「苦しい時に決めてくれる」ジェフレディースの新たな武器。WEリーグ折り返しで迎える皇后杯への第2章
【4試合で3ゴール。大学ナンバーワンFWが放つ輝き】
WEリーグは11月30日と12月1日に行われた第11節で折り返し地点を迎えた。首位でウインターブレイクに突入したのは、広島との上位対決を制した東京NB。ここまで負けなしで首位を快走していた神戸が敗れ、今季初めてトップに立った。
一方、上位争いに食らいつく中位争いもかなりの混戦模様。中でも、手堅い試合運びで着実に勝ち点を積み重ねたのが千葉だ。第8節は、圧倒的な攻撃力を誇る2位(*)の東京NBに1-0で勝利し、9節は3位(*)の広島とスコアレスドロー、10節は首位(*)の神戸に1-2で逆転を許したものの、11節は大宮に1-0と、僅差の勝利を引き寄せた。
(*)いずれも当時の順位
イスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ監督の下、今季はビルドアップにも力を入れてきた千葉だが、その分失点も増え“原点回帰”で守備を再強化。その成果が形になり、「簡単に失点をしないベースができてきた」(田中真理子)ことに加え、11月に入ってからの上昇曲線は、東洋大学から特別指定選手として加わった小林莉々子の決定力にも比例する。
現在4年生の小林は、大学のリーグ戦が終了した11月からWEリーグに出場し、4試合で3ゴール。うち2得点を東京NB、神戸の上位2チームから奪った。野生味を感じさせるアグレッシブなプレーとシュートスキルの高さは、筑波大卒業後(2022年)にデビューからゴールを量産し、瞬く間に代表入りを果たした千葉玲海菜を思い出させる。この試合でも積極的なプレーでボールを引き出し、千葉の数少ないチャンスを決定機につなげていた。昨季は3試合の途中出場にとどまり、今季もまだ4試合目で各チームから“研究されていない”こともあるだろう。だがそれを差し引いても、スキルフルなゴールを重ねている小林の勝負強さに異論の余地はない。
大宮戦で、鋭い突破から小林のゴールを間接的にアシストした大黒柱の鴨川実歩は、「本当に苦しい時に決めてくれる選手だなと思いますし、大事な試合で決めてくれるので、それで勝ち点を取れていると思います」と、その得点力に信頼を寄せる。2戦連続となる先発起用で送り出したオルトゥーニョ監督も、高いポテンシャルに太鼓判を押した。
「彼女の良さは、どこにスペースがあるのかをしっかり見て入っていけることです。どこにボールが入っていくかを見極める感覚も優れていて、(フィニッシュの)技術力は申し分ないと思います」
小林は今季の関東大学女子サッカーリーグでは15得点を挙げ、11月上旬には2年ぶりの優勝を決めた。ムードメーカーぶりも際立っており、この試合では応援に訪れた東洋大のチームメートが沸くスタンドに向かってゴールパフォーマンスで応えることも忘れなかった。試合後、4戦3発という勢いの理由について聞くと、小林は喜びの表情を引き締めた。
「(特別指定選手として出場できる)期間が決まっている中で、自分ができることをこのチームに還元しようと決めていました。その中で3ゴールという結果が出ていますが、もっと決定力があれば勝てた試合もありますし、1点じゃ足りないのがサッカーの世界だと思います。そこをもっと突き詰めていかないといけないし、それはフォワードとしての永遠の課題だと思うので、もっと得点でチームに還元できたらいいなと思います」
【東洋大のカラーが千葉の新たな強みに】
同大学からは多くの選手たちがプロの道に進んでおり、この試合では大宮が北川愛莉と落合依和、千葉は小林、北村美羽、稲山美優がピッチに立った。技術の高い選手が多い東洋大のカラーは、千葉の新たな武器にもなっている。北村が中盤で攻撃の芽を摘み、右サイドでは「チームに完全にフィットしている」(オルトゥーニョ監督)という稲山が精緻なクロスでチャンスを演出するシーンも増えている。鴨川は言う。
「足元の技術があって巧い選手が多く、その良さがうまく噛み合った時は本当にいい攻撃ができる。それが今のジェフの形になっています」
次の試合は、12月15日に行われる皇后杯5回戦。相手は首位の東京NBで、リーグ戦では1試合あたり2.5ゴールとぶっちぎりの得点力を誇る。11月のリーグ戦で敗れた東京NBにとってはリベンジの格好の機会となるが、千葉はその戦いをどう受けて立つのか。強化指定選手となっている小林や稲山は、規定により皇后杯には出場できない。その中で、“盾(千葉)と矛(東京NB)”の戦いを制するために、オルトゥーニョ監督がポイントに挙げるのはポゼッションの質だ。
「ボールを持った時の判断を上げ、質を上げながら自信をつけて、ベレーザ戦に挑みたい」
決戦の日まで、2週間足らず。30歳の若きスペイン人監督の下で臨んでいる2024-25シーズン、千葉の第2章が幕を開けようとしている。