深夜の殺し屋キャラから朝ドラヒロインに大化け、局員総出のお迎えに生放送と異例づくしの発表会見
2025年度後期の朝ドラこと連続テレビ小説「ばけばけ」のヒロインが高石あかり(高ははしごだか)さんに決まったと10月29日に発表された。
朝ドラヒロイン発表はもはや毎年の風物詩であるが、今回は生放送で発表という画期的な企画となった。
以前、「ちむどんどん」のヒロイン発表を「あさイチ」でやった(舞台である沖縄からの生中継)が、コロナ禍で、記者を呼ぶ会見を行うことが困難となったことを逆手にとった発表だった。
「ばけばけ」は「視聴者の方とヒロイン発表の瞬間を一緒に迎えようと考えた」という極めてポジティブな試みである。
「ばけばけ」とは
2025年10月から放送予定の、連続テレビ小説第113作目。
松江の没落士族の娘・小泉セツをモデルにした物語。
ヒロイン松野トキは、外国人の夫ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と共に「怪談」を愛し、急速に西洋化が進む明治の日本の中で、埋もれてきた名もなき人々の心の物語に光をあて、代弁者として語り紡いでいく。
原作はない。実在の人物である小泉セツをモデルとして、その人生を大胆に再構成し、 登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描く。
高石あかりとは(高ははしごだか)
2002 年 12 月 19 日生まれ、宮崎県出身。2019 年より俳優活動を本格化。
2021 年に映画「ベイビーわるきゅーれ」で主演を務め話題となり、2023 年には出演作品での演技が評価され、第 15 回 TAMA 映画賞最優秀新進女優賞を獲得。
主な出演作に、映画「ベイビーわるきゅーれ」シリーズ、「わたしの幸せな結婚」、「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」、「きみの色」、ドラマ「生き残った 6 人によると」、「墜落 JK と廃人教師」シリーズ、「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」など。NHK では夜ドラ「わたしの一番最悪なともだち」に出演した。
公開待機作に、映画「スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナルハッキングゲーム」(11/1)、映画「私にふさわしいホテル」(12/27)、映画「遺書、公開」(2025/1/31)などがある。
BKってあたたかい 大阪から生放送
取材陣はNHK大阪局に集まり、大阪に行くことが難しい記者たちはリモートで会見を見守った。
筆者はリモートで、パソコンのリモート画面を、テレビで「列島ニュース」を同時に見つめる体制で臨んだ。
記者は「列島ニュース」がはじまる13時5分には待機。テレビでは13時26分頃から会見の模様を伝えるとアナウンスしていた。
13時11分頃、リモート画面に小山径アナウンサーが映り、会見の段取りを説明。その頃「列島ニュース」では新米を使った日本酒の仕込みを紹介していた。
こういった生放送での発表は珍しいと小山アナ。中継部分はヒロインの発表と小山アナからの2、3の質問のみと説明。マスコミの質疑応答も生放送されるだろうか、と前日の生放送についてのYahooニュースに筆者はコメントしたのだが、マスコミの質疑応答は中継されないことがわかった。そこは生放送らしくリスク回避したようだ。予期せぬ質問、予期せぬ回答があってはいけないだろうから。だが、実際の質疑応答ではあたふたする場面があった(ほのぼの笑い話で済むレベル)。
小山アナはBK(大阪局の略称)の局員が会場の後方にずらりと見学に来ていることを紹介。「BKってあたたかいということを届けてほしいと思います」。
今回の生放送が局をあげての儀式であることがわかる。
