Yahoo!ニュース

世紀の再戦は文句なしの圧勝 フューリーがワイルダーをKOで下し新王者へ

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:ロイター/アフロ)

22日(日本時間23日)アメリカラスベガスのMGMグランドガーデンアリーナでボクシングのヘビー級タイトルマッチが行われた。

WBCヘビー級チャンピオンのデオンテイ・ワイルダー (米)が、挑戦者で元統一王者のタイソン・フューリー(英)と戦った。

前回の試合ではドロー、その試合から約1年2ヵ月ぶりの再戦となった。

体格差が目立ったフューリー

試合会場のMGMグランド・ガーデン・アリーナには1万7000人が詰めかけた。

満員の観衆の中、両者の入場は非常に個性的だった。

挑戦者のフューリーは、王冠をかぶり赤いマント姿で黄金のイスに座ったまま神輿で入場。

王者のワイルダーは、黒ずくめに仮面とよろい姿で、目の周りを赤く光らせて入場した。

両者入場すると大きな歓声が上がり、リングアナのジミー・レノンジュニアのアナウンスで会場のボルテージも最高潮となった。

リングに上がり向かい合うと体格差が大きく出た。

前日に行われた計量では、ワイルダーが231ポンド(約104.7キロ)フューリーは273ポンド(約123.7キロ)。

身長は、ワイルダーが身長201cm(リーチ211cm)、フューリーが206cm(リーチ216cm)。

体重も体格もフューリーがひとまわり大きかった。

試合の展開

試合が始まると、互いに距離をはかりながらジャブをついていく。

体格が大きいフューリが前に出ながらプレッシャーをかけていくのに対して、ワイルダーはプレッシャーにおされ、下がりながらパンチを打つ。

フューリが先手で巧みなジャブをつき、試合をコントロールしていた。

ワイルダーも右の一発を狙うが、フューリーの懐が深くパンチが届かない。次第にフューリがペースを掴み、ワイルダーを追い詰めていく。

さらにガードを下げながらのフリッカー気味のジャブがヒットして、ポイントを積み重ねていった。

ワイルダーは、フューリーの下がったガードを狙って右を打ち込むが、間合いを見切られてしまい当たらない。

第3Rには、フューリーのワンツーがヒットしてワイルダーがダウン。なんとか立ち上がったが、足元がおぼつかない。

その後もフューリーのプレッシャーにおされ勢いを失っていく。

ワイルダーは、焦りからか右の一発を狙い動きが単調になっていく。

次第にワイルダーは打たれた影響と疲労で消耗していき、5R目にはフューリーのボディで2度目のダウン。

そして第7R。フューリーがワイルダーをコーナーに詰め、右の連打を打ち込んだところで、レフリーが試合をストップ。

ワイルダー陣営のセコンドからタオルが投入され、フューリーのTKO勝利となった。

フューリーは、過去に獲得したWBAスーパー・IBF・WBOのベルトに加え、4つ目となるWBCのベルトを手に入れた。

4団体統一に向けて

試合後、両者へのインタビューが行われた。

敗れたワイルダーは「万全の準備をしたが言い訳はしない。もっと強くなって戻ってくる」と再起を誓った。

フューリーは「神に感謝したい。栄光をつかむことができた。彼は正々堂々と戦った。彼はまたチャンピオンになる」とワイルダーの健闘を讃えた。

今回の勝因は、フューリーの作戦がうまくハマったことだろう。

初戦では足を使いポイントアウトで戦っていたが、今回は体重を10kg以上増量し、体格差を活かしてプレッシャーをかけた。

ワイルダーも、その圧力におされ手が出せなかった。

フューリーは技術でもパワーでも、この階級での強さを印象づけた。

今後、3度目の試合の可能性もあるが、この階級には、3団体統一王者(WBAスーパー&IBF&WBO)のアンソニー・ジョシュア(イギリス)がいる。

ジョシュアは、今回の試合の勝者との対戦を希望している。

主要4団体となるボクシング界だが、ヘビー級で4団体同時制覇している王者はいない。

そのため、初の快挙となる4団体統一戦の実現が望まれる。

試合会場には、マイク・タイソン(アメリカ)、イベンダー・ホリフィールド(アメリカ)、レノックス・ルイス(イギリス)の三人のレジェンド達も訪れていた。

時代も移り変わり、新しい時代のヘビー級が盛り上がりを見せる。

ヘビー級頂上決戦も近いだろう。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

木村悠の最近の記事