「過剰な責任感を手放す」 どん底から起死回生できる人の共通点とは? 人気作家・本田健に聞く(1)
多くの人の人生が一変した2020年。これからの時代はどうなっていくのか。
時代の先読みに長けた、累計800万部のベストセラー作家、本田健さんに、急な予定変更、強制終了がかかったときの事態のとらえかたと対処のしかたを語ってもらった記事に続き、「今までとは全く違う新時代の価値観」について聞く。
新しい時代は何に価値が置かれるのか。「お金や土地よりも価値が出るもの」とは?
投資家としても成功し、経営コンサルタントとしても活躍、「ビジネス」「人間関係」「願望達成」などのテーマでミリオンセラーを連発する人気作家でありながら、オンラインセミナーや人生相談などの動画配信も積極的におこなう本田さんに、どん底に落ちたときの起死回生のしかた、激変する時代を生き抜くためのヒントをもらった。(前半)
ネガティブな思考の経営者のほうが成功する
―― 本田さんはベストセラー作家として、時代を読む力があって、先々の行動をとられていると思うのですが、全ての人がすぐに動けるわけではない。なかなかやってきたことを変えられない。こだわりや習慣があるので。
本田 そうですよね。
―― 世の中を見たら、経済が悪化して、失業者が増えて、生活も困窮している。懸念されるのは、自殺者も増えていっている。でも、本田さんは、セミナーで「これは大逆転のチャンスかもしれないよ」と言われている。悲観してしまうようなとき、波に飲まれそうなときに、何かアドバイスがあれば教えてください。以前、「ネガティブな思考の経営者のほうが成功する」という話をされていましたね。
本田 はい。最悪をちゃんと予想している人は、「まさか」が起きても慌てないんですよね。でも、ポジティブ一辺倒の経営者の人というのは、「まさか」を想定していないから、不測の事態、ネガティブなことに弱いんです。勝ち戦には強いけれども、負け戦に弱いということなんです。
経営していたら、10年に1回は必ず危機がくるもの
―― うまくいっているときは気持ちが高揚していいけれども、すぐ心が折れちゃうということですね。
本田 だからやっぱりうまくいくこともあれば、うまくいかないこともあるんですよね。
―― 人生にはね。
本田 僕の人生を見ても、だいたい10年に1回やっぱりピンチというのが来てます。社会的にも。10年くらい前というと、震災があった。リーマンショックもあった。その前は、ITバブルの崩壊があったし。その前といったら、バブル崩壊ですものね。そのもう少し前は、オイルショックもあったし。だから10年に1回ぐらい、経営していたら必ずそういう危機が来るんです。今困っている人たちは、この10年で下り調子を経験したことがない人なんです。
―― ずっと上り調子だった。
本田 この7~8年をどんどん拡大してきた人は、5店舗とか10店舗とか調子に乗って増やしてしまっています。本物かどうかは、1回不況の波をかぶって、そこを生き抜けるかどうかで見極められます。
―― ある意味、お試しが来ているという。
本田 そうです。だから、極端な話をすると、10年間ぐらいは誰でも成功できるんです。
―― では、今が本当に踏ん張り時だと。
本田 はい。だから、この危機を乗り越えられた人は、しばらくいけるでしょうね。
ギャンブラータイプの経営者は浮き沈みが激しいのが好き
―― ポジティブ思考だけではダメ。かといって、悲観に陥るのもイヤ。そのうち危機的状況にも慣れちゃって「まあ、自分は大丈夫だろう」と楽観視する場合もある。それはどうですか。
本田 地震とかでも、逃げ遅れる人というのは、必ずそう思ってしまいがちです。
―― 結局、現実をちゃんと見て、受け止めて、かといって、あまりにも悲観し過ぎないし、ポジティブにもなり過ぎない。冷静さを持つということですか。
本田 そうですね。ほとんどの、今、調子がいい人、この10年うまくいったという経営者は、震災の後、調子が良くなっているんです。僕は、父が税理士をやっていたこともあって、20歳前から、30年以上ずっといろんな経営者を見てきているのですが。
―― 投資家として活動もされているし、経営コンサルタントとしても経営者の方を多く見られてきた。
本田 はい。やっぱり、5年以上経営していると、いろいろ起きるでしょう? 例えば、銀座によく来る人たちって、数年おきに変わるんです。
―― メンバーが入れ替わる。
本田 はい。旬の業種というのは、なかなか続かないということですよね。
