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日本代表がパリ五輪で勝利するためには絶対にNGの事態が発生した韓国戦。そのキーワードは“UP”。

青木崇Basketball Writer
(C)日本バスケットボール協会

 有明アリーナで行われた韓国との強化試合、日本は3Qまで攻防両面で苦戦を強いられた。4Qの猛攻で一度逆転に成功したが、結果は残り0.9秒に勝ち越しのフリースローを決められて1点差の敗戦。渡邊雄太と八村塁が出ておらず、韓国のパフォーマンスが素晴らしいものだったとはいえ、ガッカリという表現がピッタリのゲームになったのは間違いない。トム・ホーバスコーチは試合後の会見で次のように語っている。

「言い訳は作りたくない。直さないとダメです。明後日はうちのバスケを最初から最後までやらないと。本当にこのタイミングではダメかなと思った」

 韓国戦で明らかだった問題を2つのキーワードとしてあげるならば、いずれも“UP”という言葉が入ってくる。まずは、試合後の記者会見でトム・ホーバスコーチが口にした“WAKE UP CALL”だ。

 これはモーニングコールの目覚ましを意味する。この試合での日本は、韓国に最大で20点のリードを奪われるなど、攻防両面で精彩を欠いていた。ホーバスコーチが選手選考のプロセスを理由にいろいろなラインナップを試したとはいえ、日本らしいプレーが見られたのは4Qの10分間のみ。相手に優位な状況を作らせないヒット・ファースト、やられてもやり返すパンチ・バックの姿勢は不十分だった。

「あってはならない試合でした」

 河村勇輝がこう語ったように、パリ五輪で対戦するドイツとフランスを相手にこのような事態に陥れば、30点以上の大敗を喫しても不思議ではない。チームとして4日間しか練習していない韓国相手に悪い内容の負けを喫したことは、日本がチームの現状を知ることと、パリ五輪に向けたメンタルアプローチの大事さを再認識するという点で、最高の“WAKE UP CALL”だったと言える。

 もう一つのキーワードは“PICK UP”。今回来日した韓国代表は20代前半の選手が多いチーム。仙台89ersのヤン・ジェミンが「スピードは我々の強み」と語ったように、日本戦での韓国はディフェンシブ・リバウンドを確保すると、アウトレットパスを出してオフェンスの展開を速くすることで、数的優位を作ろうとしていた。

 ホーバスコーチがいろいろなコンビネーションを試す選手起用をしたこともあり、日本はオフェンスの遂行力がいまひとつの時間帯も多かった。しかし、ターンオーバーやミスショット後のトランジション・ディフェンスが悪く、速攻で26点を奪われてしまえば、どんな相手でも勝つことは難しい。

 その最大要因は、ボールを保持する選手をスローダウンさせるために必要なディフェンスの“PICK UP”が遅れていたこと。わかりやすい例を挙げるならば、3Q4分40秒に日本がタイムアウトをコールする前のシーンだ。

 ハ・ユンギがリバウンドを奪ってアウトレットパスを出すと、イ・ジョンヒョンが右ウイングから3Pショットを成功。日本はジェイコブス晶が3Pラインから2mくらいのポジションにいたが、ハがリバウンドを奪った瞬間、韓国は2対1の状況を作り出していた。オ・ジェヒョンがディフェンスでマッチアップしていた吉井裕鷹の前を走っていたため、そこを少し意識したことでジェイコブスはイへの対応が遅れ、ノーマークで3Pショットを決められたのである。

「1、2、3Qはディフェンスの遂行力が悪く、フリースローの後だったり、ハーフコート・ディフェンスでのカバーレージのミスだったり、オンボールのプレッシャーがあまりにも足りていなくて」

 河村が反省の言葉を出したことに続き、ホーバスコーチはディフェンスについて次のように語っている。

「今週は早く“PICK UP”するディフェンスの練習をやったけど、今日はよくできなかった。それも一つあるけど、河村が言ったようにディフェンス・コールのミスとかが痛かった。フリースローが終わって4人がやっているけど、1人がやっていないから相手にダンクを決められるとか、そういうバスケットボールはこのレベルではダメ。足りないと思います。それを直します。でも、“PICK UP”は今週何度も言ったんだよ」

 パリ五輪のドイツ戦まであと3週間。ベスト8進出という目標を達成するためにも、日本は韓国戦の負けを糧にチーム力をさらに“LEVEL UP”できるが、成功を手にするためのカギになる。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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