目標達成の「コストパフォーマンス」を考える
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。いろいろな企業経営者、管理者にお会いしますが、まず「コスト」をかけずに目標達成しようとする姿勢はいただけません。そして何より「コスト=お金」だという発想も非常に残念に思います。企業の目標達成のみならず、個人的な夢や願望を実現させるうえでも同じ。常に大きなパフォーマンスを出している「ハイパフォーマー」は、どのような考えでコストを捉えているのか、今日のテーマはここに焦点を合わせます。
結論から書くと、コストをバランスよく投資して、リワード(報酬)をバランスよく手に入れる。それがハイパフォーマーの条件です。最小のコストで最大のリワードを得ようとするケチな考え方では、到底ハイパフォーマーにはなれない。人生のコスパをアップさせることはできないでしょう。
何事も、理解するためには「分解」することが一番です。コストの概念を分解してみましょう。3つあります。
■経済的コスト → お金
■時間的コスト → 時間
■精神的コスト → ストレスや労力
これらコストの見返りとして考えられるのがリワード(報酬)です。このリワードもお金しかないと考える人も残念です。ちょうどコストと対の関係になります。
■経済的リワード → お金
■時間的リワード → 時間
■精神的リワード → 幸福感、やりがい
お金や時間、労力などのコストを投資し、お金や時間、幸福感などのリワード(報酬)を得る、ということです。このパフォーマンスが最大化していけば、人生の目標であったり、願望実現の「コストパフォーマンス」が高いと表現できることでしょう。それでは、それぞれのコストとリワードの特徴を書いていきましょう。
■「時間的コスト」「時間的リワード」について
時間的コスト、時間的リワードは、多くの人が考えているよりも幅は小さい、と覚えておきます。1日24時間しかありませんし、分で計算すると1440分しかない。また時間概念の特性として、すべての人に平等に存在します。
パフォーマンスを上げるために「自由な時間がなくなるというリスク」はなく、かといってハイパフォーマーになったからといって「膨大な自由な時間が手に入る」わけでもないのです。ハイパフォーマーの時間概念は重要で、「時間がないからパフォーマンスを上げられない」という発想も存在しません。
時間的リワードはクセモノです。自由に使える時間を増やしたいと思っても、時間感覚がない人は、どんな状況でも「時間がない」と口にしてしまうから。先述したとおり、時間という器はとても小さいと覚えておきましょう。過去24時間中、2時間しかなかった可処分時間が、たとえ5時間に増えたとしても、それほど大きなインパクトはありません。絶対的な時間が増えるのではなく、精神的な余裕ができることによって時間に振り回されない生き方ができるということ。ハイパフォーマーは、昔3時間しかなかった可処分時間が、たとえ2時間に減ったとしても、精神的余裕が極めて大きくなっているので、時間に振り回されることなく充実した毎日を送っています。
■「精神的コスト」「精神的リワード」について
精神的コストは最初のうち積極的にかけていくべきです。たとえお金があろうとも、経済的コストで代替しないようにしましょう。なぜなら「大変だ」「キツい」という思いをすればするほど、ハイパフォーマーになった後に精神的リワードである「達成感」「幸福感」「遣り甲斐」を得られやすく、これが強烈なパフォーマンスを生み出す原動力になるからです。
また、時間的コスト/リワードと同様に、精神的コスト/リワードも、多くの人が考えているほど「幅」は広くありません。個人差はあるものの10段階ぐらいにしか分類できないのです。無限のストレスや、無限の幸福感など存在しないことを知るべきです。
精神的なコストである「ストレス」や、精神的リワードの「幸福感」は個人差のみならず、その時の状況によって大きく変わります。これまで病気がちだった人が10キロマラソンにはじめて参加し、完走して、ゴール付近で渡された清涼飲料水を飲んだ時の感覚はどうか? 「経済的リワード」は100円であったとしても「精神的リワード」は10点満点で「10点」かもしれません。最高の幸福度を味わうことでしょう。しかし資産1000億円ある人が株で儲けて1000万円を手にしたとします。「経済的リワード」は1000万円ですが、「精神的リワード」は10点満点で「3点」かもしれない。そこそこの幸福度しか得られないでしょう。
