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名古屋めし「あんかけスパ」元祖のヨコイが60周年。コラボ商品は味も濃いがヨコイ愛も濃い!

大竹敏之名古屋ネタライター
あんかけスパンは11月3日、い志かわ覚王山本店、ヨコイ3店舗で発売

こってりピリ辛がクセになるヨコイのあんかけスパ

名古屋めしのひとつ、あんかけスパ。その元祖である「スパゲッティハウスヨコイ」(以下「ヨコイ」)が2022年10月で創業60周年を迎えました。「ヨコイ60周年 感謝還暦」と銘打たれたアニバーサリーイヤーは、様々な記念商品や企画が計画されています。

まずはヨコイのあんかけスパについて紹介しておきましょう。ヨコイは1962(昭和37)年、名古屋市中区で創業。初代の横井博さんは元ホテルの洋食シェフで、名古屋人の口に合うようにと開発したのがオリジナルのスパゲッティでした。決め手はこってりとろみがあり、ピリッとスパイシーなソース。このソースに合うように極太麺をラードで炒めるのも特徴です。

“あんかけ”という呼び名から誤解されがちですが(「あんかけスパは餡(あん)が乗っている」なんてトンデモ記事もありました)、ソースはミートソースとデミグラスソースの特徴を組み合わせたもの。肉や野菜を徹底的に煮込んで濾し、でんぷんでとろみを加えています。

パンチと奥深さのある味わいは、オープン当初から特にビジネスマンの男性から絶大な支持を得ることに。ほどなくこれにインスパイアされたメニューが名古屋中に広まり、あんかけスパは名古屋のご当地グルメになりました。

ヨコイのあんかけスパ。ハムと野菜をトッピングしたミラカンが一番人気。990円。名古屋市内に3店舗だが、レトルトソースが地元スーパーで大人気のロングセラーで、家庭であんかけスパを楽しむ人も多い
ヨコイのあんかけスパ。ハムと野菜をトッピングしたミラカンが一番人気。990円。名古屋市内に3店舗だが、レトルトソースが地元スーパーで大人気のロングセラーで、家庭であんかけスパを楽しむ人も多い

3度目の正直で商品化された“あんかけスパ+パン”

60周年企画でまず話題を集めそうなのが「あんかけスパン」。開発したのは名古屋の最高級食パン専門店「い志かわ」です。

「代表の石川(義孝)がヨコイさんのあんかけスパが大好きで、是非60周年を一緒にお祝いしたい!とコラボを切望したのがきっかけです」とは「い志かわ」企画運営の山中智之さん。

「あんかけスパのパンは、これまでにも2度チャレンジしているのですが、コロナ禍でとん挫するなど、いずれも実現にいたりませんでした。60周年を盛り上げたいと思っていたところ最高級食パンのい志かわさんが声をかけてくれて、すぐさま“やりましょう!”と共同開発することにしました」とはヨコイの3代目にあたる副社長・横井慎也さん。

最高級食パン専門店「い志かわ」山中智之さん(左)と「スパゲッティハウスヨコイ」横井慎也さん。両者の相思相愛の関係がユニークなコラボ商品の開発につながった
最高級食パン専門店「い志かわ」山中智之さん(左)と「スパゲッティハウスヨコイ」横井慎也さん。両者の相思相愛の関係がユニークなコラボ商品の開発につながった

お互いの思いが合致した商品開発のスタートでしたが、形になるまでは試行錯誤があったといいます。

「スパゲティ+パンでイメージされる焼きそばパンのようにコッペパンにはさむ案もまず浮かびました。しかし、麺を中に閉じ込めた方が驚きがあるし、四角い食パンの方が当社らしさも表現できる。そこで、ミニサイズのキューブパンを初めて使うことにしました」(い志かわ・山中さん)

難しかったのはソースとパンのバランス。当社のソースは“あんかけ”といわれる通りスパゲッティ用としてはかなり粘度が高いのですが、パンと組み合わせるとこれでも水分が多く、パンがソースを吸ってふやけてしまう。いろいろと試してもらい、パンの中の空洞の空き具合を工夫することで課題をクリアしました」(ヨコイ・横井さん)

ソース、スパ、パンの持ち味が並び立つ。家族用のギフトにも

キューブパンを割ると中からあんかけスパが出てくる。味はあんかけスパそのものだが、パンの小麦の香りや甘みによって、感覚的に辛さ控えめになる
キューブパンを割ると中からあんかけスパが出てくる。味はあんかけスパそのものだが、パンの小麦の香りや甘みによって、感覚的に辛さ控えめになる

