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将棋人口は460万人で下げ止まり。囲碁人口は120万人に微減――「レジャー白書」に見る将棋と囲碁

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
棋聖戦七番勝負を戦う一力遼棋聖(左)と井山裕太王座(右)の対局(筆者撮影)

 10月31日に発行された「レジャー白書2024」(公益財団法人 日本生産性本部・編集発行)によると2023年の将棋人口は前年の460万人から変わらなかった。一方で囲碁人口は前年の130万人から120万人と微減し、減少傾向は止まっていない。

 将棋界は昨年秋の藤井聡太八冠制覇にともないメディアでの露出が増えたことで、競技人口は下げ止まった感があるが、囲碁はこのままいくと大台の100万人を下回る可能性がある。

 今から25年前に週刊少年ジャンプで囲碁漫画「ヒカルの碁」の連載が始まり、囲碁ブームが起こったころの囲碁人口460万人からは4分の1に近い減少となっており、極めて厳しい状況だ。

将棋界は「コロナ禍」の影響を脱したか

 将棋界はここ数年、藤井聡太七冠(22)=竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖の活躍によって「観る将」と呼ばれる統計上の競技人口に含まれない「観戦や好きな棋士の活躍を楽しむ」ファンが増えたため、新たなファン層に指す楽しみも覚えてもらうことができれば底上げが期待できるだろう。

 また2019年12月初旬に始まった「コロナ禍」によって対面対局の機会が減り、それとともに将棋人口は右肩下がりになっていたが、今年東西の将棋会館が移転し新たに完成したこともプラス材料だ。これを機に普及活動にさらに力を入れることで長期的には以前のような1000万人の大台復活を目指すことも不可能ではないだろう。

囲碁界は抜本的改革が急務

 対照的に囲碁界は高度な技術を持つ棋士(初段からプロ)の数が将棋界(四段からプロ)の2倍以上の約450人いるにもかかわらず、豊富な人材を普及の原動力にできていないのは残念だ。

 一例を挙げれば、筆者も趣味としているゴルフの世界ではアマチュア指導を生業とするカリスマ的人気のティーチングプロ(ツアープロとは資格制度が別)がいて、ゴルフ人口の維持に寄与している。

 筆者はこの10数年、勤務している大学の講義「知的ゲーミング演習」の時間で囲碁や将棋、さらにバックギャモンを教えているが、どの種目も学生は熱心に取り組んでおり、決して知的遊戯として囲碁が将棋に劣ることはない(もちろんバックギャモンも)という実感を得ている。

 日本の囲碁界にとって明るい材料もある。今年9月に一力遼四冠(27)=棋聖・名人・天元・本因坊が4年に1度開催される国際棋戦の第10回応氏杯世界選手権で初優勝し世界の頂点に立った。スターの誕生が競技人口増加につながるのはスポーツの世界ではよくあることだ。

 また囲碁の総本山(公財)日本棋院では今年の理事長選挙で武宮陽光六段(47)が新理事長に選ばれ新体制で構造改革をスタートした。関西でも(一財)関西棋院主導により兵庫県宝塚市の全ての市立幼稚園と保育所に棋士を派遣し「囲碁遊び」を導入するなど、身近なところから普及に力を入れている。

 こうした改革の動きが競技人口増加につながるまでにはある程度の時間がかかると思われるが、筆者も一囲碁ファンとして囲碁人気復活の足掛かりになることを期待している。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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