熱狂の台湾野球Lamigoモンキーズ応援団に迫る:地域密着球団にほれ込んだ男
台湾ナンバーワンの人気チーム、Lamigoモンキーズが石垣島での千葉ロッテとのエキシビションに続き、今日再来日する。今度はいまだ極寒の札幌で、北海道日本ハムと2連戦を戦うのだ。2006年、日本ハムが移転後初優勝し、日本シリーズも制覇、そしてアジアシリーズでも頂点に立ったのだが、この時の決勝の相手がLamigoの前身、La Newベアーズだった。この縁もあり、今回、日本ハム球団の北海道移転15周年を記念した「アジアフレンドシップシリーズ」の相手としてLamigoが選ばれたのだ。このアジアシリーズでLa Newは予選、決勝ともに日本ハムと互角に渡り合い、ともに1点差で惜敗している。この姿に感銘を受けた少年が、今、Lamigoの本拠、桃園国際球場のスタンドで、チアパフォーマンス集団、「ラミガールズ」とともに、スタンドを盛り上げている。
国際交流戦にまで帯同する応援団
2月17、18日にロッテのキャンプ地、石垣島で行われた対Lamigoとの「アジアゲートウェイシリーズ」には、100人超の台湾からのファンとともに、本場の大音響付きの応援団も駆け付けた。試合中、その規模は本拠、桃園国際球場のそれには及ばないものの、本場さながらの応援風景に場内は大いに盛り上がった。
台湾野球の応援と言えば、スピーカーから流れる音響とともに、アイドルグループさながらのチアリーダーの踊りが有名だ。その独特さゆえにはまる日本人ファンも多い。最近では、この応援風景目当てのパッケージツアーも組まれているほどである。
とくに今年は、ロッテに元ソフトバンクのリー・トゥーシェンが入団し、ラミガールズの人気メンバーでもある妹のヤーシェンと石垣島で再会するなど、話題性たっぷり。兄のリーが途中出場ながら、ロッテでの再デビューを飾る中、妹の方はスタンドでファンに笑顔を振りまいていた。
応援団の要、チアをとりしきる団長
女子チアばかりが目立つ台湾の応援団だが、その中心にいて彼女たちを仕切るのは、男性の応援団長の役割だ。台湾では、応援団も球団お抱えで、音響係と協力して試合の動向に合わせ、応援歌をならして試合を盛り上げる。その仕切り役をLamigoモンキーズで一手に引き受けているのが、邱信誠(キュ・シンチェン)さんだ。
日本でも、応援団の人々をみると、「普段は一体何をしているのだろう?」という素朴な疑問が多くの人の脳裏をよぎるだろうが、先ほど述べたように、台湾では、応援団は球団のお抱え、邱さんもオフシーズンは、球団の関連会社の社員として働いているという。
では、シーズン中の応援は、あくまで「業務」でやっているのかというと、そうではない。Lamigoモンキーズのことは心の底から愛してやまないと邱さんは笑う。そもそも、応援団にあこがれて、就職先も決めたという。
邱さんは、南部にある台湾第2の都市、高雄の出身。現在は「首都」台北近くの国際空港のある桃園を本拠としているLamigoだが、もともとは、親会社のLa Newが球団を買収したときは、高雄にフランチャイズを置いていた。
2004年シーズンから、La Newベアーズとなったチームは、台湾人初のメジャーリーガーとなった陳金峰(チェン・ジンフェン)を加入させるなど、チーム強化に努める一方、それまでフランチャイズ意識の低かった台湾球界に「地域密着」の考え方を導入、地元ファンの後押しのもと、急速に力をつけていった。2006年に初の台湾チャンピオンに輝くと、その後、2011年に球団名をLamigoモンキーズに改め、桃園に本拠を移した。その後も、常に優勝争いに加わり、初優勝からの12シーズンで5回の優勝を誇るなど、今や人気、実力とも台湾ナンバーワンチームにのし上がった。
この姿を、高雄で見て育った邱少年は、いつの日か自分がスタンドのファンの応援をリードする姿を夢見るようになり、就職活動では迷わず、La New傘下の球場運営会社に自分を売り込んだのだという。その熱意からか、彼は、今、ラミガールズとともに、毎試合、応援の舞台に立っている。
とにかく台湾プロ野球は、選手、ファン、応援団、メディアの一体感がすごい。試合前には、お互いがまるで家族のように、接している。その雰囲気を味わうだけでも、スタジアムに足を運ぶ価値がある。北海道から、台湾は遠い。いまだ冬季オリンピックの興奮が冷めやらぬ北の大地だが、そろそろ球春に向けて、南国のプロ野球団の熱い応援風景を見に行くのはいかがだろう。
「アジアフレンドシップシリーズ」は、今日明日と札幌ドームで行われる。
(写真は全て筆者撮影)