『アフリカの角』ソマリア史上最強のサイクロン「ガティ」上陸
アフリカ大陸から角のように突き出た、いわゆる「アフリカの角」に位置するソマリアには、乾燥した大地が広がっています。特に北部は年間降水量50ミリと、非常に雨の少ないエリアです。
この大雨とは無縁と思われるソマリア北部に、現地時間22日(日)18時頃、サイクロン「ガティ(Gati)」が上陸しました。ソマリアの観測史上最強のサイクロンです。
米軍合同台風警報センター(JTWC)の解析によると、上陸時の最大風速(1分平均)は47m/sと、ハリケーンの強さでは5段階で4番目に強い「カテゴリー2」に相当します。これまでソマリアには、ハリケーンの強さに匹敵するサイクロンが上陸したことはありませんでした。
ガティの最大風速は12時間で21m/sから51m/sとなり、インド洋の観測史上もっとも急速な発達を遂げたといいます。
1日で6年分の降水量
ボサソという北部の町では1日で128ミリの雨が降りました。この町の年間平均降水量は20ミリ程度なので、なんと6年分もの降水量に匹敵します。
外電によると、大規模な洪水が発生、情報網も完全にシャットダウンしているもようです。またハフンという漁村では、漁師5人が亡くなるなど、これまでに計8名の死者が確認されています。
しかしいまだ被害の全貌は明らかになっていません。
「サガー」を超える勢力
サイクロンなど熱帯性の嵐がソマリアに上陸するのは、3年に1度程度といわれています。
これまでの国内最強サイクロンは、2018年5月に上陸した「サガー(Sagar)」でした。サガーはガティよりも弱いサイクロンでしたが、53人が死亡、17万人が影響を受けたと伝えられています。
2020年は世界の海域で記録的嵐
ところで、ガティが発生したインド洋のみならず、今年は世界の海域で記録的な嵐が発生しています。
【太平洋】
まず太平洋では、台風19号が世界の観測史上最強の上陸台風となりました。
JTWCの解析によれば、19号のフィリピン上陸時の最大風速(1分平均)は87m/sで、これまで世界に上陸したどんなハリケーンやサイクロンよりも強い勢力で陸地を直撃したことになったといいます。
ただ日本の気象庁による解析はそれよりもやや弱く、見解が異なっていました。
【大西洋】
一方大西洋は、誰もが認める記録的なハリケーンラッシュの一年となっています。
これまでに観測史上最多となる30個のハリケーン(※)が発生、30号目のイオタは11月のハリケーンとしては観測史上最強の勢力となりました。
中米ニカラグアは2週間で2つのハリケーンが上陸し、アメリカは1年で10個の直撃を受けるなど、これまた前代未聞の事態が起きています。
その一方で、幸い日本には今年まだ1つも台風が上陸していません。おそらくこの先もしない可能性が高そうです。台風上陸ゼロは、2008年以来初で、観測史上5度目の珍事です。
(※ハリケーンよりも一段階弱いトロピカルストームも含む)
参考リンク: FAO SWALIM (PDF)
追記(11/25): 内容を一部更新しました。