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シュワルツェネッガーにジュリア・ロバーツ。大物セレブがハリス勝利に向けラストスパート

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ハリスのキャンペーンスポットのナレーターを務めたジュリア・ロバーツ(写真:REX/アフロ)

 アメリカ大統領選まで、いよいよ1週間を切った。

 投票用紙はかなり前に送られてきており、すでに郵便で投票を済ませた有権者も多い。しかし、それらの人たちは政治に関心が高く、どちらに入れるかはっきり決めていて、揺るぎない。接戦である今回の選挙ではとくに、まだ迷っている、あるいは選挙自体にそう興味がないという人たちをどこまで取り込めるかが、大きな決め手だ。

 今こそ、その層に耳を傾けてもらい、「この人に入れようか」と思ってもらうことは、非常に重要。ワールドシリーズの試合中継でも両陣営のキャンペーンスポットが何度も流れるが、ハリウッドセレブもカマラ・ハリスを勝利に導くべく、あらためて表に出てきている。

 例えば、ジュリア・ロバーツは、ハリスの新たなキャンペーンスポットでナレーターを務めた。

 女性の有権者に訴えかけるこのスポットでは、ひと組の夫婦が投票場を訪れる。ブースに入ると、妻は、トランプ支持者と思われる夫に背き、こっそりハリスに投票。帰り際に夫から「正しい選択をした?」と聞かれると、妻は笑顔で「もちろんよ、ハニー」と答える。このスポットは、「ブースの中で起きたことは誰にもわかりません。それを忘れないで。ハリスと(ティム・)ウォルズに投票しましょう」というロバーツのメッセージで終わる。

 ウィル・フェレルは、コメディアンのビリー・アイクナーと一緒に一般人を突撃するコメディ動画を製作した。

 「Loud White Men for Kamala(うるさい白人男はカマラを支持する)」と書かれたTシャツを着たふたりは、ニューヨークの街角で歩く女性たちに近づき、「トランプに投票する人とセックスできますか?」と聞く。男性に対しては、「『エルフ』とトランプ、どちらの続編を見たいですか?」などと質問し、ハリスに投票するつもりだとの答が来ると、「うるさい白人男」の名にふさわしく、ふ相手をハグしたり、歓喜の声を上げたりして盛り上げる。

 さらに、アメリカ時間30日には、共和党員であるアーノルド・シュワルツェネッガーがX(旧ツイッター)を通じてハリス支持を表明した。

「通常、私は支持を表明しない。自分の意見は言うが、政治は嫌いだし、ほとんどの政治家を信頼しない」という言葉で始まる長い投稿の中で、シュワルツェネッガーは、「今はどちらの政党も好きではない」「耳をふさぎたい気持ち」と、本音を告白。しかし、アメリカのためにそれはできないと述べた上で、「私は共和党員である前にひとりのアメリカ人だ。だから、今週、私はカマラ・ハリスとティム・ウォルズに投票する」と宣言。最後には、「今週、投票しよう。そしてこのひどい状況を後にし、前に進もう」と国民に呼びかけた。

 シュワルツェネッガーは以前からトランプを批判していたので、すごく意外かというと、そうでもない。しかし、ハリウッドの超大物セレブであるだけでなく、カリフォルニア州知事も務めた長年の共和党員が民主党の候補者への支持を宣言したことの意味は大きい。

 サラ・ジェシカ・パーカーも、現地時間30日、「わが国への愛のために」「公立学校のために」「常識のある銃規制のために」「女性のために」「民主主義のために」「私の娘たちのために」「私の息子のために」「平等のために」「環境のために」とたくさんの理由を挙げつつ(その中には『私がテレビで演じる、ある子無し猫好き女のために』というのもある。もちろんキャリー・ブラッドショーのこと)、「私はカマラ・ハリスとティム・ウォルズに投票します」と、インスタグラムに新たな投稿をしている。

(サラ・ジェシカ・パーカーのインスタグラムより)
(サラ・ジェシカ・パーカーのインスタグラムより)

 ソーシャルメディアにはまた、先日、ニューヨークでの集会でトランプ支持者のコメディアンが堂々とプエルトリコに対する差別発言をしたことへの批判も多く見られる。

 プエルトリコ系アメリカ人のマーク・アンソニーは、現地時間28日、Xに動画メッセージを投稿。「忘れた人もいるかもしれないが、僕はトランプが大統領だった時のことを覚えている」というアンソニーは、トランプがハリケーンの被害への支援にストップをかけ、プエルトリコのことを「汚い」「貧しい」と呼んだことを挙げたつつ、「自分がどこの出身なのかは関係ない」「僕はカマラ・ハリスを支持する」と宣言している。

 コロンビア生まれの俳優でコメディアンのジョン・レグイザモも、トランプを批判するメッセージを複数投稿した。そのうちのひとつである動画で、彼は、「トランプは前からラティーノを嫌っている。僕らニューヨークのラティーノはみんな知っている。じゃあどうするべきか?彼のライバル、カマラに投票するんだ。一番痛いところ、つまり投票用紙で痛めつけるのさ」と、ラティーノの有権者に呼びかけている。

 ほかにも、アンソニーの元妻でやはりプエルトリコ系アメリカ人のジェニファー・ロペス、プエルトリコ生まれのリッキー・マーティンらが、ソーシャルメディアを通じてトランプに反撃している。

 しかし、これら影響力を持つセレブの声にどこまで実際の効力があるのかは未知数だ。事実、2016年の選挙では、ハリウッドを大きな味方につけたヒラリー・クリントンが、惜しくもトランプに負けている。その時の無念さは、8年経った今も薄れていない。

 それでも、ただ静観するわけにはいかない。パーカーのいうとおり、この選挙には、民主主義や環境など、とても大きなものがかかっているのである。6日先に迫った投票最終日まで、最大の努力が続く。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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