「過剰な責任感を手放す」 どん底から起死回生できる人の共通点とは?人気作家・本田健に聞く(2)
新しい時代は何に価値が置かれるのか。前半に続き、投資家としても成功し、累計800万部のベストセラー作家である本田健さんが語る、「お金や土地よりも価値が出るもの」とは? 全く違う価値観で大逆転になる可能性がある新時代に備えることは。
本当の意味での『働き方改革』ができる
―― 今年、誰もが今までにない経験をしました。学校へ行かなくていいとか、会社へ行かなくていいとか。全員、生活の変化を経験している。引きこもり生活も長期休業もやらなければいけなかった。であれば、この際、子育てを本気でやってみるとか、夫婦仲をよくするとか。何かちょっとプランを教えてもらえますか?
本田 だから、初めて本当の意味での働き方改革ですよ。テレワークでOKなんだったら東京に住んでいる意味があるのかということになってきました。そもそも、今の仕事を続けたいかということも考えますよね。多分、これから覚悟しないといけないのは、もしかしたら、皆さんのお父さん、お母さん、祖父母という人たち、一定数の人たちが亡くなるかもしれないんです。誰も先のことはわかりません。
―― そんなあ。それは、辛すぎる。
本田 だから、両親、兄弟、家族の絆をこの機会に深めてほしいんです。今まで言えなかった「ありがとう」も「助けてほしい」も今が言うときです。疎遠になっていた絆も取り戻すときです。電話で声を聞くだけでもいい。これからは人とのつながりがより大切になります。
―― そうですね。いつでもできると思っていることは、今、かもしれない。
本田 だからこそ、こういうときに、「人生、これでいいのか」とみんなが考え始めています。世界全体が強制リセットされて、ここから新しい世界が始まるんだと思います。僕は、ミクロでは大変だけれども、マクロでは、長い目で見ると、素晴らしい世界がやってくると考えています。
ここから新しい世界が始まる。長い目で見れば素晴らしい世界がやってくる
―― では、今までは何のために仕事をしているかわからない、とりあえずやっていたのが、本当にこの仕事を続けるのかというのを決めたりとか。家族と過ごす時間も今までになく長くなって、学校も休校になって子どもさんも家にいる、会社に勤めていた旦那さんもいるという状況があった。家族がずっと24時間一緒にいるということになったわけじゃないですか。
本田 だったらもっと田舎に引っ越して、広い場所に住もうかという話にもなるし。別に、都会の狭い部屋に住まなくてもいいんじゃないか。東京に住む必要がないんじゃないかというようなことになったんです。
―― 今まで、いろいろ働き方の問題だったり、一極集中というような問題が、本当の意味で直面できましたね。
本田 それで、本当に自分にとって、大切なものがわかってきたと思うんです。今までは、みんなが忙しかったけれども、ひょっとしたら、何かもっと他のことが大事なんじゃないかなというふうになったと思うんです。
―― 著書『Happy Money』を世界に広げるということで、今年、世界でセミナーをされる予定だったじゃないですか。私が考えるHappy Moneyって、人にいい施しというんですか、究極のところ、経済を循環させるためにいいお金の使い方をするという話じゃないですか。
本田 はい。
―― 実はまさに、そういうことが必要になるんじゃないかなと。経済が破綻するかもしれないときに、こんなときだからこそ、クラウドファンディングでお金を出します、寄付します、あるいは、私は花を買いますみたいな人が出てきていると思うんです。それで、誰かにプレゼントしようかという人も。「私はお金をいいことに使いたいです」という人たちがいる。
本田 それは、僕も実はやろうと思っていて、タイミングを今、見計らっているところだけれども。僕は『Happy Moneyファンド』というのを作ろうと思っているんです。最初に僕が1,000万円出して、そして、1人10万円で、取りあえず100人にお金をプレゼントするとか。
―― へー、すごい。
本田 で、同じように、僕に賛同してくれるようなお金持ちの人たちは、それぞれでやってもいいし。お金に余裕のある人は1人100万円単位で出してほしいって。1億円出してもいいっていう人も出てくるでしょう(笑)。みんなでお金を出し合うことで、お金を回そうというムーブメントを起こそうと思っているんです。
―― いいですね。ということは、別な形で、『Happy Money』で伝えたかったことが発信できますね。
本田 そうなんです。だから、それは、どのタイミングでやるのかということ。まだ、ちょっとみんな、ピンときていないと思うけれども、本当に世界中が怖くなったときにそれをやったら、すごくインパクトがあるんじゃないかなと思って。
新時代で強みになるのは『無形資産』
―― これからの新しい時代というのは、どういう時代だと思いますか。
