大人になってからの学び方を考える ライフシフトの時代と成人学習理論
人生100年時代に求められる学び方とは何か
”Life Shift”(ライフシフト)を迫られている時代
私が専門性を持つ人材マネジメントや組織開発・人材開発の領域で、もっとも影響力がある人物であるリンダ・グラットン氏が『Life Shift(ライフ・シフト)ー100年時代の人生戦略』を日本で出版してから4年が経ちました。
リンダ・グラットン氏の主張は、長寿化により100年以上生きる時代がきた時に、「教育→仕事→引退」という従来の人生設計のあり方は変容し、「マルチステージ」(多様な生き方を一人ひとりが多くの節目で選択する)の時代になるというものでした。
リンダ・グラットン氏が提唱した”Life Shift”(ライフシフト)という概念に、世界では多くのビジネスパーソンが反応し、自らの働き方や生き方を見直しはじめました。
そして、それから数年間を経て、このたび、Covid-19により、世界中のビジネスパーソンが、ライフシフトを強制的に考えざるを得ない環境になりました。
まだ余力のある大企業に勤めているサラリーマンの中には、このライフシフト環境に、ほとんど気づかずに(または気づいているけれども蓋をして)過ごしている人たちもいると思います。
しかし、今後、大多数の雇用を支えてきた企業の倒産やリストラが予想されています。さらに、冬になると、インフルエンザの流行やCovid-19の新しい局面によって、さらなる新たな日常が検討されるかもしれません。その結果、外部の環境が自分自身の人生に与える影響を、殆どの人が考えざるを得ない状態に陥るでしょう。
'''・長寿化で人生は長くなったが健康や雇用への不安は大きくなりそうだ
・学校を終えて社会にでて引退して余生を暮らすという、一本線のワークライフキャリアは過去の時代の幻想、今は存在しなそうだ
・もっと自分らしい生き方は何なのか・・・、今までの延長線にはない新しい人生も想定しておく必要がありそうだ'''
こんな声が聞こえてきます。
このような混沌とした時代に、求められる学びは何なのか、この記事では考えていきたいと思います。
学校教育については、専門家の方々がたくさんいらっしゃり、各国の国策としても、それぞれの高等教育機関の方針としても、たくさん考えられていると思いますので、この連載では社会人の教育、つまり、「大人の学び方」について、書いていきたいと思います。
成人学習理論によると子供の学びと大人の学びは本質的に異なる
アダルトラーニングという言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは成人学習理論と呼ばれる研究で、ノールズ(Malcolm S. Knowles)氏が有名です。
大人になってからの学び方と子供の時の学び方では、以下のような点で違いがあるということを、ノールズなどの研究者は指摘しています。
・子供の学びは依存的で受動的なのに対して、大人の学びは自律的で主体的であるということ
子供の学びには先生がいて、明確な指示のもとで学ぶことが多いのに対して、大人の学びは自分で選択して、自分で決めた進め方で学びを進めることが多いです。
・子供の学びに比べて、大人は経験をたくさん持っているため、経験から多くを学ぶということ
大人は経験の量が多いほど、その経験を活かしながら学びを深めていくことができます。一方で、自分の経験から学ぶ必要がないと判断したものは、学びの対象から外すこともあります。
・子供の学びは必要なものを一つひとつ積み上げて学んでいくが、大人の学びは各人の人生の課題に応じたテーマを学んでいく
大人の学びは、人生の課題に応じて変化していきます。例えば、出産を機に親としての役割を持つと、これまでの発達課題から新たなステージの発達課題を持つことになります。
・子供の学びは後々に必要となるものを学んでいくが、大人の学びは目の前にある問題を解決するために学ばれる
大人の学びは、目の前にある問題を解決するために行われることが多く、具体的な成果をすぐに求める傾向があります。一方、子供の学びは将来に役立つ学びを体系的に習得しますが、目の前の課題にすぐに役立たないものもあります。
さて、上記のようなことを知ると、大人の学び方は学校で先生から教えてもらうというものではないということがわかると思います。
大人の学びと子供の学びは、全く質の異なるものなのです。
では、大人の学びとは、いつ、どのようなことを、どのような方法で、学べばいいのでしょうか?
そして、人生100年時代にあった、かつ、アフターコロナ&ウィズコロナの時代にあった、大人の学び方はどのようなものなのでしょうか?
このことを紐解くために、成人学習理論と言葉が似ている「成人発達理論」を理解しておくことが大切そうです。成人発達理論については、後日、記事にしたいと思います。