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1ラウンドKOで終わったウエルター級10回戦に見る敏腕プロモーターの実力

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Mikey Williams/Top Rank

 32勝(17KO)1敗のジオバニ・サンティアンと30勝(22KO)5敗のフレドリック・ローソンのウエルター級10回戦は、呆気なく終わった。

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 試合開始直後から、サウスポーのサンティアンがジャブの差し合いを制し、左ストレート、左フックと力を込めたパンチを振るっていく。ガーナ人であるローソンは、ペースを掴めない。40秒が過ぎる頃には、早くもサンティアンがローソンをニュートラルコーナーに追い込み、ボディショットを浴びせた。

 余裕を見せるサンティアンは冷静にジャブを当て、パワーパンチを繰り出すタイミングを図る。ローソンは簡単に後退し、ロープを背負った。

Mikey Williams/Top Rank
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 33歳のサンティアンは、今年の5月18日にWBO暫定タイトルマッチの舞台に上がり、10ラウンドに2度倒されて敗れていた。顔面を血で染めながら、左アッパーを顎に直撃されてキャンバスに沈む様は衝撃的だった。

彼は自分に残された時間があまり無いことを、十二分に感じている筈だ。再起戦となったこの日は、プロモーターのボブ・アラムが間違いなく勝てる相手を選んでいたこともあり、非常に強気だった。

 2連敗中のローソンは35歳。2024年1月にはファーストラウンドでKOされ、3月も7ラウンド終了後にコーナーが棄権を申し入れて敗者となっていた。サンティアン戦も覇気が無く、典型的な咬ませ犬と呼んでよかった。そればかりでなく、パンチの反応を見れば、ボクサーとして既に壊れていると感じざるを得なかった。

Mikey Williams/Top Rank
Mikey Williams/Top Rank

 残り1分50秒辺りから、体重の乗らないローソンのパンチが虚しく空を切る。そして、迎えた同ラウンドの残り20秒、サンティアンがギアを上げる。

 ローソンをコーナーに詰め、顎への左アッパー、右フック、左ショートフック、ワンツー、右フック、左ストレート、右フック、左ショート、さらに右フック、左フック、左ストレート……と、ガーナ人ファイターを滅多打ちに。

 ローソンは辛うじて初回終了のゴングまで粘ったが、ダメージを重く見たレフェリーが試合終了を宣言。確かに、ローソンがこれ以上ボクシングを続けるのは危険だ。今後の人生を考えれば、この試合だけでなく競技そのものから離れるべきだ。

Mikey Williams/Top Rank
Mikey Williams/Top Rank写真:ロイター/アフロ

 サンティアンは、7カ月前に自身を下したブライアン・ノーマン・ジュニアとのリマッチ、もしくは他団体のベルトを目指すと語ったが、こちらもまた茨の道である。ただただ、自分の駒を確実に勝たせるボブ・アラムの手腕を見せ付ける一戦だった。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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