本田 これからはやっぱり『無形資産』が大切になると思います。今までは、お金とか不動産とか、形あるもの『有形資産』を持っている人がお金持ちと言われてきた。でも、この先はどうなるかわかりません。
―― 何がどうなるか分からない時代ですからね。
本田 だからこそ、形のない『無形資産』が大切になるんです。これから評価される資産は、「優しさ」「つながり」「親切さ」「受容力」「共感力」「感動力」「家族愛」「楽しさ」そういうものなんです。そういうものを持っている人に共感が集まるわけですよね。
―― では、お金を持っているとか、土地を持っているとか、そういうことじゃなくて、形のないもの、人間力とか、感性とか、経験とか、そういうことが大事になるんですね。
本田 はい。そういうものが大事になってくるので、逆に土地を持っていたって、人柄が悪い人、意地悪な人もいる。そういう人はやっぱり尊敬されなくなるでしょう。
―― 何が起こるか分からない時代だからこそ、どういう転換が起こるか分からないということですね。
本田 そうですね。
―― でも自信がなくなっている方にしてみれば、「僕にはもう何もないよ」「私は何も持ってません」という人もおられると思うんですよね。
本田 それは『有形資産』がなくなっただけで、『無形資産』がなくなったわけじゃないんです。だから『有形資産』の断捨離をしたと思えばいいんじゃないかな。
―― 今までしがみ付いていた、持っていた物がなくなって。
本田 必要なかったんです。言ってみれば、脂肪がなくなったのと一緒です。まさかのときに使おうと思っていた脂肪がなくなって、スリムになったんだから、もし、これが体形の話だったら、素直に喜ぶべきことなんですよ。
―― すごく身軽になって良かったと。
本田 身軽になったんだから、もっと健康的になったわけです。
―― ただ、優しさとか親切さとか、「僕は持ってるけど、お金にならないんですよ」という場合は。
本田 お金にすぐしなくてもいいじゃないですか。優しい人だから友だちがたくさんいて、誰かがごちそうしてくれるかもしれない。そういうことがあれば、別にお金は必要ないわけだから。
―― では、「何とかしなきゃ」というふうに思わずに、自分らしさというものを大切にするということですか。
本田 はい。だから、今まで疎遠になっていた父親、母親に頼るとか、親戚の家に転がり込むとか。戦後はそうだったんです。空襲で焼けたら弟の家に家族全員で避難したとか、よく聞くじゃないですか。これからはそういう時代なんです。
―― ある意味、何でもありじゃないけれども、本当に有事の際ですからね。
本田 はい。
全ての価値観がひっくり返って大逆転があり得る時代
―― これからは「個の時代」と言われていて、自分の個性、才能を見いだす時代でもある。その大前提として、多くの情報の中で、自分で判断していく、自分が決定していくというときに、何を頼りにしていけばいいですか。
本田 例えば、今、住んでいるところが安全じゃないという情報を得たら、やっぱり引っ越しをしたほうがいいですよね。それと同じで、コロナにかかりやすいライフスタイルの人は気を付けなくちゃいけないし。そういったことだと思いますよ。例えば、ニューヨーク市からは、すでに30万人もの人が都市部を脱出して、郊外に引っ越しました。
―― 情報を手にして、自分はどういう生活をしているか、どういうふうにやっていきたいかということを指針に考えて決断していくということですね。
本田 そうですね。
―― もしかしたら、生活全般をひっくり返さなきゃいけない場合もありますものね。
本田 だって、お店をやっていて、破産したらしょうがないですよね。戦争中には、空襲で焼け出されて、野宿して、そこからみんなはい上がったんです。
―― では、多少はイレギュラーなこともこれからは選んでいくということですよね。
本田 選ばざるを得ない人たちが続出するでしょうね。だって海外旅行が98%なくなっているんですよ。外国人は99.9%来ていないわけだから。だから、インバウンドに頼っていた店はこの2年でめちゃくちゃ増えたんですが、お金が続かないところは、撤退していくでしょう。しばらく海外からのお客さんは見込めませんからね。
―― 今年、本当はオリンピックで景気が上昇すると思っていたのに。そう思って、ホテルとかもたくさん整えられたと思うんですけれども。
本田 その当てが外れたということですから。何が起こるかわからない時代です。これから、その玉突き現象が起きるでしょう。
多くの人が自分の人生と真剣に向き合った1年
―― 本田さんは、今年1年を振り返ってみて、どうでしたか。
本田 僕は非常に不謹慎ながら、個人的には面白い、興味深い年でしたね。
―― それはどういう意味でですか。
本田 多くの人たちが、人生の本当に大切なものをちゃんと見いだしていくという意味で、リアルに自分の人生と向き合っているわけじゃないですか。僕がサポートできるのは、本気で自分らしく生きていこうという人たちだから、そういった意味では僕がたくさんの人たちをサポートできる時代になった感じがします。
