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全訳:EUとイギリスの合意について、バルニエ氏の記者会見

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者
10月17日、無事に記者会見を終えたミシェル・バルニエ氏(写真:ロイター/アフロ)

10月17日、ミシェル・バルニエEU交渉官は、欧州連合(EU)とイギリスが合意に達したとして、記者会見を行った。

以下は、発表された記者会見の文書の全訳である。

記者会見文書の原文はこちら

その他欧州委員会発表のプレスリリース他、資料はこちら

メダム、メッシュー、(以下スピーチはフランス語)

本日、イギリスの秩序ある離脱、および私たちの将来の関係の枠組みについてイギリス政府と合意に達しました。

これは、2つの交渉チーム、イギリスのチームと私たちのチームによる集中的な作業の結果であり、私は個人的に彼らの粘り強さとプロフェッショナルな仕事に感謝いたします。そして、欧州側では、27の加盟国と欧州議会、彼らと共に実際にこの新しい協定をつくりました。

この合意は、交渉者のレベルで合意されたものです。ユンケル委員長は、今朝ジョンソン首相と合意にいたしましたが、ユンケル氏とともに、この合意を27カ国の欧州理事会に間もなく提出することになります。同様に、この3年間という長い間、トゥスク大統領が寄せてくださった信頼に感謝いたします。

みなさん、この文書は、ブレグジットがもたらす不確実性に対して、法的安全性と確実性をもたらすものになります。まず最初に以下の点です。

◎イギリスにいるEU市民、またEU加盟国にいるイギリス市民。彼らは今までも、そしてこれからも、常に私たち、そしてEU加盟国と欧州議会の優先事項です。これら市民の不確実性は長く続きすぎました。この合意のおかげで、彼らの権利は長期的に保証されます。

◎EU27加盟国とイギリスの予算によって資金提供されているプロジェクトを行っている人々は、この合意のおかげで、28カ国として既に行われた財政的コミットメントは28カ国として尊重されます。

◎分離に関わるすべての人々や企業、ユーラトム(欧州原子力共同体)や、既存の知的財産の保護、地理的表示の保護や個人データの保護。

◎この提案は、イギリス政府から要求された移行期間も含まれています。移行期間は2020年末まで、14か月間です。おそらくイギリスとEUが合意した場合は、1年か2年延長可能です。

レディース アンド ジェントルメン(以下、スピーチは英語)

イギリス政府は、離脱協定において、1つのことをオープンにすることを望んでいました。アイルランドと北アイルランドに関する議定書です。

これらの交渉を通じて、EUとイギリスは、アイルランド島の平和と安定を保護することに全面的に努力いたしました。

次の2つの目的を調整する必要がありました。

第一に、離脱協定に法的に有効な解決策を含めることです。

◎アイルランドと北アイルランドの厳しい国境を避けること。

◎島全体の経済を維持すること。

◎単一市場の完全性を保護すること。

第二に、ジョンソン首相とイギリスにとって極めて重要な点は、北アイルランドがイギリスの関税領域に留まっていることです。

過去数日間の議論は時に困難でした。しかし、我々は共に解決を見出すことができたのです。解決策は、主に4つの要素からなっています。私たちが見つけた解決策は、4つの主要な要素に基づいています。

1 /第1に、北アイルランドは、一連の限定されたEUのルールに残ります。特に物品に関連するものです。

◎このことは、物品に関するすべての該当する手続きが、島全体ではなく北アイルランドへの入国地点で行われることを意味します。

◎この目的のために、イギリス当局は北アイルランドにおいて、欧州関税法典(the Union's Customs Code/UCC)の適用を担います。

2 /第2に、適用可能な手続きを超えて、関税の問題もあります。

◎北アイルランドはイギリスの関税領域に留まります。 したがって、イギリスの将来の貿易政策の利益を受けることになります。

◎しかし、北アイルランドは、単一市場への入り口ポイントのままです。どうすれば折り合うのでしょうか。

◎イギリス当局は、北アイルランドに入国する物品が単一市場に入域するリスクがない限り、第三国からの商品にイギリス関税を適用できます。

◎ただし、単一市場に入域するリスクのある物品については、イギリス当局はEUの関税を適用します。

3 /第3に、昨晩も今日の朝も、ずっとVAT(付加価値税・日本の消費税に相当)の問題に取り組んでいました。物品の単一市場内における競争の歪みを避けることは、重要な課題です。 この点でも、次の2つの目標を達成できました。

