タイ干ばつ、経済に痛手 雨の見通しは?
タイで干ばつが深刻化
熱帯性気候のタイでは5月から10月までが雨期(グリーンシーズン)です。でも、今年はちょっと事情が違うようです。6月までの雨量はタイ全土で平年を下回り、北東部では平年の約60%と雨が非常に少なくなっています。
タイでは国民の約4割が農業に従事し、世界有数のコメ輸出国です。農林水産省によると、2010/11年度までは世界第1位でした。1993年の大冷夏では日本国内のコメが不足し、タイから緊急輸入されたことを覚えているかたも多いでしょう。
タイでは日本と同じようにモンスーンの影響を受けて、5月ごろから雨が多くなります。しかし、今年はモンスーンが不活発で、7月上旬にかけ、雨の少ない状態が続いています。とくに、内陸の北部から東部にかけての地域で干ばつが深刻です。
この11年ぶりの大干ばつでコメなどの農作物の生産が減るとの思惑から、タイの通貨であるバーツが2009年以来6年ぶりの安値との報道もあります。
8月は雨多くの見通し
タイ気象局によると、タイ内陸では今月(7月)中旬以降、雨の日が多くなり、雨量が持ち直す兆しがあります。
8月の降水量予測によると、来月は月の3分の2くらい(20日程度)が雨の日となる見通しで、降水量は南部西岸で350-450ミリ、東部で280-330ミリ、北東部で240-290ミリなど平年並みの雨が予想されています。
これまでの雨不足を解消できるかは不透明ですが、8月の雨量が予想どおりならば、一息つけるのではないでしょうか。
一方で、雨が降りすぎても影響は大きくなります。
2011年タイ大洪水
今から4年前の秋、過去最大の大洪水が発生し、あふれた水が首都バンコクに押し寄せました。トヨタやホンダ、ニコンなど日系企業の多くが洪水により長期にわたり生産がストップ、多大な損害を被ったことを覚えているでしょう。
身近な例では養殖エビが大打撃を受けて、スーパーの店頭で品薄や値段が高くなる影響がありました。もしかしたら、このせいで食卓からエビフライが少なくなったかも。
タイは日系企業の一大生産地であるために、タイの天候悪化が日本経済に直接影響する構図になっています。
タイでは2006年ごろから雨の多い年が続いていて、長期的にみると温暖化の進行により、雨の多い年、少ない年の差が拡大、今まで以上に雨の降り方が変化することでしょう。
他の国の天候が身近になる、それが経済のグローバル化であり、温暖化なのかもしれません。
【参考資料】
Thai Meteorological Department(タイ気象局):Monthly Weather Summary in Thailand June 2015
農林水産省:タイの米施策2013年
外務省:タイ王国の基礎データ
タイバーツが安値:日本経済新聞,2015年7月24日