今だけの100グラム10万円以上もする最高級食材とは? 究極ともいえる贅沢コース
最高級食材の白トリュフ
この時季の最高級食材といえば、何といっても白トリュフです。
秋から冬にかけて旬を迎え、キノコの王様であるトリュフの中でも最高の香りと値段を誇ります。最高品質のイタリア産の白トリュフであれば、100グラム10万円以上となっており、レストランでトッピングするとなれば、1グラム1,500円から2,000円が相場。白トリュフを食べたことがない人であっても、その希少性や価値は十分に想像できるのではないでしょうか。
白トリュフはガストロノミーには欠かせない食材であり、美食のフランス料理においては必須の旬材。ただ、高級な食材なので在庫リスクは非常に高く、信頼できる輸入業者とのパイプも必要なので、簡単に扱えるわけではありません。
このような白トリュフを用いて毎年素晴らしいコースを紡ぎ出しているのが、ANAインターコンチネンタルホテル東京「ピエール・ガニェール」です。
「白トリュフコース」を提供
「ピエール・ガニェール」は、世界的にレストランを展開するフランス料理界の巨匠、ピエール・ガニェール氏が手掛けるモダンフレンチ。2010年に開業して以来、ミシュランガイドで2つ星を獲得し続けています。
食通たちの舌を満足させる料理を生み出しているのが、エグゼクティブシェフの赤坂洋介氏。オープン時から腕をふるい、ガニェール氏からの信頼も非常に厚く、2011年にエグゼクティブシェフに就任しました。
この赤坂氏のもと、2020年11月3日から12月23日にかけて、白トリュフをふんだんに用いた「白トリュフコース」(42,000円、税・サ別)が提供されています。
前菜からデザートまで白トリュフ
その「白トリュフコース」の内容は次の通り。どのメニューにも世界で最高級とされるイタリア・ピエモンテ州の白トリュフが用いられています。
白トリュフコース 42,000円(税・サ別)
- 蕪のコンソメでリエした 白トリュフの香る泳ぐホタテ貝と甲烏賊 ウズラ卵のポーチドエッグを添えて
- 白トリュフの香るヴェルチェリー産カルナローニ米一年熟成のリゾットとパルメザンチーズ ラングスティーヌとイベリコハム アンディーブと共に
- 白トリュフの香るアルブフェラソースで絡めた ブレス産若鶏 カボチャのピューレ セップ茸のフリカッセとマーシュサラダ
- デザート
白トリュフとマカデミアンナッツの香るパルフェ・グラッセ 栗のスープとマンゴー
ココナッツの香るサントノーレ きな粉のクリーム 白トリュフのラぺ
白トリュフの香るシロップでマセレしたグレープフルーツルビーとジュレ セロリと共に
前菜からデザートまで、全てのメニューに白トリュフが用いられているのは圧巻です。白トリュフの総量はフレッシュなものだけで約10グラム。ペーストやみじん切りしたのものもあるので、そのボリュームには驚かされます。
「白トリュフコース」と名付けられていても、1皿にわずかな白トリュフのスライスとオイルが用いられているだけということも少なくありません。「ピエール・ガニェール」の「白トリュフコース」は、まさに本物の「白トリュフコース」であり、他とは全く別物であると断言してよいでしょう。
では、その白トリュフがふんだんに使われた料理を紹介していきます。
アミューズ ブーシュ
木製プレートで提供されるシグネチャーとなる最初の一品。5種のフィンガーフードに加えて、3種のチュイールが美しくプレゼンテーションされています。
黒トリュフとマロンのフィンガーフードもあり、シャンパーニュと一緒にトリュフの香りを楽しむとよいでしょう。
蕪のコンソメでリエした 白トリュフの香る泳ぐホタテ貝と甲烏賊 ウズラ卵のポーチドエッグを添えて
昨年からマイナーチェンジを施し、卵黄がウズラのポーチドエッグに新しくなりました。
