BTS新曲'Butter' 韓国での評価は? 現地記者がかける「スケールの大きな期待」
BTSの新たな英語曲「Butter」がリリースされて10日が経った(2021年5月21日公開)。
これが彼らの母国たる韓国でどう評価されているのか。
全世界をマーケットとする「デジタルシングル」形式でのリリース。韓国では早速、本人たちの出演なしで5月30、31日に音楽番組で1位を獲得した。いっぽうで一般の評価はどうだろう。
前回の英語曲’Dynamite’の成功では「アメリカでの東洋人男性のステイタスを変えたと思っている」(ソウル郊外在住の40代男性)というほどの評価を得た。
参考記事:BTS「Dynamite」が世界的大ヒット 韓国ではマイナス点も、現地の評価は?(筆者)
次作として大きな期待を受ける’Butter'。コアなファンはすでにご存じだろうが事務所発表の公式の曲紹介ではこういった点が謳われているグループ2作目の英語楽曲だ。
「スッキリと軽快なサマーソング」「中毒性のあるダンス・ポップ」「自分たちならではのかっこよさを表現」「バターのように柔らかく溶け込んで君の心を鷲掴み、という防弾少年団のかわいい告白」。
また、その曲紹介にも英語曲としての前作’Dynamite’でのグラミー賞ノミネートについて言及されている。先日のリリース記念の記者会見でのメンバーの発言通り、「再び賞にトライする」という意気込みも感じさせる。
最初は「ピンとこない」理由
ところが、韓国での公開直後の一般層の反応は率直なところ「ピンとこない」という声も多かった。
21日の公開日から、韓国語にてSNS上で「Butterの感想をお知らせください。できればコアなファンではない一般の層のお声が聞きたいです」という投げかけを続けているが、こんな感想が入った。
「個人的にはバンタンっぽくなくて、少し残念な感じがします。私がイメージするバンタンはずっと'FIRE'です。その後’Dynamite’がヒットして、賞を狙った曲だなという印象ですね…」(40代男性 ソウル)
「サビ部分で同じフレーズが繰り返される”フックソング”という印象です」(50代男性 慶尚南道)
サビ部分とは
(BTS 'Butter' 作詞Jenna Andrews, Rob Grimaldi, Stephen Kirk, RM, Alex Bilowitz, Sebastian Garcia, Ron Perry/作曲Jenna Andrews, Rob Grimaldi, Stephen Kirk, RM, Alex Bilowitz, Sebastian Garcia, Ron Perry)
から始まる部分だ。
ここには事務所側が発表する曲紹介で重要フレーズとして紹介される"Smooth like butter"の歌詞が入っているのだが…
「誰にも真似できない、防弾少年団だけのかっこよさを<Butter>に余すところなく溶け込ませた。ときに柔らかく、ときに強力に防弾少年団のギャップある魅力を同時に感じられる」(公式の曲紹介より)
韓国メディア「スポーツ京郷」紙の芸能担当イ・ユジン記者も「当初の反応の鈍さ」を感じていたという。
「公開当初は’Dynamite’と比べ、サビの部分が刺さらないという声が多かったです。韓国の一般層はビートよりもメロディを好む傾向があるため、そのような評価が多かったのだと思います」
確かに「韓国の一般ウケ」は少々良くない要素もある。イ記者はそう見ている。
「今回の’Butter’のような強いビートはよりアメリカの好みに合わせたものでしょう。強いビート、グルーブな編曲はアメリカの一般層の好みを突くものだと考えられます」
とはいえ、公開から10日間。徐々に情報が伝わってくるにつれて、反応が変わってきていると感じるという。
「’Butter’のステージパフォーマンスの様子が伝わってくるにつれ、反応がかなり良くなってきました。(英語曲としての)前作’Dynamite’よりもステージ上の演出とパフォーマンスがより洗練され、レベルアップしたという評価が多くなりました。ステージでのパフォーマンス機会が増えるほどに評価も高まっている印象です」
じつは’Dynamite’は韓国では「’ダンスの面では派手さがない’という評価もあった」のだという。いっぽう’Butter’公式の曲紹介にはダンスについても言及されている。
「メンバー同士のぴったりと合った呼吸が目立つ力強いダンスと、クールな魅力を重ね合わせたユニットダンスにも心血を注いだ」
これまでとは違う「世界でのBTS像」
この先からより聴きこまれ、またパフォーマンスの動画が豊富になっていくにつれ、より評価を高めていくのではないか。
イ記者は、’Butter’について個人的に感じるところがあるという。楽曲のアレンジは「アメリカ風」と見たが、構成については「韓国的要素」を感じるのだと。
「世界のPOPシーンでのトレンドと、K-POPの特性をつなぎあわせた曲ではないかと思います。K-POPでは静かなメロディーで始まり、サビ部分を過ぎてラップが出てくるものが多い。そして強力なダンスが入ってくる。’Butter’もやはり、そういった構成です」
確かに導入部分は制作側も「聴かせたい部分」のようだ。公式の曲紹介にはこう記されている。
「導入部分から耳を掴んで離さないベースラインと清涼なシンセサウンドが特徴」
この構成の楽曲が、今後K-POPをより発展させるような、ある傾向を作っていくのではないか。そんな期待もしているという。
「BTSは世界のトレンドに合わせた’Dynamite’でアメリカ市場を経験し、それが成功するや今回は’K-POP的な要素を入れてみる’という実験をしているように見えますね。実のところ韓国では前回の’Dynamite’について’これはK-POPなのか、あるいはBTS独自のPOPなのか’という論争があったんです。今回の’Butter’がアメリカの大衆に受け入れられればアメリカのPOP市場で’K-POP’というジャンルが確立されていくのではないか。期待も抱いています」
イ記者はそれを「’ラテンポップ’というように、音楽性でのジャンルが確立されていくこと」ともいう。韓国のグループが世界市場のトレンドに合わせるだけではなく、自らのスタイルで挑戦する。その第一歩を記せるだろうか。BTSのそういった姿にも注目だ。