WEリーグカップが開幕。新4バックお披露目の大宮はクリーンシートで勝ち点獲得
【新シーズンのサッカーがお披露目に】
4年目のシーズンがいよいよ開幕した。9月中旬にスタートするWEリーグに先んじて、8月31日にリーグカップが開幕。オフの移籍などを経て、各チームが今季のサッカーをお披露目した。
NACK5スタジアムに東京NBを迎えた大宮は、スコアレスドローで強豪から勝ち点1を奪取。
東京NBは攻撃の軸だった藤野あおばが海外挑戦のため退団し、この試合は主力のU20代表組を欠く状況だったが、下部組織出身の若い選手たちが選手層の厚さを見せつけた。
大宮にとっては昨季、アウェーで27本ものシュートを浴び、0-7と大敗した相手。この試合もボールを握られる時間帯が長くなったが、90分間、粘り強い守備で対応。GK今村南海のファインセーブもあり、20本のシュートを打たれながら、1点も許さなかった。
オフには、チームを支えた“87年組”の鮫島彩(引退)、有吉佐織(新潟に移籍)、上辻佑実(台湾のクラブに移籍)や、同じくベテランの坂井優紀(長野に移籍)が揃って退団。他にも引退や移籍などで11人がチームを離れ、移籍や下部組織からの昇格などでほぼ同数の新戦力を迎えた。仲田歩夢や井上綾香、乗松瑠華ら、これまで中堅だった創設メンバーを中心に、柳井里奈監督の下で2年目のシーズンを迎えている。
「昨シーズンは『ボールを保持しながら戦う』ことをテーマとしてきたので、それを継続しつつ、ゴールに向かっていくプレーを増やしていく。それが私たちの今回のシーズンのサッカーです」
副キャプテンでボランチの林みのりは、キックオフカンファレンスで力強く宣言した。ただし、浦和、神戸、東京NBといったタレント揃いのチームから勝ち点を奪うために、「カウンターで少ないチャンスを活かす」現実的な戦い方も視野に入れている。そのために、自陣での守備ブロックの質や球際の意識は、昨年から地道に積み上げてきた。
84分に迎えたカウンターの決定機。船木里奈のシュートはポストに嫌われ、勝ち点3を得ることはできなかったが、柳井監督は狙い通りの内容に手応えを感じているようだった。
「相手をリスペクトした上で粘り強く戦って、1つ、2つのチャンスを決め切ろうと。その中で背後を取れた部分もありました。今後は相手のシステムや変化に柔軟に対応しながら前に出るシーンを増やしていかなければいけないと思いますが、昨季大敗したチームに対して怖がらずに戦えたのは、選手たちが素晴らしかったからです。船木が抜け出したシーンは決まっていれば…と。ただ、我慢強く戦った中で(その形を)持っているよというのは出し続けたいと思います」
【堅守の軸となる2人】
大宮が、特に昨年から大きく変化させたポイントは最終ラインだ。状況に応じて3バックにも可変するシステムで、左サイドバックには埼玉から運動量豊富な金平莉紗が加入。長嶋洸が抜けたセンターバックの穴は、背番号10の五嶋京香が埋めた。五嶋はボランチでもプレーできるが、今季は大黒柱の乗松瑠華と共に守備の要になりそうだ。
156cmと大柄ではないが、予測に秀でて1対1や空中戦にも強く、トップリーグでの経験値も豊富。「京香の人に対する強さはリスペクトしていて、伸び伸びと自分を出してほしい」と、乗松も新コンビで迎えた公式戦初陣を無失点に抑えたことに手応えを感じていた。
「90分通して集中力を保ち続けることは難しいけど、誰かが集中力を切らしているときに、周りがちゃんと声をかけ続ける。それが自分たちのチーム力なので、そこを大事にして、声をかけ続けられたと思います」
一方、キャプテンとして「本気でタイトルを目指している」という乗松にとっては、攻守の詰めの甘さも見えたようだ。
「もう少しマイボールの時間がないと、勝ち続けることは難しいなと思います。主導権を握って、ゴールに迫る回数を増やす。そこにサッカーの楽しみがあると思うので、そこを詰めていきたいです」
試合中には攻守の軸となる林が負傷退場するシーンもあり、不安も残る。大事ではないことを祈りたい。
主力の離脱は、限られた予算と戦力でタイトルを目指す各チームにとっては死活問題。女子サッカーは2021年にトップリーグをプロ化して以降、試合の強度は上がり、ケガのリスクも高まっている。その点、レフェリーのジャッジとコントロールが重要なのは言うまでもなく、WEリーグが発展していく上でも今季、避けて通れない課題の一つに思える。
グループ2位の大宮は次戦、9月7日にアウェーで首位の広島と対戦する。昨季カップ戦王者相手に攻撃的なサッカーを展開できるか、注目の一戦だ。