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結婚・出産しないことへの世間の風当たりの強さ。卵子提供に志願する独身女性を実際に演じて

水上賢治映画ライター
「Eggs 選ばれたい私たち」 寺坂光恵  筆者撮影

 日本ではまだ浸透しているとはいえない、子どものいない夫婦に卵子を提供するエッグドナー(卵子提供者)に志願するアラサー女性を描く映画「Eggs 選ばれたい私たち」。

 現在の日本社会においての女性の生きづらさに言及する本作について、主演のひとりである寺坂光恵のインタビューの後編へ入る。前回のインタビューに続いて今回も演じた純子の話から。

人からみえる自分の態度や対応が、自分が思っていることと

まったく違う印象を与えてしまうことの難しさ

 卵子を提供するドナー制度に登録することを志願する純子だが、実際に演じてこんなことを考えたという。

「お風呂に純子が入っていて、そこに葵が間違って入ってきて慌てて体を隠す場面がありますけど、あそこは撮り直しているんです。

 あのシーンはレズビアンである葵が入ってきたから隠すのではなく、人が急に入ってきてびっくりして隠すという意図があったんですけど、私が最初に演じたのを観たときに、レズビアンが入ってきたから隠しているように見えるという意見が出たんです。

 演じていて、そういう意識はまったくありませんでした。でも、そのように映るのだったらと、よりそうではないという意識をもって、改めてシーンを撮り直しました。

 人からみえる自分の態度や対応が、自分が思っていることとまったく違う印象を与えてしまう。こういうことが往々にしてあるんだなと実感しました

 このことが純子を体現していて、けっこう怖いなと感じましたね。自分にそういう意識はまったくないのに、相手を傷つけてしまっていたりすることがあるんだと。

「Eggs 選ばれたい私たち」より
「Eggs 選ばれたい私たち」より

 わたし自身は、そのことの方がエッグドナーを志願するか否かよりも切実に感じたというか。

 ほんの一端を切り取って誹謗中傷や炎上が起きるSNSのトラブルなどが重なってきて、純子を通して今の時代のコミュニケーションの取り方の難しさとか、いろいろと考えるところがありましたね」

自分で選択肢をもって、自ら選択していくともっと楽に生きられるのかな

 この物語が映し出すことのひとつである、自己肯定感の低いいまの社会、「選ばれたい」と思ってしまう女性心理についてはこんなことを思ったという。

「私自身はあまりそう思ったことはないのでなんとも言えないところがあるんですけど……。

 ただ、あらゆる場面で自分で選択肢をもって、自ら選択していくともっと楽に生きられるのかなと思います。

 基本、自分で決めていけば後悔はないというか。人に流されるとどうしてもその相手のせいにしてしまう

 自分がこうと思った方向へ進んでいれば、もっと自己を肯定できるような気がします」

「Eggs 選ばれたい私たち」 寺坂光恵  筆者撮影
「Eggs 選ばれたい私たち」 寺坂光恵  筆者撮影

映画や演じることに国境はない

  今回は複雑な胸の内を抱えた純子という難役を見事に演じ切った。これからさらなる活躍が期待される。

「俳優業に関しては、求めてくれる人がいるならぜひやりたい。映画が大好きで、これからも映画にたずさわっていきたい気持ちはあります。

 ただ、それだけにくくられないでいたいとも思っています。自分が興味がもったもの、おもしろいと思ったことに素直にトライしていきたい。

 この映画で、海外の映画祭に行かせていただいたのですが、そこで思ったんです。『映画や演じることに国境はない』と。

だから、どこの国とかにとらわれず、チャンスがあったらいつでもつかめるような準備はずっとしていきたいなと思っています。

私を必要としてくれるところにいって、演じられたらと考えています」

「Eggs 選ばれたい私たち」より
「Eggs 選ばれたい私たち」より

「Eggs 選ばれたい私たち」

監督・脚本:川崎僚

出演:寺坂光恵 ​川合空 三坂知絵子ほか

アップリンク渋谷にて公開中

詳しくは、こちら

場面写真はすべて(C)「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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