―― 長く続く人は、リスクヘッジが上手なのか、早めに気付いてどんどん自分を変えていく人なのか、それとも、ダメになっても打たれ強いんですか。
本田 ドクターとか弁護士とか、専門職の人たちは長く続きやすいですよね。実業家の人たちは、やっぱり浮き沈みが激しいですよね。
―― その中でも、不死鳥のような人ってどういうタイプですか。
本田 その人たちはギャンブラータイプって呼んでいるんですけれども、上がったり下がったりするのが好きな人なんです。
―― 波瀾万丈が好き。
本田 ジェットコースタータイプとも呼んでいるんですけれども。
―― それはいいことなんですか。
本田 いい悪いじゃなくて、好みの問題なんです。だから、そういうのが好きなタイプの人は、今、めっちゃ、燃えていると思います。「来た!!」ってね。アドレナリンがドバドバ出ているんじゃないかな。
ビジネスは社会が求めるものしか成り立たない
―― では、真面目一本でずっとやっていた職人気質の人は、どうしたらいいんですか。
本田 今、急に仕事が無くなって、パニクっているでしょうね。
―― そういう人は、どこから始めたらいいですか。考え方も生活も全て変えないといけないとしたら。例えば、靴職人の人が、明日から靴を作らなくていいとなったら、もう、自分は何をしたらいいかわからない。野球選手でも、戦力外通告をされたら、どうしていいかわからなくなるじゃないですか。小学生でリトルリーグの頃からずっと野球をやってきて、今更、すぐに人生を変えられない。自分は野球しかしてこなかったという人はどうしたらいいんですか。
本田 うまくいかなくなったら、その瞬間に人生リセットになるんです。経済的か精神的か分かりませんけれども。挫折してバラバラになった自分をかき集めなくちゃダメなんです。それは野球でも職人でも、シェフでもそうですよ。だって、レストランに人が来なかったら、やっぱり成り立たないんです。
―― そうですね。
本田 厳しい言い方だけれども、社会に求められないものはすぐに消滅するんです。例えば、ジュエリーを作っている人がいますよね。アパレルやジュエリーは、しばらくは、流行らない可能性もあるんです。
―― それは今、必要ないというか、おしゃれを楽しんでいる場合ではないということですか。
本田 今すぐは必要ない。あるいは、高級車を売っているセールスマンとかもね。お金がある人も、この時期に新車を買ったら、人に何と言われるか分からないじゃないですか。
―― 確かに。
本田 そういう意味では、不要不急のものも、これからは難しい。ビジネスというのは、社会が望むもの、求めるものしか成り立たないんです。当たり前のことなんですけどね。
自分でリセットするか、社会にリセットされるか
―― では、これしかできないと思っている、頑なさというのは、1回、自分でリセットしないといけないですか。
本田 自分でリセットするか、社会にリセットされるかどっちかなんです。
―― だとしたら、自分で決めたほうが潔いですね。
本田 潔いというか、例えば、レストランがこのままだと成り立たないと判断したら、僕なら早々に店じまいして、次の仕事をどうするか、考えます。
―― それがなかなかできない。長年努力してきたこと、ずっと積み上げてきたことをそう簡単に手放すことはできないですよね。
本田 貯金を取り崩しながら、ダメになるまでいくというタイプの人もいるわけじゃないですか。
―― それではやっぱりダメですか。
本田 大切なのは、ソフトランディングか、ハードランディングかを自分で決められない人たちは、必ずハードランディングすることになるんです。
残念ながら、社会の変化で成長できる人と、破綻する人がいる
―― 強制終了がかかりつつあっても、ずっとしがみついていたら、もういよいよ大変なことになる、大惨事になるということですか。
本田 はい。だから、強制終了前に、ブーって、今、サイレンが鳴り渡っているわけです。そこで、10、9、8ってカウントダウンが始まっているわけじゃないですか。その間に何とかして逃げられる人と、8、7、6って言いながら、「もうダメだ」と動けなくなる人がいるんです。
―― 絶望的になって諦めてしまう。もしくは、逃げろって言っているのに、通帳を取りに家に戻ってしまうみたいなことですか。
本田 そうです。あとは、段取りの悪い人。通帳はどこだったっけ? みたいになる。
―― パニックになっていると、余計にそうなりますよね。