◎単一市場の完全性を維持する。

◎しかし、イギリスの法にかなった願いも満たす。

4 /最後に、ジョンソン首相とアイルランド首相は、北アイルランドにおいて、関連するEUの規則がイギリス当局によって適用されるための、長期間の民主的なサポートを確かにすることを望んでいました。

◎議定書が発効してから4年後、選挙で選ばれた北アイルランドの代表者(議員)は、北アイルランドにおいて関連するEUの規則を適用することを継続するか否かを、単純多数決で決定できます。 この民主的なサポートは、新たに合意されたアプローチの基礎です。

なぜでしょうか。

この新たに合意された議定書は、EUとイギリスの間で、その後の合意にもはや取って代わられないためです。そのように同意を確実にすることは理にかなっています。

ご列席の皆様、明らかに、北アイルランドについて議論する場合は、経済や技術的な問題、物品についてお話します。しかし、私にとってこの3年間、本当に重要なのは北アイルランドとアイルランドの人々なのです。本当に重要なのは平和です。

メダム、メッシュー(以下スピーチはフランス語)、

やっと、この分離と離脱の合意を超えて、政治宣言を改定するための合意に至りました。この政治宣言は欧州理事会によって採択されなければなりませんし、友好国であり、パートナー国、そして同盟国であるイギリスとの野心的なパートナーシップを再構築するための枠組みとなるでしょう。

この点で、ボリス・ジョンソンの政府は自由貿易協定を明確に選択しました。そのため、すべての他のオプションの出典、特に私たちの間に一つの関税領域をつくるというオプションは、すべて削除されました。

逆に変わらないのは、私たちは地理的に近くて、イギリスの経済と相互に依存する関係であることです。そして、関税や割当のない自由貿易協定を可能にするために、機会均等を強力に保証する合意に達したのです。

この点について、私は彼らと頻繁に話したことがあるので証言できますが、EU加盟国、欧州議会、単一市場にある企業は、社会的権利、環境保護、国家援助、税に関する問題など、移行期間の終了時に適用される基準の共通基盤の存在に最大の注意を払っています。

全体として、将来の自由貿易協定の野心のレベルは、私たちの間の経済のルールの質とレベルに比例します。

これが激しい交渉の終わりに達した合意です。今は法的文書が利用可能になりました。

これに基づき、ユンケル委員長と共に欧州理事会で間もなく提示する評価は、私たちは、私たちの原則に対応する公正かつ理にかなった結果を共に達成したということです。

欧州側では、この合意の内容を評価するのは、現在は欧州理事会です。そして、欧州理事会で承認されたら、次は欧州議会です。私は、最後の言葉をもっているすべての人々に、彼らの信頼を感謝したいと思います。

今日から私たちは、対話と私たちの機関の尊敬のもと、このプロセスに沿って進んでいきます。私たちは今、英国が秩序ある離脱をするための、公正で理にかなった基盤をもっています。そして特に、できるだけ早く英国との新たなパートナーシップに取り組めることを、11月1日からすぐにでも始めることを、私たちは望んでいます。

欧州委員会発表のビデオ(約13分。フランス語部分の英訳がない)

ザ・テレグラフのビデオ(約34分。すっきりと見やすい。英語の通訳が聞き取りやすい)

BBCのライブ映像(約32分。ライブ感が満載。ただ英語の通訳が一部聞き取りにくい)

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省機関の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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