―― 今までは変な話、「お金持ちになりたい」「仕事を成功させたい」だったのが、真剣に「明日どうしたらいいの?」「この先どう生きていったらいいの?」と。
本田 全ての人たちが自分の生き方について真剣に考えるタイミングで、そういう人たちをサポートできるのは非常に喜びですよね。
―― 本を書くにしても、読んでいる人のそこに応えていこうとはっきりと思えるということですよね。
本田 はい。そういうことができるのは、僕にとってはすごくうれしいことですね。
―― 本田さん自体は、この1年間で、何を得ましたか。
本田 新しい生きかたと新しい仕事のしかたですよね。
―― 何か捨てたものというのはありますか。今までとは変えたものは。
本田 大人数でのパーティーとか、たくさんの人とリアルに会うというのは、少なくとも1年はできないなと思っています。ハグしたり、されたりもないのは寂しいです。
―― でもそれができなくても、また違うやり方があったということですよね。
本田 それは移りゆくしかない。僕は、そこはすごく柔軟なんです。くるものを拒まず、上手に受け取り、あるいは流していく感じでしょうか。
―― これがないと駄目というわけではない。ということは、やっぱり臨機応変さとか柔軟性、そういうのも必要ですよね。
本田 そうですね。
人生とは予定変更の繰り返し。そもそも思い通りにはならないもの
―― 本田さんだからかもしれないけれども、なぜ、そんなに切り替えられたんですかね。
本田 切り替えられたというか、僕は元々人生とはそういうもんだと思っているんです。
―― 予定は未定みたいな。予定というものは常に変更するものみたいな?
本田 人生というのはイレギュラーなことが起きるものだと思ってます。それにどうやって対応していくのかというのが、実は人生なんですよね。「えっ」ということもしょっちゅう起きるでしょう。それでイライラしていたり、誰かのせいにしたり、自分の不運を呪ったりするんじゃなくて、人生はそういうものなんだから、それを100パーセント受け入れると最初から決めているんです。
―― 本田さんは、順風満帆で、計画どおりにいっているように思われるじゃないですか。
本田 いや、そんなことはないんです。絶対にないと思います。自分が思うとおりに人生がいくということはどんな人にもない。そうだと思ったら、夢を見ているだけなんです。夢の中だけ。人生が予定通りにいかないからといって、不幸になるわけでもないんですよね。
―― その予定の変更のおかげで、また新たな幸せが訪れる。
本田 そう。僕なんてコロナがなかったより、あったほうが幸せ度がグッと増えました。
―― それは、たくさんの人に出会えたとか?
本田 いろいろな意味で。チャンスは広がっているし、収入もすごく増えているし、本当に誰が友達で誰がそうじゃないかもはっきりしますよね。ある意味、この人とご飯を食べて、コロナに感染しても仕方がないという人としか、僕はご飯を食べていないから。「ちょっと会いましょう」というのが一切なくなりました。だからそういった意味で、本当に不必要な時間がなくなったから、今すごく自分の時間が増えた感じがします。
「物の見方一つで全然人生は変わるよ」を実践してきた
―― 自分にとって何が大切かということがよく分かった年ということですか。
本田 そうですね。そして、これから自分ができることもはっきり見えてきたので、自分の人生の目的ともすごく向き合えた年になりました。
―― ちなみに、どんなことが目的というか、今後どういうふうにしていきたいですか。
本田 人に「あなたには、こういう可能性があるよ」ということを伝えるのが僕のビジョンだと思います。そしてネガティブなことがありそうだったら、「ひょっとしたら落とし穴があるから、みんな気を付けてね」ということかもしれないし、楽しそうなことがあったら、「これからすごく楽しいことがあるから、そんなに落ち込まなくてもいいよ」ということかもしれないし。
―― それを率先して伝えてきたし、これからも伝えていきたいと。
本田 いずれにしても「物の見方一つで、全然人生は変わるよ」ということを僕は実践してきたし、今も実験中です。それを多くの人たちに伝えて、すごく気分が明るくなったとか、楽しくなったとか、怖くなくなったとか、不安が消えたというのを、少なくとも数千人の人たちから直接聞いているんですよね。これは、日本だけでなく、世界中の読者やファンからです。それは、僕の中でも1番の喜びですね。
―― メッセンジャーとして発信していくためには、言葉で言うだけじゃなくて、やっぱり自分が率先してやっていかないといけないわけですね。
本田 そうですね。そしてそれをすごく心から楽しんでいます。
―― それこそ、例えば今、Wi-Fiが突然つながらなくなって、オンラインでやれないとなっても、それはそれでいろいろな方策を考えたり。いくらでもアイデアは出てきます?