本田 残念ながら、社会の変化で成長できる人と、破綻する人がいるんです。やっぱり、変化をうまく乗り切れる人と、変化の時に決められない人がいるんです。だから決められない人はきついですよね。
―― では、どうしたらいいんですか。
本田 見切りができるかどうか。そして、人に頼ることです。お願いすることですね。自分で何とかしようとするのではなくて、助けてもらう。これが苦手な人が多い。経営者の人は責任感が強く、弱みも見せず、弱音を吐かずにやってきた人が多いんです。過剰な責任感を手放す。これからは、助け合う、分かち合う時代です。
―― 確かに。今こそ、甘えるとき、支え合うときですね。
起死回生する人たちの共通点
―― 本田さんは経営コンサルタントとして活躍された20代の頃から、いろいろな経営者を見られていると思うんですけれども、どん底まで落ちて起死回生した人というのを見たことはありますか。
本田 それはたくさんあります。
―― その起死回生する人たちの共通点というのは。
本田 やっぱり、人に助けてもらったという人です。自力じゃ絶対に上がれないんです。経営者仲間に助けてもらったり、お金を出してもらったり、チャンスをもらったり、そういうことでしか上がれないんですよね。
―― それまでに、人に不義理をしちゃうとどうなりますか。
本田 不義理をしてたら、やっぱり駄目ですよ。
―― では、助けてくれる人もいない、もう駄目となったら。
本田 もう一遍、本当にゼロからやるしかないですよね。
―― 腹をくくって。
本田 そう、全くのゼロから。
―― 全くのゼロになって、それで起死回生する人もいますか。
本田 もちろんできるとは思います。でもそこまでになっているというのは、やっぱりそれ以前に問題がありますよね。ちゃんとしている人はそんなふうにはならないです。
―― 言い方は厳しいけれども、今、つぶれるということは、何かつぶれるような要素がもともとあったということですか。
本田 もともとうまくいってないところが、今つぶれているんです。これから年末、1、2月につぶれるのは、コロナが原因でしょう。
―― なかなか落ちているときに「頑張れよ」とも言えないんですけれども、何か転換できる方法はありませんか。本田さんは、いろいろな人生相談を受けてこられていると思うので、今、絶望の淵にいて、死にたいとさえ思っている方たちに、どういう言葉をかけますか。
本田 未来に対する好奇心でしょうね。未来に対して好奇心がなくなった瞬間に、人はやっぱり絶望するんです。僕だったら、未来というか、数年先に車が空を飛ぶ世界、やっぱり見てみたいなと思いますよね。
―― そうですよね。昔はまさかと思っていた、自動運転も始まって。
本田 そう。空飛ぶ車に乗ってから、死ねばいいと。そうなったら、何年かは元気でいないと駄目ですもんね。
―― 今はこういう世の中だけれども、もしかしたら価値観が大変換するかもしれないですよね。
本田 だって、ここからどんな時代になるのかめちゃくちゃ楽しみですよ。
―― もしかしたら、お金持ちといわれていた人だって、どうなるか分からないですもんね。ガラッと世の中の価値観が変わるかもしれない。
本田 はい。だからガラガラポンで、もう一遍ゼロからみんなやるんですよ。
―― では、大逆転は起こり得ますか。
本田 もちろん、そういうことはあるでしょうね。
「楽観バイアス」が人をダメにする
―― そして、決めざるを得ない状況が来るなら、早めに決断したほうがいいということですね。
本田 そうです。『見切り千両』といって、株もあ、あ、あと思っている間に、どんどん損失が増えるわけです。だから、人の来ないお店を開けていたら、ずっと赤字が累積するわけでしょう?
―― 早めに決断ができるかどうかですね。
本田 そうですけれど、「楽観バイアス」が人をダメにするんです。「楽観バイアス」というのは、とりあえず、来年になれば何とかなるはずだ、あと1カ月頑張ろうってなるんです。でも、1年たっても回復しない。どんどんダメになって、本当に破綻するんです。
―― では、現実を見ないようにして、楽観視して、大丈夫、大丈夫というのもダメだし、深刻になって怖がり過ぎるのもダメだし、ちゃんと備えをして決断していくというのが一番いいということですよね。
本田 はい。でも、ほとんどの人は怖いから、ニュースを見ないようにしてる人もいる。でも、ニュースを避けて、全く見なかったら現実を知らないことになる。
(後半に続く)