激戦区の終盤情勢① 奈良・宮崎=JX通信社 参院選終盤情勢調査
JX通信社では、今月10日投開票の参院選について、独自調査を踏まえて「激戦」と判断した注目選挙区の終盤情勢を探った。情勢分析にあたっては、電話情勢調査の結果に予測モデルを適用して分析した結果に加え、自社アプリNewsDigestを通じた「スマホ出口調査」の中間集計も加味した。
本稿では、奈良選挙区、宮崎選挙区(いずれも定数1)の終盤情勢を詳しく紹介する。
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奈良:自民現職と維新新人が大接戦に
奈良選挙区では、自民現職の佐藤啓氏と維新新人の中川崇氏が横一線の大激戦を繰り広げている。立憲新人の猪奥美里氏がその後を追いかけている。
6月18日から21日にかけて行った前回調査と比べると、佐藤氏と猪奥氏は支持が横ばいなのに対し、中川氏は無党派層や岸田政権に対する支持・不支持を決めかねている層を主な集票源として、急速に支持を拡大している。
5月27日から30日に実施した調査を含め、過去3回分の調査の推移をみると、佐藤氏は無党派層と自民支持層で支持が横ばいだったのに対して、猪奥氏は5月から6月にかけて無党派層の一部を引きつけた。また、中川氏は回を追うごとに、無党派層や自民支持層からの支持を拡大していた。
終盤では、中川氏は維新支持層の約7割を固めているほか、無党派層、自民支持層、立憲支持層のそれぞれ2割程度からも支持を集めている。対する佐藤氏は自民・公明支持層の7〜8割を固めるも、無党派層からの支持は1割程度にとどまっている。態度未定者の多い40〜50代では、佐藤氏と中川氏が横一線だ。猪奥氏は立憲支持層の7割のみならず、維新支持層の1割弱、無党派層の2割弱を固めている。
地域別では、南部で佐藤氏が先行する一方、大票田の奈良市を含む北部では、佐藤氏と中川氏が互角となっている。
終盤でも有権者の2割は態度を明らかにしておらず、投開票日に向けた無党派層の取り込みが勝負を分けそうだ。
なお、現時点で公表されている報道各社の情勢報道では、日本経済新聞を除き、いずれも佐藤氏のリードを伝えている。日経は「中川と佐藤が競り合う」とした一方、日経と合同で調査を行った読売新聞は「佐藤、中川、猪奥が、三つどもえの戦いを繰り広げ、激しく競り合っている」としている。
各社の情勢報道を集約して分析するJX通信社の「当選確率シミュレータ」では、佐藤氏の当選確率はいまだ「95%以上」とされている。一方で、各社の情勢報道を統合した分析では、佐藤氏と中川氏の差が序盤よりも縮まっている様子が窺える。
こうした情勢の変化を受けてか、8日には安倍晋三元首相が奈良入りして自民・佐藤氏の応援演説に臨むことが決まっている。対する維新は、松井一郎代表(大阪市長)が6日に奈良入りした。
宮崎:立憲新人が自民現職を猛追
宮崎選挙区では、自民現職の松下新平氏と立憲新人の黒田奈々氏が激しく競り合っている。
無党派層の支持動向を見ると、6月18日から21日にかけて行った前回調査では、松下氏と黒田氏が2割ずつ分け合い互角だったところ、終盤の7月6日から7日にかけての調査では黒田氏が4割、松下氏が2割となり、大きく差が開いた。5月末に行った調査まで含めて推移を見ると、無党派層での松下氏の支持は続落傾向で、公示以降に黒田氏が無党派層を取り込んだことで両者の差が縮まった格好だ。
この他、黒田氏は自民・公明支持層の1割強、維新支持層の半数を取り込んでいる。立憲の支持層はほとんどを固めた。対する松下氏は自民・公明支持層の8割、維新支持層の3割程度を固めているが、前回調査からの伸びは自民・公明支持層に限られている。
地域別では、前回調査時は全県で松下氏が優位に立っていたが、北部では黒田氏が逆転した。宮崎市などを含む南部では、松下氏がややリードしている。
職業別では、民間企業勤務で松下氏がなおリードを保つも、自営業者や非正規雇用者、専業主婦層では、前回調査から黒田氏が着実に支持を伸ばしている。終盤においても、有権者の1割は態度を明らかにしていない。
他の報道各社の情勢報道では、選挙戦序盤は概ね松下氏のリードが伝えられたが、中盤以降は、日本経済新聞を除いて両者の激戦化を伝えている。地元紙の宮崎日日新聞が7月2日から5日にかけて行った調査をもとにした情勢報道では「接戦」とされている。
各社の情勢報道を集約して分析するJX通信社の「当選確率シミュレータ」では、松下氏の当選確率はいまだ「95%以上」との判定だ。ただ、各社の情勢報道を統合した分析では、松下氏と黒田氏が公示以降に差を縮めていることがわかる。
宮崎選挙区は、国民新人の黒木章光氏と共産党新人の白江好友氏など野党候補が5人立候補している「野党乱立」区の一つだ。黒木氏と白江氏は浸透に課題が残る。
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