SRS-F、佐藤琢磨・校長の新体制で初めてのスカラシップ生は高校生ドライバーの岩佐歩夢!
世界に通用するレーシングドライバーを育成する「鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ(SRS-F)」のスカラシップ選考会が11月27日(水)に最終日を迎え、18歳の高校3年生、岩佐歩夢(いわさ・あゆむ)が今年のスカラシップを獲得した。
新体制初のスカラシップ
ホンダが出資し、日本を代表するレーシングスクールである「SRS-F」は昨年をもって中嶋悟・前校長が勇退し、同校の卒業生でもある佐藤琢磨(現インディカードライバー)がプリンシパル(=校長)に就任し、新しい体制で運営されている。
新体制で初のスカラシップ生に選ばれた大阪府出身の岩佐歩夢は入学前の昨年、若手の登竜門レース「FIA-F4」にスポット参戦。今季は鈴鹿サーキットで開催される「スーパーFJ」に参戦して腕を磨きながら、ホンダのトップドライバーへの第1ステップとなる「SRS-F」のカリキュラムに挑戦してきた。
レーサーらしからぬ穏やかな雰囲気の岩佐はスクール入学時はそれほど目立った走りを見せるドライバーではなかったという。しかし、カリキュラムを進める内にメキメキと成長を遂げ、関係者を驚かせる存在になった。
自身が成長できたことについて岩佐は「スクールで(先輩ドライバーである)講師陣との走りの比較でアドバイスをもらって自分を高めていけたと思う」と冷静に分析。
また、今年1年、スーパーFJに参戦し、経験を積めたことも成長に役立ったと語る。「(所属チームの)ルーニー・スポーツさんが今年1年、僕を信じて一緒に戦ってくれました。スクールとレース活動をやっていく中で色んなことを学べたことが大きかった。今後のレース人生に長く通用する物を得ることができた」と岩佐。
実は岩佐の両親は1990年代後半に夫婦ともにシビックレースなどで活躍した経歴を持ち、祖父もレーサーというレース一家。4歳からカートに乗り始めた岩佐は、高校卒業を前にレーシングドライバーを目指すなら誰もが憧れるSRS-Fでスカラシップを獲得した。
来年は卒業を機にレースに集中できる体制を作る。これまでの例から行けば、2020年、岩佐はホンダの育成ドライバーとしてFIA-F4に参戦することになるだろう。
非常にハイレベルな選考会に
スカラシップを獲得したのは岩佐歩夢だけとなったが、最終選考に残った4人は甲乙付け難い、非常にハイレベルな戦いをスカラシップ選考会で見せてきたという。
レーサーを目指すティーンエージャーが集う「SRS-F」にはレーシングカートのトップカテゴリーで輝かしい成績を残してきた「カート界の星」といえるドライバーが集まり勝負強さを見せるのが常だが、今年は過去のキャリアに関係なくスクールで急激な成長を見せたドライバーが最終選考まで駒を進めたという。
残念ながらスカラシップには落選したが、大学生の小出峻(こいで・しゅん)はSRS-Fスクールカーのコースレコードを更新。小出は4輪レース出場のライセンスをまだ未取得の状態で、スクールだけに集中してきた生徒。爆発的な速さを披露し、審査する講師陣が選考会の模擬レース中も思わず、ワーッと興奮の声を上げるほどだった。
アメリカが主戦場である佐藤琢磨が不在の時、バイスプリンシパル(=副校長)として生徒たちの成長を見届けてきたのが、中野信治(現SUPER GT/スーパーフォーミュラ監督)。中野が中心になり、現役ドライバーを中心とした講師陣、卒業生のインストラクターが指導を行なってきた。
自身のシーズン終了後のスカラシップ選考会で直接指導を行なってきた佐藤琢磨は「最終に残った4人、個々の成長が素晴らしかった。現役のプロドライバーの講師陣に入っても負けない強さとスキルを身につけて、ここまで来たことを嬉しく思います。スカラシップ生としては1名になりますが、戦った3人も本当に素晴らしかった。特にこの2日間で見せた全員の走りは現役のプロドライバーに全く引けを取らないものだった」とリップサービス抜きで生徒に言葉を投げかけた。
生徒が講師を上回ることがほとんどだったという今年の「SRS-F」。スカラシップを得た岩佐歩夢に限らず、最終選考まで残り、講師陣を唸らせた小出峻、木村偉織(きむら・いおり)、大草りき(おおくさ・りき)の4人の今後の活躍は要注目だ。