こうして完成した「あんかけスパン」。筆者も早速、実食してみました。食パンをそのままミニサイズにしたキューブパンをふたつに割ると、まさしくあんかけスパが現れ、スパイシーなソースの香りがふわっと立ち上ります。口に運ぶともっちりした麺からソースのコクとピリ辛感が広がり、これは確かにヨコイの味。千切りのピーマンの青っぽい香りとほろ苦さもアクセントになっています。これらを包み込むのがふんわりと小麦の香りと甘みが漂うパン。ソース、スパ、パン、それぞれの持ち味がバランスよく並び立っています

あんかけスパのトッピングの定番、赤いウインナーが添えられ、そのサイズが大小不ぞろいなのもポイント。

「ヨコイさんの常連はビジネスマンが多い。その方たちがご家族へのお土産に買っていくことをイメージしました。大小のタコさんウインナーをお子さまと分け合いながら、一日を通してヨコイさんの味を楽しんでもらいたいのです」(い志かわ・山中さん)

赤いパッケージがかわいらしくプチギフトになる。赤いタコさんウインナーが大小異なるサイズにカットされているのにも理由がある。2個入り800円
赤いパッケージがかわいらしくプチギフトになる。赤いタコさんウインナーが大小異なるサイズにカットされているのにも理由がある。2個入り800円

ヨコイ・横井さんも「パンに包まれていることでソースがまろやかに感じられるのでお子さまでも食べやすい。私の3才の娘も初めて食べるあんかけスパがあんかけスパンでした。もちろん“おいしい!”と喜んでくれました」と、家族で楽しめる味だと太鼓判を押します。

発売は11月3日。最高級食パン専門店「い志かわ 覚王山本店」とヨコイ3店舗(名古屋市中区の住吉本店、錦店、名古屋駅のKITTE店)の4店舗のみで、11月中の木・金・土・日限定の販売となっています。

食品サンプル並みにリアル! コラボガチャガチャも発売

この他にもヨコイ60周年を盛り上げるコラボ商品が。ガチャガチャの「ヨコイミニチュアコレクション」もそのひとつです。これはカプセルトイベンダーのドリームカプセル(名古屋市)が企画したもの。あんかけスパの定番メニュー、ミラカンをはじめ6種類があり、これまた企画者の熱意が完成度の高さにつながっています。

ヨコイミニチュアコレクション。ミラカンはじめ5種類とソースだけが残った「ごちそうさまバージョン」がある。各400円。全国約40店のドリームカプセル店舗とヨコイ3店舗で10月20日発売
ヨコイミニチュアコレクション。ミラカンはじめ5種類とソースだけが残った「ごちそうさまバージョン」がある。各400円。全国約40店のドリームカプセル店舗とヨコイ3店舗で10月20日発売

「通常のカプセルトイは型抜きして上から色を塗るのですが、今回の商品は樹脂でつくった野菜やハムなどの具をひとつひとつちぎって盛り重ねているんです。ミニチュア玩具ではなく食品サンプルとしてもトップクラスのクオリティです」とドリームカプセル代表の都築祐介さん。

ディテールだけでなくサイズにも工夫が。ミニチュアのフィギュアは1/10~1/12サイズが主流で、それに合う大きさでつくるのだといいます。

「今は皆さん、ガチャガチャの模型とお気に入りのフィギュアを一緒に撮って、SNSに投稿して楽しむんです。だから大きすぎるとガクッと売れ行きが落ちる。あんかけスパの模型+フィギュアの写真を撮ってツイッターに投稿したら、ヨコイを知らない人は“スパゲティ、デカすぎるだろ!”とツイートし、それに対して名古屋の人が“いや、これがヨコイのサイズなんだよ!”とツッコミを入れる。大喜利みたいに勝手に盛り上げてくれるんです」(都築さん)。

メニューの再現度といい、ボリュームを熟知した上でのサイズ感といい、ここでもやはりコラボ企業の熱い“ヨコイ愛”が伝わってきます。

あんかけスパのガチャガチャはヨコイの3店舗で販売機を設置している他、全国に約40店舗あるドリームカプセルのショップで販売。また、同社Webショップでは6個セットも販売しています

「これからも、楽しい60周年企画をどんどん打っていきます!」とヨコイ・横井さん。味も濃いが、ヨコイ愛も濃い。あんかけスパにふさわしいこってり濃厚なコラボ商品やイベントがこの先も登場しそう。それらを楽しみつつ、名古屋で60年愛され続けるあんかけスパのおいしさを味わってみてください。

(写真撮影/筆者。フィギュア+ミニチュアあんかけスパの写真はTwitterドリームカプセル公式より転載)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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