本田 だったら、何か考えますよ。そのときそのときのアイデアを出してね。とにかく手持ちのカードでやるしかないんだから。
リセットは必ずその人の幸せにつながっていく
―― では最後に、本田さんの長年の経験と、作家としても成功もされている中で、この激変の時代にどういうふうにやっていったらいいか、アイデアを教えてもらえますか。
本田 一つ言えるのは、すごく怖いことや最悪なことって、5年たったらすごくいいことにつながっていることが結構多いんです。失恋だったり、受験に失敗したりとか。今回も仕事を失ったり、破産したりする人たちも続出すると思うんですけれども、そのときは辛いと思います。でも、リセットは必ず、その人の幸せにつながっていくようになると思います。
―― 後で、あの時があったから、みたいなことですよね。
本田 そうです。なので、ぜひ、今、最悪な気持ちならば、それを楽しんでほしいんです。将来、「あの時は大変だったなぁ」と思い出すために。その時点で、もう自分の人生は幸せな方向に向かうという未来を選択していることになります。
自分に必要のないものは自分から切り離される
―― なかなか難しいけれども、でも、ここで絶望して、悲観しすぎないほうがいいですね。
本田 僕は『ユダヤ人大富豪の教え』という本に書いたように、10代の頃、アメリカのフロリダにある老人ホームを訪ね歩いていたんです。その時に、一番の人気者というのは、若い頃に失敗したりとか、破産したりだとか、大変な人生経験、ストーリーを持っている人たちだったんです。大変な人生を生きた人たちが、すごく生き生きしていたんです。一番つまらなくてバカにされていたのは、何のドラマもなく、リスクもなく、そこそこ小金を作った人でした。
―― 人生の最後に、どれだけ笑えるか。いろんなことがあったにもかかわらずどれだけ楽しめたかということ。
本田 そうです。だから、本当に辛くて死にたくなったときには、ああ、これって後々、最高の思い出になるんだから味わっておこうというふうに思うのか、もう人生終わりだと思うのかで全然違うでしょう? そして、恐れを選ぶのか、愛を選ぶのかということなんです。
―― でも、現実に、死にたくなるような絶望に陥るかもしれません。破産して、支払いができなくなって、人間関係にも亀裂が入るかも。
本田 お金がなくなったって、仕事がなくなったって、愛する人が去ったとしても、それで、死にはしません。あなたが生きていこうと思えば、生きていける。自分に必要のないものは自分から切り離されるんです。元々、必要のないものだったかもしれない。こう考えてください。お金がなくなったときに、どんな自分になるんだろうって。何を思いついて、どんな生活を始めるのか。誰とつながっていくのか。それは、ワクワクすることかもしれませんから。
―― 新しい生活、新しい自分を見いだすことができるということですね。
本田 コロナの収束は、僕個人としては、過去のスペイン風邪のような歴史から見ても、2021夏、あるいは2022年春くらいまでかかると思っています。ですが、何年も先ということではないと思います。それまでの1年をどう乗り切るか、どう生きていくかですよね。
大変な思いをしたことほど、人生を素晴らしいものにしてくれる
―― 実際に本田さん自身の人生もいろいろおありだったんですものね。でも、リセットされたり、自分で決めてリタイアしたり、で、今があるというわけですね。
本田 そういった意味では僕もたくさん大変な目に遭ったけれども、今となっては笑い話ですよ。ネタになる。作家としては、オイシイのです(笑)。人生の先輩方、激動の昭和を生き抜いた、戦前、戦後を生き抜いたメンターたちがよく言っていたのは、もう死ぬかと思ったことが何回もあったけれども、あれが一番面白かったと言っているんです。そういう思い出ほど、人生を素晴らしいものにしてくれます。今は、とてもそうは思えないことは分かっていて言っているんですが、あえてそう言える未来を想像してみてください。
―― 本当にそうかもしれませんね。みんなが乗り越えるべき苦難ですね。
本田 はい、だからこそ、最悪、辛い気分を受け止めて、楽しんでしまいましょう。そのうち全く新しい生き方ができるから。今はそう思えなくても、幸せになっている未来の自分と出会うことを意識すると、運命は変わると思います。
●本田健さんのインタビュー第1弾は