あとで、制作統括の橋爪國臣チーフプロデューサーは「発表するにあたって、いろいろな人に迎えてもらいたかった。局内で相談したところ、BKで『列島ニュース』をやっているので、そこで紹介したらどうだというアイデアが出て」と生放送をやろうと思ったわけを明かした。BKスタッフも視聴者もマスコミもみんなそろってヒロイン発表の瞬間を過ごすことで何か一体感が生まれたような気がする。
まず、橋爪CP と脚本のふじきみつ彦さんが登壇し、挨拶。
ふじきさんが「先ほどスタッフとヒロインの方の顔合わせがあり、その時にヒロインの方が皆さんとこのスタッフの皆さんと家族になりたいと言ってくださって、本当にいいヒロインを我々迎えることができたなと、改めていい本書かなくちゃと思った次第です」と高石さんの人柄を紹介した。
そんなこんなで生放送まで時間が余ってしまい、しばし、小山アナと3人でトーク。なんだかほのぼの。
そうこうしていると、リモート画面に、高瀬アナが待機している表情が映り、やがて、テレビ画面とリモート画面が同じになって、生放送開始。会場の上手(向かって右から)高石さんが上品なお着物姿で登場した。
いきなりの涙目で、
「小さい頃から朝ドラヒロインになるのが夢でした。今回、『ばけばけ』が皆さんに温かい気持ちになってもらったり、寄り添えるような作品になれるよう、精一杯頑張りますので、今日はどうぞよろしくお願いします」と挨拶。
着物の柄、ハナミズキと忘れな草には思いが込められていた。
「忘れな草は『私のこと忘れないで』という花言葉があって、何者でもない自分がこうしていまここに立って、皆さんに覚えていただけるような人になれるようにという気持ちを、ハナミズキは『感謝と返礼』という花言葉があって。いろいろな方に支えられて私は生きてきている。いま、この場で少しでも感謝の気持ちを返せたらという気持ちで、この柄を選びました」
ひじょうに楚々とした雰囲気ながら、2892人ものオーディションの中から高石さんが選ばれた決め手はどうやら、主演作の「ベイビーわるきゅーれ」の演技だったようだ。
「明治時代の女性の役ですし、オーディションもかしこまった感じで臨んでいたんです。そうしたら、監督から『ベイビーわるきゅーれ』だと思ってやってみてと言われたんです。『ベイビーわるきゅーれ』は殺し屋のドラマで、『バケバケ』とは真逆な作品と思っていたのですが、そう言われたとき自分のなかでなにかひとつ外れて、自分らしくできた気がしました」
『ベイビーわるきゅーれ』は、ふだんはゆるゆるな日々を送っている若者が実は殺し屋で、仕事となると鮮やかに相手を仕留める話。映画が注目され深夜ドラマ化された。
このやりとりのとき、高石さんは、一瞬、他局のドラマ『ベイビーわるきゅーれ』の名前を出すことを躊躇したが、促されて題名を出した。生放送なので慎重になったのだろう。その後、放送されない記者たちとの質疑応答の時間では、大阪でたこ焼やお好み焼きを食べたいという話題になり、小山アナがおすすめの店があると言ったが「ちなみになんていう?」と高石さんが聞くと、「ちょっと私からは言えないんです。NHKなんで」と言葉を濁す一幕があった。公共放送であるNHKでは宣伝になる可能性があるので、特定の商標が出せないのである。『ベイビーわるきゅーれ』は言ってもいいが、たこ焼き屋さんの名前は言えないのであった。
1時32分頃には生放送は終わり、その後もいろいろな質疑応答がなされたあと、写真撮影が行われ、2時34分からは「列島ニュース」のスタジオに高石さんが移動して高瀬アナによるインタビューが放送された。
撮影は25年3月からの予定。放送は10月。まだ1年もあるが、これだけインパクトのある発表だったので多くの人の心に残ったに違いない。
高石さんは、直筆のメッセージも書いて、それが印刷されてマスコミに配られた。
イラストもみごと。筆者は高石あかりさんが今回選ばれるとは想像していなかったのだが、舞台「鬼滅の刃」を見て禰豆子役の人が勢いがあって凄いと思っていて、それが高石さんだった。会見でも、泣いてはいたが、明るくパワフルで、でも初々しくて、生まれたての子どものようなエネルギーの塊みたいな印象で、「ばけばけ」が楽しみになった。