リワードはあくまでも褒美であり、再投資できるリターンではありません。たとえば将来値上がりする可能性が低いマンションであったとしても、そのマンションを購入することで「精神的リワード」つまり幸福感が高まるのであれば買えばいいのです。いっぽう褒美がお金しかないと思い込んでいる人は、投資する価値のない物件、車、高級時計を購入しません。しかし、このような価値観では真のハイパフォーマーとは言えないと思います。
■「経済的コスト」「経済的リワード」について
コスト/リワードの捉え方で、最も重要なことは「お金」の概念。「経済的コスト」「経済的リワード」についてです。
高い目標を設定し、それを絶対に達成させたい。大きな夢を叶えたいと考えたとき、経済的コストが最初からゼロになることはありません。また、ハイパフォーマーになってからはさらに経済的コストをかける心構えでいましょう。つまりお金をかけて、さらなるパフォーマンス向上に努めるのです。このコストバランスを間違えてはいけません。
報酬が「お金」だけ、と考えている人は、何かを実現したいと思ったときでも、なるべくお金をかけたくないと思うでしょうし、うまくいったあとは、ことさらお金をかけようとしなくなります。こうすることで、他2つの報酬――「精神的リワード」と「時間的リワード」を得づらくなっていきます。目標達成のコストパフォーマンスが最大化しない、大きな理由です。
ハイパフォーマーになるためには、コストをどう捉えるかが最も重要です。コスト=負担であり、「経済的コスト」「時間的コスト」「精神的コスト」は「経済的負担」「時間的負担」「精神的負担」と言い換えられます。たとえば1500円の書籍を買うのにお金はかかるが、それはどれぐらいの「経済的負担」となるのか? 5万円のセミナーを受講するのに、そのお金の「経済的負担」はどうか? 真剣に考えるべきでしょう。むやみやたらとお金をかければいいわけではないですが、この負担が自分の生活にどれだけの大きなインパクトを及ぼすのかを深く考えるのです。経済的コストを躊躇しているようでは到底ハイパフォーマーにはなれません。
■「自信過剰バイアス」とまとめ
コストパフォーマンスをアップさせるうえで、多くの人が陥るのが「率」で考える思考です。私は絶対的な「値」で考えるべきだと思っています。経済的コスト/リワードだけを使って解説しましょう。
1)1万円を投資して10万円の報酬を得る
2)100万円を投資して300万円の報酬を得る
1)は「率」で考えると「1000%」です。2)は「300%」です。1)のほうが率は高いが報酬の絶対値は当然に低い。なるべくコストを押さえたいと考えれば考えるほど、報酬の絶対値は低くなるのです。
繰り返しますが、コストをバランスよく投資して、リワード(報酬)をバランスよく手に入れる。それがハイパフォーマーの条件です。最小のコストで最大のリワードを得ようとするケチな考え方では、到底ハイパフォーマーにはなれません。人生のコスパをアップさせることはできないのです。
最後に、具体例を書きます。
ブログを書いて顧客を増やそうと考えた時、自分なりに考えて、自分の思うように作り、自分のやり方でアクセスを増やそうとする人がいます。こうすると、時間と労力をいたずらに浪費するだけかもしれません。パフォーマンスを上げるためには、ブログで実績を出しているコンサルタントなどに「経済的コスト」を支払い「時間的コスト」「精神的コスト」を節約する。その分、どのような記事をブログにアップすれば自分の商売につながるか、に時間と労力を費やすことができます。ダイエットも同じ。自分のやり方でやるのではなく、しっかりお金を出して他人に管理されたほうが断然パフォーマンスは高くなるのです。
目標達成におけるコストパフォーマンスを上げる場合、最も留意しておかなくてはならないのは「自信過剰バイアス」。「自信過剰バイアス」は大敵。ハイパフォーマーになるにあたって、傲慢であってはなりません。
「他の人はお金をかける必要があるかもしれないが、自分なら自分のやり方でも同じような結果を手に入れることができるはずだ」
と考えるのが「自信過剰バイアス」です。
たとえそれが本当に実現できたとしても、何でも自分でやる癖をつけてしまうと、頑張った割にはそれほど大きなリワードを手に入れられないローパフォーマンス状態に陥るので気をつけましょう。
昨今、「ワークライフバランス」を重視した働き方を目指す取り組みが増えています。つまり報酬はお金のみならず、時間や遣り甲斐なども同様にバランスよく得たいという発想です。これらのリワードをバランスよく手に入れるためには、どのようなコストをどのような配分でかけていくのか? 個人も企業も正しく考える時期であると私は思っています。