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永瀬九段と近藤七段、西田五段の3人が挑戦権争い――第74期ALSOK杯王将戦リーグ最終日展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
リーグ4勝1敗で挑戦権争いトップグループの永瀬拓矢九段(筆者撮影)

 藤井聡太王将(22)=竜王・名人・王位・王座・棋王・棋聖への挑戦権を争う第74期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社・毎日新聞社主催)は11月20日、東京都渋谷区「将棋会館」で挑戦者決定リーグ最終戦が一斉に行われる。

 王将戦リーグは定員7人、挑戦の可能性を残すのは4勝1敗の永瀬拓矢九段(32)と西田拓也五段(33)、星一つ離れて3勝2敗の近藤誠也七段(28)の3人。

 永瀬九段(順位3位)は近藤七段(順位4位)と、西田五段(順位5位)は広瀬章人九段(順位5位)とそれぞれ対局する。

 王将戦リーグは同星の場合順位上位2人によるプレーオフと定められているので、永瀬九段と西田五段がともに勝てば両者によるプレーオフ。どちらも敗れた場合は、永瀬九段と近藤七段のプレーオフが行われる。

 最終戦の勝敗と展開を、データを基に予想してみた。

挑戦権争いは微差で永瀬九段優位か

<永瀬九段の最近10局>(対戦相手の肩書きは対局当時 未放映のテレビ対局を除く)

9月18日 王座戦五番勝負第2局

対藤井聡太王座 ●

9月24日 ALSOK杯王将戦リーグ

対菅井竜也八段 ○

9月30日 王座戦五番勝負第3局

対藤井王座 ●

10月15日 順位戦A級

対佐々木勇気八段 ○

10月24日 ALSOK杯王将戦リーグ

対西田五段 ●

10月28日 ALSOK杯王将戦リーグ

対広瀬九段 ○

11月1日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対黒沢怜生六段 ○

11月7日 順位戦A級

対豊島将之九段 ○

11月11日 ALSOK杯王将戦リーグ

対佐々木八段 ○

11月14日 ALSOK杯王将戦リーグ

対羽生善治九段 ○

<近藤七段の最近10局>

10月4日 ALSOK杯王将戦リーグ

対広瀬九段 ●

10月9日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対三浦弘行九段 ○

10月17日 順位戦B級1組

対羽生善治九段 ○

10月21日 ALSOK杯王将戦リーグ

対西田五段 ○

10月25日 ヒューリック杯棋聖戦2次予選

対横山泰明七段 ○

10月29日 叡王戦予選

対佐藤紳哉七段 ○

10月31日 ALSOK杯王将戦リーグ

対羽生九段 ○

11月7日 順位戦B級1組

対山崎隆之八段 ○

11月11日 ALSOK杯王将戦リーグ

対菅井竜也八段 ●

11月15日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対斎藤明日斗五段 ○

 直近10局を比較すると永瀬九段は7勝3敗、近藤七段は8勝2敗とどちらも好調をキープし調子の面では互角といえるだろう。ただし過去の直接対決は永瀬九段が6勝3敗とリードしており、わずかに永瀬優位と見る。

<西田五段の最近10局>

9月19日 叡王戦予選

対藤本渚五段 ●

9月26日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対出口若武六段 ○

10月3日 ALSOK杯王将戦リーグ

対羽生善治九段 ○

10月8日 対順位戦C級1組

対高田明浩五段 ●

10月18日 ALSOK杯王将戦リーグ

対菅井竜也八段 ○

10月21日 ALSOK杯王将戦リーグ

対近藤七段 ●

10月24日 ALSOK杯王将戦リーグ

対永瀬九段 ○

10月29日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対山崎隆之八段 ○

11月4日 ALSOK杯王将戦リーグ

対佐々木勇気八段 ○

11月12日 順位戦C級1組

対都成竜馬七段 ●

<広瀬章人九段の最近10局>(対戦相手の肩書きは対局当時)

10月9日 ALSOK杯王将戦リーグ

対佐々木勇気八段 ○

10月17日 順位戦B級1組

対石井健太郎七段 ○

10月22日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対青嶋未来六段 ○

10月25日 ALSOK杯王将戦リーグ

対羽生善治九段 ●

10月28日 ALSOK杯王将戦リーグ

対永瀬九段 ●

10月30日 叡王戦予選

対渡辺明九段 ○

10月30日 叡王戦予選

対羽生九段 ●

11月3日 将棋日本シリーズ

対藤井聡太竜王・名人 ○

11月7日 順位戦B級1組

対澤田真吾七段 ●

11月13日 ALSOK杯王将戦リーグ

対菅井竜也八段 ○(千日手指直し)

 直近10局の比較では西田五段、広瀬九段ともに6勝4敗とまずまずの成績。直接対決は過去になく本局が初手合いとなる。

 実績では竜王、王位各1期タイトル獲得の広瀬が圧倒しているが、西田も今年度上り調子で、棋士仲間から「もっと評価されるべき男ナンバーワン」と呼ばれており、タイトル戦初登場を期待されている棋士の一人だ。

角換わりと振り飛車対居飛車の可能性大

 王将リーグは抽選時に先後が決定しており、それぞれ永瀬九段(先)-近藤七段、西田五段(先)-広瀬九段となっている。

 最近の採用率から永瀬九段は角換わりに誘導する可能性が高く、近藤七段は相手の得意形を受けて立つことが多いため、永瀬九段が趣向を用いない限りすんなり角換わり将棋に進むだろう。

 生粋の振り飛車党である西田五段は先手番では四間飛車と三間飛車のローテーションで戦っていて相手が居飛車の場合勝率が極めて高い(直近9勝1敗)。広瀬九段の振り飛車対策は三間飛車に対しては左美濃や居飛車穴熊などの持久戦策をとることが多いが、四間飛車に対しては右銀急戦などを用いることもある。

 総合的には星一つリードの永瀬九段がわずかに優位と見るが、プレーオフになる可能性も単純計算で5割あり、西田五段、近藤七段が挑戦する可能性も少なくない。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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