アメリカ西部の山火事の煙ヨーロッパに到達 世界一周も
「まるで世界の終末のよう―」。
アメリカ西部では、山火事による煙の影響で、太陽が真っ赤に輝き、空はオレンジ色に染まるなど、見たことのないような光景が広がっています。人々が世界の終焉を連想するのも無理はありません。
過去最大規模の山火事
毎年夏から秋にかけてが、アメリカ西部で山火事が起こりやすい季節ですが、今年はその規模が例年の比ではありません。
記録的な高温と干ばつの影響で、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州の3州では8月から山火事が相次ぎ、焼失面積は東京都9つ分に匹敵する200万ヘクタールと、2003年にデータを取り始めて以来最大に及んでいます。森林火災で亡くなった人数は36人に達しています。
特に被害が大きいカリフォルニア州では、州の観測史上1位、3位、4位の大きさの山火事が同時に発生するなど、焼失面積は過去最大に上っています。炎は全米一の商用大麻の栽培地や、1904年に建てられたウィルソン山天文台などに迫っているとのことです。
山火事シーズンは11月まで続きますが、緑が多いことで知られるオレゴン州でもすでに例年の倍の面積が焼失しています。
タバコ20箱分吸うのと同じ
山火事の影響で、いまアメリカ西部は世界でもっとも大気汚染レベルが高くなっています。カリフォルニア州知事は、タバコを20箱吸うのと同じくらい有害な状況だと発言しているほどです。
実際、山火事の煙はとりわけ有害です。
それはPM2.5のような微小な粒子状汚染物質だけではなく、建物が燃えることによって発生するホルムアルデヒドなどの有害な化合物質も含まれるためです。
山火事の煙による長期的な大気汚染が原因で、早産で毎年数十万人の赤ん坊が命を落としているという報告もあるほどです。
地球を周る山火事の煙
アメリカの山火事の煙は、上空の風に運ばれて、東西に数千キロも移動し広がっています。今月初めには煙がハワイに達して、空が黄色く染まったと伝えられたほどでした。当時太平洋に高気圧があって、その縁を流れる時計回りの風が、煙をハワイへと運んだのです。
反対に、煙はジェット気流に乗って西にも運ばれ、ニューヨークやワシントンDCといった東海岸上空にも到達し、空が黄色く染まりました。さらに先週末には、8,000キロ以上も離れたイギリス、オランダ、ドイツなどにも煙が届いたもようです。
過去の例
ところで、北米起源の煙が、欧州に到達することは珍しいのでしょうか。
実は、カナダの山火事の煙が欧州に到達する例は、年に平均1、2回程度あると言われています。ただ今回のように、アメリカ西部からヨーロッパに運ばれる例は、そうあることではないようです。今年の山火事はそれほど大規模ということでしょう。
しかし、煙がひとたび上空10キロ以上の「成層圏」まで達すると、さらに遠くまで飛ばされることがあります。
例えば昨年オーストラリアで大規模な森林火災が起きた際には、10日間で煙が南半球を一周し、再び豪州上空に戻ってきたと報告されました。
今回も同じように、煙が北半球を一周する可能性が指摘されています。
ちなみに、1991年にフィリピンのピナツボ火山が噴火した際には、火山からの煙が成層圏に達し地球を複数回周りました。太陽光を遮るなどしたため、世界の平均気温が0.6℃も下がったと言われています。日本でも1993年に記録的な冷夏が発生して、タイ米騒動が起きたのは有名な話です。