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【スーパーフォーミュラ】岡山でのレースは熾烈なポールポジション争いが鍵に。〜第2戦・岡山プレビュー〜

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
2015年スーパーフォーミュラ・第2戦岡山のスタート【写真:JRP】

「スーパーフォーミュラ」(全日本スーパーフォーミュラ選手権)の第2戦が5月28日、29日の2日間、岡山国際サーキット(美作市)で開催される。開幕戦の鈴鹿とは性格の異なる1周約3.7kmのテクニカルコースを制するのはどのドライバーだろうか?

予選が9割?予測不能なレース

山本尚貴(TEAM無限/ホンダ)がポールポジションから見事な逃げ切り優勝を飾った開幕戦・鈴鹿。決勝の上位5台のうち4台をホンダエンジンユーザーが占める結果となり、トヨタエンジン勢の不運に助けられた部分はあったにせよ、ホンダの決勝レースでのパフォーマンスはトヨタとほぼ互角になった。

新規定に移行してからトヨタの先行を許しがちで大きく水を開けられていたホンダが追いついたことで、「スーパーフォーミュラ」は当初からシリーズとして目論んだ理想的な接戦状態のステージへと突入したのである。

レース終盤、石浦宏明と小林可夢偉が大接戦を演じた【写真:JRP】
レース終盤、石浦宏明と小林可夢偉が大接戦を演じた【写真:JRP】

そして迎える第2戦の舞台、岡山国際サーキットは昨年の石浦宏明小林可夢偉のトップ争いを見てもわかる通り、オーバーテイクが簡単ではないサーキットである。それだけに予選での順位、つまりはスターティングポジションが何より重要なキーとなる。ただ、鈴鹿の予選Q1では、1秒以内に12台がひしめき合う接戦となり、実際には15台くらいが1秒以内のタイムを記録すると予測される大混戦の状況になっている。1ミスが命取り、そしてチームの判断が悪い方に動いてしまうと、ポイント獲得すら困難な位置でレースを強いられる状況にもなりかねない。

そこで大事なのはチームの下準備である。開幕戦から約1ヶ月が経ち、テストのデータも含めて様々なデータ解析を各チームのエンジニアは行っているはずだ。開発が制限され、限りなくイコールコンディションに近づいている「スーパーフォーミュラ」において、データ分析にかける時間は大きなウェイトを占めることになる。そういう意味では、開幕戦をトップと同一周回で完走した15台と前年の岡山で上位入賞を果たしたチームは有益なデータを保有しており、よほど冒険しない限り、予選から読みを外してくることはないだろう。

あとは細かい部分での勝負となるが、昨年と大きく異なる点はタイヤ。春のテスト時よりも気温と路面温度が上昇する5月末の岡山で、横浜ゴムのタイヤをどう攻略するかチームとエンジニア、さらにドライバーの手腕が試される。

山本尚貴の連勝なるか?

山本尚貴(TEAM無限)
山本尚貴(TEAM無限)

鈴鹿で圧倒的な速さを見せつけた山本尚貴(TEAM無限/ホンダ)はやはり岡山で最も注目したいドライバーだ。昨年の決勝ではタイヤ2本交換の作戦を取るも、同じ作戦の野尻智紀(Docomo DANDELION/ホンダ)の先行をピット作業で許すことになり表彰台獲得ができなかったが、今年の開幕戦ではライバルとの間に明らかな差を生んだ山本とTEAM無限が持つアドバンテージはサーキットが変わってもライバルの脅威となるはずだ。

空力面での影響を受けてレース中の接近が難しい「スーパーフォーミュラ」と岡山の抜きづらいコースでは、テストでも好タイムをマークしている山本が先行すれば開幕戦のような状態に持って行かれる可能性が高い。ライバルは当然、予選から打倒・山本尚貴の体制で挑んでくる。

石浦宏明【写真:JRP】
石浦宏明【写真:JRP】

1台体制で孤軍奮闘するTEAM無限の山本のライバルとなるのが、昨年のウイナーである石浦宏明(P.MUセルモインギング/トヨタ)、国本雄資(P.MUセルモインギング/トヨタ)の2人。国本は開幕戦で山本に継ぐ2位でフィニッシュ。石浦はポイント獲得を逃すことになったが、昨年の岡山ではポールトゥウインを飾り、これがまさにチャンピオン街道への弾みとなった。

チャンピオンドライバーを生み出したチームとして開幕から国本が2位に入ったことはポジティブな要素であり、昨年の岡山での石浦の好走を見ても「P.MUセルモインギング」の2台は岡山での活躍が最も期待できる。チームのお膝元は山口県だけに地元のサーキットという意味も大きく、岡山戦にかける思いは強い。

そして、石浦と優勝争いを演じた小林可夢偉(SUNOCOチームルマン/トヨタ)も見逃せない山本のライバルとなる。開幕戦・鈴鹿は予選での不運、さらに決勝ではピットクルーのミスでタイヤが外れて後退するなど踏んだり蹴ったりなレース展開になった悔しさを次戦、岡山で晴らしたい。今季の小林はWEC(世界耐久選手権)にも参戦し、レーシングカーをドライブするチャンスも多く、やる気に満ち溢れている。そろそろ「スーパーフォーミュラ」での優勝を期待したい。

伏兵はバンドーンか?今季の新たな楽しみ

ストフェル・バンドーン
ストフェル・バンドーン

今季の「スーパーフォーミュラ」は実に興味深いレースだ。というのも、ここまでは昨年のリザルトをベースに話を進めてきたが、チーム体制、マシンの速さ、ドライバーの成績以上に読めない要素があるからだ。それはF1も既に経験済みのストフェル・バンドーン(Docomo DANDELION/ホンダ)の存在だ。

開幕戦・鈴鹿ではスタートダッシュを決めて3位表彰台を獲得。山本の圧倒的な速さには及ばなかったものの、2位の国本に2秒以内の差に詰め寄る速さを見せた。GP2チャンピオンの実績、F1でポイントを獲得済みという実績があるとはいえ、「スーパーフォーミュラには経験が必要」という理論は通用しなくなった。まさに世界レベルのベンチマークが現れたと言っても良い。

岡山はバンドーンにとって初めてのレースとなるが、F1バーレーンGPの代役出場のために旅立つ日に岡山の合同テストでサラッと4番手タイムをマークしている(この日トップの山本から約0.4秒差)。ルーキーのバンドーンが岡山で予選からどの位置につけることになるのか、まず興味深い。そして、彼がここ岡山でも表彰台に上がることになるのか。

また、昨年の岡山戦は怪我のため欠場した中嶋一貴(バンテリンTEAM TOM’S/トヨタ)の走りも昨年とは異なる要素の一つ。開幕戦をノーポイントで終えることになってしまった中嶋一貴は岡山でどこまで巻き返してくるか。チャンピオン石浦をはじめ開幕戦でポイントを取れなかったドライバーたちにとってはシーズンを考えると重要な1戦。まさに昨年と同様、今季の流れはここから変わっていくだろう。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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