でも『M-1』で勝てなければ意味がない。そのぐらいの意気込みで彼らはこの大会に取り組んできた。優勝を逃した彼らのショックの大きさは察するに余りある。

しかし、昨年の『M-1』によって、彼らの漫才の面白さは今まで以上に多くの人に伝わっただろう。今年こそは「本命中の本命」としてリベンジを期待したい。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行う。主な著書に『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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