謎に包まれた「月の起源」過去に火星サイズの惑星「テイア」が地球に衝突した破片で形成された?
夜空を見上げればすぐに見つけることのできる月。私たちにとって最も馴染みのある天体ですが、実は形成過程が謎に包まれていることをご存知でしょうか。本記事では、有力とされるジャイアント・インパクト説、そして惑星「テイア」をご紹介します。
■複数存在する月の起源説
月の誕生に関しては三つの有名な説がありました。一つ目は親子説といって、地球の一部が分裂して月になったというものです。二つ目は兄弟説で、月と地球は近い距離の位置で、同じように岩石が衝突し形成されたというものです。しかし、月面では地球の年齢よりも古い岩石が見つかっており、構成物質に違いがあることから、親子説、兄弟説は支持を得られていません。
三つ目は他人説です。宇宙空間には「浮遊惑星」と呼ばれる、中心の恒星を周回せずに宇宙空間を永遠に漂う天体が確認されています。2004年に初めて発見された浮遊惑星は、特に地球程度の比較的軽い惑星に多く存在することが見つかっています。これらの浮遊惑星は、太陽のような中心天体の周りで形成された後、重力のバランスから軌道が乱され、惑星系から弾き飛ばされたと考えられています。そして、月は元々浮遊惑星であり、地球が捕獲したという説が存在しています。しかし、この確率は非常に低いため多くの支持は得られていません。
これら3つの説は、力学的・物質科学的に矛盾なく説明をすることができなかったのです。
■太古の地球に惑星「テイア」が衝突した?
そして四つ目の仮説として、1984年に唱えられた「ジャイアント・インパクト説」が、現在のところ最も支持されています。それは、火星とほぼ同じサイズの惑星「テイア」が太古の地球に衝突し、発生した破片が地球の周りを周回している内に、凝縮することで月が誕生したという説です。ちなみに、名前は月の女神セレネの母テイアに由来しています。
ジャイアント・インパクト説が正しいとすると、月の核が小さい理由や、月を構成している成分などが説明できるようになります。しかし、それでも地球と月の岩石の同位体比がほぼ同じである点など、説明できない点も多々残されています。これらの矛盾については、天体衝突が一回ではなく、複数の衝突があったとする説も提示されています。
そして、NASAのアポロ計画や、ソ連のルナ計画で持ち帰られた月の石を分析することにより、月が形成された当初は表面がマグマオーシャンであった可能性が高いことが判明しました。この結果は、惑星「テイア」と地球の衝突により発生した破片が、互いにぶつかり合うことで高温となり、原始の月の表面がマグマで覆われた証拠と考えられているのです。このことからも、月の起源としてジャイアント・インパクト説が支持される要因とりました。
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