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ウルリッチ博士の2016年HRコンピテンシーモデルはこれだ!パラッドックスナビゲーターが重要な役割に

三城雄児治療家 ビジネスブレークスルー大学准教授 JIN-G創業者
人事の役割は経営と現場の矛盾するメッセージを調整していくこと(写真:アフロ)

ウルリッチ博士のHRコンピテンシーモデルの最新版

5年に1度の調査をおこなっているウルリッチ博士のHRコンピテンシー研究ですが、先日のシンガポールでおこなわれたSHRI(シンガポール人材マネジメント協会)の会議で、2016年の新しいコンピテンシーモデルをプロジェクトメンバーから情報共有いただきましたので、内容を紹介します。

ウルリッチ博士のコンピテンシーモデル2016年版
ウルリッチ博士のコンピテンシーモデル2016年版

こちらが新しいHRコンピテンシーのモデルです。

人事の仕事の一つはパラドックスナビゲーターである

さて、今回の新しいコンピテンシーモデルで注目すべきは図表の中心にある「パラドックスナビゲーター」でしょう。

人事は、経営戦略の実現を確固たるものにする「ストラテジックポジショナー」の役割をしつつも、現場のニーズに対応していく「クレディブルアクティビスト(信頼ある行動家)」としての役割も果たさなくてはならない。このときに、必要なコンピテンシーが「パラドックスナビゲーター」として定義されています。いわば、矛盾するニーズを包含して双方に新しい道を提示する指南役、ナビゲーターとしての役割が必要なのが人事の役割です。

人事は経営の半歩先を歩め

この言葉は、私がJSHRM(日本人材マネジメント協会)の活動でお世話になっていた、元本田技研工業の国際人事部長の光冨さんが教えてくれた言葉です。経営計画は5年から3年で立てられるのに対し、人事は10年、20年先を見据えないといけない。そう考えると、人事という仕事をに携わる人は、経営のずっと先を考えないといけない。しかし、経営に10年先、20年先の話をしても、なかなか伝わらないのが現状です。そこで、経営の半歩先を歩む、そして、経営にとって必要なことを経営者たちよりも先にみつけて提言していくということが重要な役割だと思います。

現場が白けないように人事施策をうつ

この言葉は、よく一緒にセミナーをさせてもらったサーバーエージェントの人事本部長の曽山さんが教えてくれた言葉です。人事は経営の半歩先を歩みながらも、一方で、現場のことも十分に理解して、現場が白けないような施策をうっていく必要があります。現場が白けないかというのは曽山さんがいつも意識している言葉のようです。

人事は矛盾のマネジメント

そして、光冨さんには上記のような言葉も教えてもらいました。人事は矛盾のマネジメントをすることだと。これは、ウルリッチ博士の新しいコンピテンシーモデルで記述されている「パラドックスナビゲーター」と同じことをいっているように思います。組織は人間の集まりですから、いろいろな矛盾がはらんでいる。その矛盾を俯瞰的に把握した上で様々なコミュニケーションを駆使していくのが人事の仕事でもあります。

人事は経営と現場のコミュニケーションエンジン

さらに、曽山さんには上記の言葉を教えてもらいました。経営のいうことをそのまま伝えてると現場は冷める。一方で、現場のいうことを経営にそのまま伝えると経営は判断をあやまる。そこで、間にはいって必要なことを必要なタイミングで伝わりやすい言葉に転換して伝達していくことが必要なのです。

これらはすべて、人事の仕事の大変さを表したものではありますが、逆に言えば、私はこういう矛盾する人間関係をうまくマネジメントするナビゲーターとしての人事というのは、人間という複雑性を相手にして、とても面白い仕事をしているとも思うのです。

皆さんは「人事」という仕事に興味をそそられましたか?

ぜひご意見ください。

治療家 ビジネスブレークスルー大学准教授 JIN-G創業者

早稲田大学政治経済学部卒業。銀行員、ベンチャー企業、コンサルファームを経て、JIN-G Groupを創業。グループ3社の経営をしながら、ビジネス・ブレークスルー大学准教授、タイ古式ヨガマッサージセラピストの活動に取組む。また、会社員としてコンサルファームのディレクターとしても活動し、新しい時代の働き方を自ら実践し、お客さまや学生に向け、組織変容や自己変容の支援をしている。組織/個人に対して、治療家として、東洋伝統医療の技能を活用。著書に「21世紀を勝ち抜く決め手 グローバル人材マネジメント」(日経BP社)「リーダーに強さはいらないーフォロワーを育て最高のチームをつくる」(あさ出版)がある。

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