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米シンガーを射殺したファンは、彼女に恋人がいることに嫉妬していた

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ファンに射殺されたクリスティーナ・グリミー(22)(写真:REX FEATURES/アフロ)

YouTubeでセンセーションを巻き起こし、NBCのコンテスト番組「The Voice」にも出演した新進歌手クリスティーナ・グリミー(22)がファンに射殺された事件で(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160612-00058745/)、犯人の横顔が、少しずつ明らかになってきた。

犯人ケビン・ルイブル(27)は、大型家電販売チェーンBest Buyに勤務し、商品を買った客の依頼を受けてテレビやコンピュータなどのセットアップをする“Geek Squad”チームに所属していた。

TMZ.comが伝えるところによると、ルイブルがグリミーの熱狂的なファンであることは、職場の同僚の間でよく知られていたようだ。彼は職場で彼女の音楽をかけ、いつか彼女と結婚することを夢見ていたと、同僚たちは語っている。彼女に好かれるため、外見を向上させようと、ビーガン(完全菜食主義者)になって体重を落とし、レーシック手術や毛髪移植まで受けていたとも語った。

ルイブルは、3月にグリミーのライブに行って実際に彼女に会ったとか、オンラインゲームで彼女とプレイをしたなどとも、同僚たちに話していた(グリミーの関係者は、彼女がルイブルと接触を持ったことは一度もないと断言している。)しかし、同僚らは、グリミーには恋人がいるから無理だと彼をからかったという。グリミーは恋人の存在を公言してはいなかったが、ソーシャルメディアに出ている写真を見れば、グリミーがプロデューサーとつきあっていることは明らかだと教えたということだ。ルイブルは激怒し、それが先週金曜日の悲劇につながったと、同僚たちは見ている。

ルイブルは、家庭でもトラブルを抱えていたらしい。逮捕に至ったことはないが、ここ3年の間に、ルイブルが両親と住む家には、警察が2度訪れている。1度目は2013年で、彼が父の婚約者に暴力をふるって彼女が腕をケガしたという事件だった。警察に対して、彼女は、ルイブルと言い争いになり、ルイブルがドアを激しく閉じたせいで、彼女の腕がドアにはさまったと語った。一方でルイブルは、彼女がひどく酔っ払っていたため、自分の部屋に早く逃げようとしただけだと語っている。警察が訪れた時、たしかに彼女は酔っ払っていたらしい。2014年には、ルイブルの父と彼女がケンカをして、警察が呼ばれている。

米時間13日(月)には、グリミーの出身地ニュージャージー州イヴシャム・タウンシップで追悼集会が行われ、大勢の人々が集まった。グリミーの兄で、ツアーマネージャーも務めていたマーカスは、「彼女はこの街を愛していた。この州も、歌うことも、神様も、僕のことも。彼女は僕の妹だった」とスピーチをしている。マーカスはまた、グリミーが射殺された2日後に、同じくフロリダ州オーランドで起こったゲイバーでの乱射事件の被害者にも追悼を送った。葬儀は今週中に親族と近しい人たちだけで行われる予定で、葬儀代は、「The Voice」でグリミーのコーチを務めたアダム・レヴィーンが支払うと申し出ている。

グリミーは、米時間10日(金)、オーランドで行われたコンサートに出演した後、ファンと交流している時に、ファンのひとりとしてやってきたルイブルに射殺された。そばにいたマーカスがルイブルに襲いかかると、ルイブルは自らを撃って自殺をしている。ルイブルは、銃ふたつとナイフ1本を携帯していた。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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