「ザ・サラリーマン社会」では50代が会社を変えていくべき
■素直になれない50代
「あなたに何がわかるんですか? 外部のコンサルタントに言われる筋合いはない」
「私たちの会社なんです。私たちが一番よくわかっているんです」
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。「絶対達成」をスローガンにしている以上、クライアント企業の現場担当者たちには、かなりの変化を求める。なぜその変化が必要なのかを、数字などを使って論理的に説明はする。が、現場は激しく抵抗するものだ。
人間の思考プログラムは、過去の体験の「インパクト×回数」でできあがっている。だから長く働いている人のほうが現状維持バイアスにかかりやすい。ベテラン社員ほど感情を抑えられず、冒頭のように感情的な発言をするのだ。
とくに昔の基準で「定年まで10年を切った――50代」は顕著だ。40代であれば、まだまだ変化していかないと、この先やっていけないという思いがある。しかし50代になると往生際が悪い。あと10年耐えれば、安泰な人生が待っていると、どこかで信じたいのだ(実際には逃げ切れるはずもないのだが)。
これだけ変化スピードの速い時代である。組織も自分も変わらなければならない。頭ではわかっている。しかし、なかなか感情がついていけない。
実際に、緊急事態宣言が発令され、会社がテレワークの導入を呼びかけても、抵抗する主な年代が50代だという(ネクストレベルの「テレワーク・リモートワークの現状」調査より)。
クライアント企業の営業部長から夜に電話がかかってきて、いろいろと話すことがある。そして、たまに本音を聞くことがある。
「わかってるんです。変わらなくちゃいけないって言うのは。でも、いろいろなしがらみがあって、組織が閉塞感に包まれてるっていうか」
「みんなの前で、そうやって言えばいいじゃないですか」
と言っても、何も返事をしてくれない。頭ではわかっているが、自分から率先して何かを変えたいとは思わない。そういうことなのだと私は思っている。
■表向きだけ素直な30代、40代
素直になれない50代と比べ、30代、40代は「表向きだけ素直」だ。
「おっしゃるとおり。当社も変わらなくてはなりません。やりましょう」
などと口では言ってくれる。しかし、いざ実行段階になると「こういう話だと思わなかった」「できる範囲でやると言ったつもりだった」などと、あーでもない、こーでもないと言いだす。
これが30代、40代だ。
20代の若者は、納得していなくとも、
「会社の方針で決まったのならやります」
と素直だ。問題なのは先輩や直属の上司で、
「やりますけど、上司が昔のやり方を変えてくれません」
「社長が言っていることと、課長が言っていることが正反対です。私としては課長の言うことに従うしかありません」
と20代は不満を口にする。よく中間管理職が板挟みにあっていると言われるが、昨今は20代の若者のほうが板挟みにあっている。
高度情報時代となり、社長や経営幹部のメッセージが末端の担当者にまでいきわたるようになったからだ。だから現場の若者のほうが、
「会社と上司の言い分が食い違っているので、どっちに従えばいいかわからない」
という悩みを抱える。こういった30代、40代にピシャリと言えるのがベテランの50代だ。
「若い連中が迷ってるだろ。会社の方針に従え」
50代のベテラン社員から言われたら、サラリーマン社会では反論できない。実際に、現場で組織改革の支援をしていると、このようなベテランの50代に助けられることは多い。
私は50代の方々に「強い素直さ」をもってほしいと考えている。根がマジメだから、できないものを口先だけで「できる」とは言えない。だから安請け合いはしない。
しかし、頭でわかっているのだ。感情をコントロールし、「仕方がない、やろう」「本当は抵抗したいが、このコンサルタントの言ってることは正しい。私たちは変わらなくちゃいけない」と素直な思いを口にしてほしい。
単なる素直さではない。「強い素直さ」だ。コロナ禍において、私たちは歴史上、経験もしたことのない環境の中にいる。これほど不確実な時代において「変わらない」という選択肢は、どの会社にもないのだ。
私も52歳。だからこそ言いたい。今の50代が会社を変えていくべきなのだ。