台風11号の名前は北朝鮮が名付けた「ノウル(夕焼け)」
台風のアジア名
台風には、その年の発生順に台風番号と呼ばれる番号がついています。
令和2年(2020年)9月16日3時に南シナ海で発生した台風は、令和2年(2020)年で11番目に発生した台風なので、台風11号と呼ばれます。
この台風番号とは別に、台風には名前がついています。
平成11年(1999年)以前は、米国が付けた英語名を、気象庁でも船舶向けの情報などでは、台風番号と併記して使っていました。
平成12年(2000年)以降は、北西太平洋または南シナ海で発生する台風防災に関する各国の政府間組織である「台風委員会」が提案したアジア名がついています。
アジア名をつける目的は、
・国際社会への情報に台風委員会が決めた名前をつけて、それを利用してもらうことによって、アジア各国・地域の文化の尊重と連帯の強化、相互理解を推進すること
・アジアの人々になじみのある呼び名をつけることによって人々の防災意識を高めること
です。
アジア名は、台風委員会に加盟する14の国と地域(アルファベット順にカンボジア、中国、北朝鮮、香港、日本、ラオス、マカオ、マレーシア、ミクロネシア、フィリピン、韓国、タイ、米国、ベトナム)が、それぞれ10個ずつ提案した名前、合計140個の名前です。
基本的には、各国の提案がそのまま使われていますので、国の事情により様々な名前があります。
日本は、長年にわたって台風の影響を受けている船乗りになじみの深い「星座の名前」を使うことにし、「てんびん」などを提案しています。
アジア名の引退
台風のアジア名は、台風委員会が作成した名簿順に名付けられますので、令和2年(2020年)の台風11号は、名簿から北朝鮮が命名した「ノウル」です。
夕焼けという意味です。
アジア名が始まった当初の名簿では、北朝鮮は鳳仙花(ほうせんか)を意味する「ポンソナ」を提案していました。
しかし、平成14年(2002年)の台風26号に対して1回つけられただけで、平成20年(2008年)の台風21号から「ノウル」が使われています。
そして、平成27年(2015年)の台風6号、令和2年(2020年)の台風11号が「ノウル」です。
名前が変更となった理由は、平成14年(2002年)の台風26号でグアム島に大きな被害が発生したからです(図2)。
台風により大きな被害が発生すると、その名前は引退となり、新しい名前に差し替えられるというルールがあるからです。
台風委員会で台風のアジア名を決めた当時、香港はイギリス領から中国に返還になっていました(返還は平成9年(1997年)7月1日)。
また、マカオはポルトガルから統治権が中国に返還になっていました(返還は平成11年(1999年)12月20日)。
しかし、過去のいきさつから、台風委員会では、香港とマカオは中国とは別扱いで加盟していますし、アメリカはアメリカ領のグアム島があるので参加しています。
国際会議は、各国の利害対立が先鋭化することが多いのですが、アジア名を決める国際会議は、雰囲気が全く違うといいます。
各国が台風委員会で提案する名前は、「その言葉はわが国では発音しにくい」とか、「その言葉はわが国の宗教の神様の名前に似ている」「その言葉はわが国では卑猥な言葉に聞こえる」などの理由で異議がでる場合もあります。
しかし、その国の文化の問題であり、提案国は異議を尊重して名前を差し替えて提案します。
また、ある国で大きな被害が発生した時は、次回にその名前が使われる前に引退させ、新たな名前を提案します。
北朝鮮が、アメリカ領グアム島の被害を考え、「ポンソナ」から「ノウル」に名称を変更したのは、その一例です。
難しい国際問題がありますが、台風防災には国境がありませんので、各国・地域が協力して取り組んでいます。
台風のアジア名は、協力のシンボルです。
タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。
図2の出典:気象庁ホームページの図に著者加筆。