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スズ子はなぜ子供に「マミー」と呼ばせるのか「ブギウギ」は娘を溺愛する母の物語

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

ステージの場面が面白さであると同時に、日常の生活感に溢れた生活ドラマ

2月10日にスズ子役の趣里さんがクランクアップ、ほかの撮影も「無事に終わりまして良かったです。ありがとうございました」と制作統括・福岡利武チーフプロデューサーは語りながら、ふたつの拳をぐっと握って掲げた。放送は3月30日まで続く。

今週は、第21週。「スズ子は子育てに映画にりつ子との対立に、と奮闘する中で、やっと、助けていただける家政婦の大野晶子さん(木野花)が現れ、味方がまた増えていくという週でございます」と福岡CPが説明するように、前半は、タナケン(生瀬勝久)が再登場し、スズ子は映画に初出演する。

笑いあり歌ありの愉快な映画撮影編は、スタジオや撮影所のなかを東映京都撮影所で撮影し、映画会社は「カムカムエヴリバディ」に登場した「条映」の名をそのまま踏襲、「カムカム」とリンクさせている。

後半は大野の登場で、愛子の育児がようやく楽になる。

「このドラマは、ステージの場面が面白さであると同時に、日常の生活感に溢れた生活ドラマだと思っていまして。大野さんの登場によって、愛子ちゃん子育ても一歩前進し、だんだんと家族になっていくところも今後の見どころだと思います」

と福岡CPはホームドラマの要素を強調した。たしかに、第101回、愛子が破った障子を大野が花形の紙で塞ぐ、ほっこりするエピソードにはオリジナリティーがあった。

すべての曲が、スズ子の生活から生まれたもの

「ステージものとホームドラマをうまく混ぜ合わせて作りたいと思ってやってきました。すべての曲が、スズ子の生活から生まれたものです。例えば『東京ブギウギ』は、お客さんにとっては楽しく元気になれる曲ですが、その裏には、愛助(水上恒司)との悲しい別れがある。戦中戦後の復興のなかで歌って生きていかなくてはいけないスズ子の想いと、ステージの華やかさみたいなところの両方を視聴者のかたに味わっていただけていると思います」

「ヘイヘイブギー」を、スズ子は「愛子とマミーの歌やで」と言う。これは、実際にスズ子のモデルである笠置シヅ子さんも言っていたことだとか。

「服部良一さんは『ヘイヘイブギー』は恋の歌として作られたそうですが、笠置さんは娘さんと自分の歌だとおっしゃっていて、それをドラマにも生かしました。『マミー』という呼び方も実際に笠置さんは娘さんにそう呼ばれていたそうです」

ドラマの序盤は、ツヤ(水川あさみ)の深い愛情が描かれ、終盤に来て、スズ子が愛子へ深い愛情を注ぐ。主題歌にもあるように、母と娘の物語という印象が強くなった。

「もちろん、お父さんの梅吉さん(柳葉敏郎)も大好きですが、母と娘ということは最初から大事にしていました」

ただ、このまま、ほのぼのホームドラマに収斂するわけではなさそうだ。

「まだまだ新しい登場人物も登場しますし、新しい歌もまだまだこれからも出てきますし、物語はどんどん大きくうねりながら進んで行きます」

第22週では大野がなぜ、家政婦としてスズ子の元にやって来たのか、その理由が明かされる。

「ブギウギ」より 写真提供:NHK
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

さて最後に、福岡CPにクランクアップ直後の実感を聞いた。

「すごく長くこのプロジェクトに取り組んでいたので本当に感慨深いです。いくつもの歌と踊りのステージを盛り込んだドラマを初めてやったため、非常に困難を極めましたが、なんとかここまでたどりつけたのは、趣里さんが本当によく頑張ってくださったことと、一人でも多くの視聴者の皆さんが元気が出ればという思いによるものです。好評もたくさんいただいて本当にありがたい次第です」

連続テレビ小説「ブギウギ」
総合【毎週月曜~土曜】午前8時~8時15分 *土曜は一週間の振り返り
NHKBS【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
NHKBSプレミアム4K【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
【作】足立紳 櫻井剛 <オリジナル作品>
【音楽】服部隆之
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【出演】趣里 水上恒司 / 草彅剛  菊地凛子 小雪 生瀬勝久 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【概要】大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・福来スズ子(趣里)は歌や踊りが大好きで、道頓堀に新しくできた歌劇団に入団し活躍後、上京。そこで、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、歌手の道を歩みだす。“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルにした、大スター歌手への階段を駆け上がる物語。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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