Yahoo!ニュース

藤井棋王へ挑むのは広瀬九段か、伊藤七段か――第49期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定二番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
八冠を保持し、タイトル戦番勝負でいまだ負けなしの藤井聡太棋王(筆者撮影)

 藤井聡太棋王(21)=八冠への挑戦権を争う第49期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社主催)は12月21日東京都渋谷区「将棋会館」で挑戦者決定二番勝負第1局、広瀬章人九段(36)-伊藤匠七段(21)の対局が行われる。

 棋王戦本戦は本戦ベスト4からは2敗失格制で、伊藤七段は敗者復活戦での勝ち上がりのため挑戦には連勝が必要。第1局に広瀬九段が勝てば藤井棋王への挑戦権を獲得する。

 勝敗と展開を、データを基に予想してみた。

調子は伊藤七段がまさる

<広瀬九段の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

10月5日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対高野秀行六段 ○

10月12日 順位戦A級

対菅井竜也八段 ●

11月8日 順位戦A級

対永瀬拓矢九段 ●

11月16日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対伊藤七段 ○

11月21日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対佐藤和俊七段 ●

11月28日 朝日杯将棋オープン戦2次予選

対八代弥七段 ●

12月1日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対本田奎六段 ○

12月8日 順位戦A級

対佐藤天彦九段 ●

12月15日 竜王戦1組

対豊島将之九段 ○

12月18日 ヒューリック杯棋聖戦2次予選

対丸山忠久九段 ○

<伊藤七段の最近10局>(相手の肩書きは対局当時。未放映のテレビ対局を除く)

10月31日 ヒューリック杯棋聖戦1次予選

対森本才跳四段 ○

11月10、11日 竜王戦七番勝負第4局

対藤井聡太竜王 ●

11月16日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対広瀬八段 ●

11月20日 王座戦1次予選

対堀口一史座七段 ○

11月24日 叡王戦予選

対渡辺和史六段 ○

11月24日 叡王戦予選

対服部慎一郎六段 ○

12月1日 棋王戦コナミグループ杯敗者復活戦1回戦

対豊島将之九段 ○

12月5日 順位戦C級1組

対古森悠太五段 ○

12月11日 棋王戦コナミグループ杯敗者復活戦2回戦

対本田奎六段 ○

12月15日 ヒューリック杯棋聖戦2次予選

対千田翔太七段 ○

 広瀬九段の直近10局は5勝5敗の指し分け。棋王戦以外では思ったほど星が伸びておらず、絶好調という感じではない。

 伊藤七段は今年秋の竜王戦七番勝負で藤井竜王に挑戦、初のタイトル戦では4連敗を喫したが再び大舞台に近づいているのは勢いだけでなく地力がある証拠だ。直近10局も8勝2敗と好調を維持している。挑戦には二番勝負で連勝が条件だが、調子の比較では伊藤七段がまさると見ていいだろう。

広瀬九段先手なら矢倉、伊藤七段先手なら角換わりか相掛かりが本命

 直接対決は1勝1敗の五分。いずれも本年度の対局で広瀬九段が先手。7月の竜王戦決勝トーナメントでは相掛かりで伊藤七段、11月の棋王戦本戦では矢倉で広瀬九段(当時八段)が勝っている。

 最近の戦型選択の傾向からは広瀬九段先手なら矢倉が本命。伊藤七段先手なら角換わりか相掛かりを選ぶ可能性が高いだろう。

 どちらが挑戦者になっても藤井棋王との番勝負は二度目。熱戦が期待される。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

古作登の最近の記事