探究心旺盛な指揮官が率いる相模女子大中学部は世界で通用する選手の育成に力を入れている!
昨年夏の全国中学校選手権に出場できなかった相模女子大中学部は、神奈川県予選を突破して臨んだJr.ウインターカップでベスト8まで勝ち上がった。メインコートの舞台をかけたJ,sphereとの準々決勝は、残り8秒に勝ち越されて45対46のスコアで惜敗。選手たちは涙を流し、田島稔コーチも試合後に負けた悔しさを噛み締めていた。
しかし、コートに出ている5人がそれぞれ持ち味を発揮していることに加え、緊迫したゲームであっても笑顔で楽しんでいることでも、相模女子大中学部は印象に残るチームだった。田島コーチはチームの原点を次のように語る。
「“笑顔で終わろう”とずっと言っています。うちの造語なんですけど、hard work(努力すること)、hard voice(元気に声を出すこと)、hard smile(ガッツリ笑うこと)というのがあるんです」
今年で2回目を迎えたJr.ウインターカップは一発勝負のトーナメントということもあり、勝敗にとことんこだわった戦い方をするチームがあった。しかし、相模女子大中学部は個々の選手育成に力を入れながら、日本一を目指すというチーム。Jr.ウインターカップの報道資料には、「上のカテゴリーでの土台作りをすることと日本一へ挑戦することのWゴールにチャレンジしてきました」と記載されている。
上のカテゴリーでの土台作りということに目を向けると、相模女子大中学部の選手たちはワンハンドでショットを打っていることに注目したい。日本の女子バスケットボール界で主流のボースハンドにしていないのは、“世界で通用する選手を育成する!”というチームの目標がベースにあり、プレーの幅を広げられるという認識を持っているからだ。
Jr.ウインターカップでの相模女子大中学部は、モハメド・アミナトゥ美早希がインサイドの核となり、得点源となってチームを牽引。しかし、姉妹である竹内なつと竹内みやがゲームメイクをし、小石川凜と岡田美紀がシューターとして相手の脅威となり、辻菜々子がリバウンドで存在感を示すなど、個々の特徴を発揮できるチームだった。ベンチから出てきた小高ロ-ズ、本木幸希、川島才佳といった選手たちが、ワンハンドショットで3Pを決めていたのも印象に残る。
「人としての成長とバスケットボール選手としての成長が必要だということを選手たちと共有して、チームとしての目標は大会での優勝、全国制覇。個人ではスキルをあげること。ケガをしない身体作りと動き、それとワンハンドショットの取得をひたすらやってきて、みんな逞しくなってきました」
ベスト8進出を果たしたチームをこう評価した田島コーチは、様々な講習会やクリニックに参加するなど探究心旺盛で、“進化している自分が明日はもっと進化しているはず”という考えの持ち主。試行錯誤を繰り返しながら、選手たちと一緒に成長することで相模女子大中学部を強いチームにしたいという思いで日々を過ごしている。そのきっかけとなったのは、2016年の出来事だった。
「2015年に全中でベスト8でしたが、2016年は県大会で負けました。その時に何が足りないのかと考えると、最初の全中の時には能力のある子たちがいて、その子たちにあった戦略・戦術で勝ち上がっていったという自分なりの分析でした。結局、他の子たちを上達させられなかったというのが自分の中にあって、どうすればみんなうまくなるだろうというのをいろいろ探しました。
いろいろな講習会とかクリニックとかに参加していた一つが今倉定男先生(女子のワンハンドショット浸透に尽力)のP式で、そこから自分なりに落とし込んでいます。今倉先生が納得するような形になっていない子もいるんですけど、僕なりに個人個人を丁寧に見て、半分くらいをシュート練習に当てています。これからもっと安定してくるかなと思います。ワンハンドショットだけでなく、ショットに関係した1対1のスキルとかも、ワンハンドにしたことでできることがあるので、それを追求していきたいと思います」
個のスキルということに焦点を当ててみると、ポイントガードの竹内みやは見ていておもしろい選手だ。156cmの1年生ながら1対1のスキルを存分に駆使し、何度もチームメイトの得点機会をクリエイト。ビハインド・ザ・バック・ドリブルでディフェンスを抜き去ったシーンは、男子のゲームを見ているような錯覚を陥るくらいだった。リズムが悪いときに見せた局面打開力と笑顔は、相模女子大中学部というチームを象徴していたと言ってもいい。
世界で通用する選手の育成を軸に、田島コーチは選手たちの能力を伸ばすために、新チームでも様々なチャレンジに挑み続けるだろう。高い個のスキルを持った選手たちとチーム力の融合によって、全国制覇を成し遂げられると信じて…。
「4アウト1インでやっていますが、5アウトのバリエーションを作ったり、速攻もリムランではなく2サイド、片方に2人、片方に1人が走って、最初からドライブモーションに行くようなものも取り組んでみたい。175cmや178cmの子もいるのですが、今年(度のチーム)に比べると小さいので、機動力を活かしてそういうことをやったらおもしろいかなと。勉強しているのがおもしろいですし、それをどう実戦につなげていくかを考えながら、選手たちが上達していくのは格好いいなと思います」