小池知事「交代」42%「継続」24%、支持・不支持は拮抗 ー 独自調査で分析する、世論の"知事像"
7月7日に投開票が予定される東京都知事選挙は、告示まで1ヶ月を切った。立憲民主党の蓮舫参院議員、広島県安芸高田市の石丸伸二市長といった著名人も相次いで名乗りをあげる中、現職の小池百合子知事も3選を目指して出馬する意向が報じられている。都知事選では2期8年の小池都政への評価やその継続の是非が問われるとともに、来る衆院選の「前哨戦」としても位置づけられそうだ。
そこで今回、JX通信社では5月18日・19日の2日間、東京都内の有権者2299人を対象にインターネットを使った独自調査を実施した。回答は、年代や性別が総務省による最新の人口推計の比率に近くなるように回収した。この結果をもとに、小池知事や2期8年の小池都政を有権者がどう見ているのかを分析する。
小池知事支持・不支持 ともに33%で拮抗
今回の調査で、都内の有権者に小池知事を支持するか否かを聞いたところ「支持する」「どちらかと言えば支持する」とした人は計33%だったのに対して、「支持しない」「どちらかと言えば支持しない」とした人も計33%と拮抗した。どちらとも言えないとした人は34%だった。
調査方式や設問が異なるため単純比較はできないが、4年前の前回都知事選直前(2020年5月30・31日)にJX通信社が実施した都内世論調査では、小池知事の支持率は69.7%、不支持率は20.8%だった。この時の選挙で、小池知事は次点候補の4倍超となる366万票を獲得して大勝した。
今回の調査で小池知事の支持動向を性別で見ると、男性では「支持しない」人が多かったのに対して、女性では「支持する」人が多かった。女性で相対的に小池知事の支持が多い傾向は調査方式の違いを問わず続いている。
また、年齢層別に見ると、「支持する」とした人は各年齢層で満遍なくいるのに対して、「支持しない」人の割合は40〜60歳代でやや高かった。
「改革姿勢」に不満?小池知事不支持層の声
有権者に「都知事に求める資質」についても聞いた。その結果「政策を実行する能力」を挙げた人が45%と最多で、次いでリーダーシップ(13%)、改革への姿勢(12%)、スピード感(10%)などと続いた。
この「都知事に求める資質」を、小池知事支持層、不支持層と「どちらともいえない」層に分けて見ると、興味深い傾向が見える。
いずれの層でも「都知事に求める資質」の最多は「政策を実行する能力」だが、「リーダーシップ」「決断力」などについては支持する人の方が多く挙げる傾向があった。
対して「改革への姿勢」については、知事を支持しない人の方が多く挙げていた。
テレビを使う人は小池知事「支持」、YouTubeを使う人は「不支持」?
近年はネットやSNSを通じた発信が、時にテレビなどのマスメディアを通じた発信を上回る社会的影響をもたらすことがある。そこで、今回の調査では有権者にテレビや新聞、YouTubeやその他SNSなどの媒体を「政治や社会に関する情報源」として使うか否かを聞いた。
その結果、代表的な映像メディアである「テレビ」と「YouTube」のそれぞれを使う人の間で、小池知事の支持動向に大きな違いがあることが分かった。
「政治や社会に関する情報源」としてテレビを「使う」とした人では小池知事を支持するとした回答が多かった一方で、YouTubeを「使う」とした人では小池知事を支持しないという回答が多くなったのだ。政治や社会に関する情報を主にどんな媒体で得ているかによって、小池知事や都政の見方にも差があることが分かる。
小池都政「継続望ましい」24%「交代した方がよい」42%
調査では、小池都政の継続の是非についても聞いた。
「これからの4年間も、小池都政が続くのが望ましいと思いますか?それとも、新しい人に交代した方がよいと思いますか?」という質問に対して、「小池都政が続くのが望ましい」とした人は24%だったのに対して「新しい人に交代した方がよい」とした人は42%に上った。「どちらとも言えない」とした人は34%だった。
政党支持層別に見ると、自民・公明両党の支持層では「継続」を望む声が半数近くあったのに対して、立憲・共産・れいわの各党支持層ではいずれも「交代」を望む声が過半を占めている。「支持する政党・政治団体はない」としたいわゆる無党派層でも「交代」が4割で最多だが、「どちらとも言えない」との回答も3割超と多かった。
「2期8年の小池都政を経て、小池知事に対する評価が変わりましたか?」という質問に対しては「変わらない」が63%と最多だったが「評価が下がった」とした人も30%に上った。「評価が上がった」とした人は8%にとどまった。
調査への回答者全体と比べて「評価が上がった」との回答が多いのは、自民、維新、公明の各党支持層だった。うち維新については「評価が下がった」との回答も多く、党支持層の小池知事に対する見方が大きく分かれていることが窺える。
「物価高対策」への関心高く/重視する政策ごとに知事の支持動向に大きな差
調査では、都知事選の投票にあたって重視する政策についても聞いた。その結果は下図の通りだ。「物価高対策」が26%と最多で、次いで経済・雇用(19%)、医療・福祉・介護(17%)、教育・子育て(9%)などと続いた。
2期目の小池都政においては、三井不動産などの民間事業者が明治神宮外苑で進める再開発計画への都の対応を巡って、大きな議論が起きている。だが、調査でこれら再開発への対応を重視する政策として挙げたのは7%にとどまった。
これら「重視する政策」別に小池知事の支持動向を分析したところ(下図)、政策ごとに小池知事の支持動向に大きな差があることが分かる。
小池知事を支持する声は主に「教育・子育て」「防災」などを重視する有権者の中で多かった。一方で、「神宮外苑など再開発への対応」を重視する有権者の中では顕著に不支持の声が多い。
支持政党別に見ると、無党派層のほか、公明、維新、共産、れいわの各党支持層では「物価高対策」を挙げる有権者が最多だったが、自民党支持層では「経済・雇用」が最多で、立憲支持層では「医療・福祉・介護」を挙げる声が最多だった。
また、全体と比べて立憲、共産、れいわの党支持層ではそれぞれ「神宮外苑など再開発への対応」を重視するとの回答が多く、これらの論点が「反・小池都政」のひとつのテーマとなっていそうだ。
調査の方法
5月18日(土曜日)と19日(日曜日)の2日間、東京都内の有権者を対象に、大手リサーチ会社に登録したモニターを対象としたインターネット調査を実施した。回答は、年代や性別が総務省による最新の人口推計の比率に近くなるように回収した。2299人から有効回答を得た。