甘味のあるホタテ貝とコウイカ、慎ましいカブのジュレとフレッシュなラディッシュ、そしてウズラのポーチドエッグに白トリュフのスライスといった構成。全て混ぜて食べると、複雑な調和が醸成されます。
白トリュフの香りは魚介類とも十分に合い、全てをまとめあげられる存在であるといってよいでしょう。
白トリュフの香るヴェルチェリー産カルナローニ米一年熟成のリゾットとパルメザンチーズ ラングスティーヌとイベリコハム アンディーブと共に
熟成させて食味を高めたカルナローニ米は、赤坂氏が「これこそがリゾットに相応しい」と探しだした米。口の中で粒は感じられるものの、芯は残らないので、リゾットに最適です。
大ぶりのラングスティーヌがいくつも入っているだけで贅沢ですが、そこにイベリコハムも合わせ、旨味が協奏しています。ラングスティーヌはしっかりとした食味を携えているので、細切りした白トリュフに負けておらず、力強い一皿に仕上げられています。
パルメザンチーズを砕いて食べると、食味も香りもさらに豊かになるでしょう。
白トリュフの香るアルブフェラソースで絡めた ブレス産若鶏 カボチャのピューレ セップ茸のフリカッセとマーシュサラダ
赤坂氏が最も手間暇をかけたというのが、このメインディッシュ。
フランス・ブレス産のプーラルド(肥育鶏)に、鶏の出汁やフォアグラで作られたアルブフェラソースが目の前で合わせられます。プーラルドは噛めば噛むほどに旨味が感じられ、非常にやわらかいです。
スライスされた白トリュフは非常に香り立ち、食味の優れたプーラルドがより洗練されます。
デザート
白トリュフが用いられた3種のデザートを同時に提供。
「白トリュフとマカデミアンナッツの香るパルフェ・グラッセ 栗のスープとマンゴー」にはスライスした白トリュフ、「ココナッツの香るサントノーレ きな粉のクリーム 白トリュフのラぺ」には細かく刻んだ白トリュフ、「白トリュフの香るシロップでマセレしたグレープフルーツルビーとジュレ セロリと共に」には細切りした白トリュフが用いられています。
カットの違いによって白トリュフの可能性を提示するのは、素晴らしいアイデア。黒トリュフであればチョコレートなどと相性が非常によいですが、白トリュフも様々なデザートに合うことが証明されています。
開催に至るまで
「白トリュフコース」のメニューは、どれも特筆するべきものばかり。これだけの料理を生み出したエグゼクティブシェフの赤坂氏に話を聞きました。
赤坂氏は「毎年事前に実物を確認してから購入しているが、今年の白トリュフは昨年に比べると、同じ値段で質は素晴らしくなっている」と説明します。
今年の白トリュフはクオリティが高いですが、実をいうと、当初は恒例の「白トリュフコース」を提供する予定がありませんでした。
新型コロナウイルスの感染が拡大しており、営業休止から再開した後は、営業日が限られている状況。営業日が少なく、外食が控えられている雰囲気であれば、せっかくの白トリュフが食品ロスとなる恐れがあるからです。
しかし、熱心なゲストから、今年も白トリュフを是非とも食べたいという要望が多かったので、例年の10月より半月遅れ、11月から開催するに至りました。
将来を考えるようなコミュニケーション
コロナ禍での苦労について、赤坂氏は次のようにいいます。
「オープンして以来、これだけ長い期間、休業していたのは初めて。しばらくの間、料理できない時期もあった。チームの中には不安をもっている者もいるが、取り巻く環境をよく理解してもらい、将来を考えるようなコミュニケーションをとっている。若いスタッフには積極的に賄いを作ってもらうなどして、モチベーションを保っている」
新型コロナウイルスという未曾有の感染症が拡大している中で、ホテルや飲食店は大打撃を受けています。テイクアウトやデリバリーも行われているものの、あくまでもそれは一時的なつなぎで、根本的な解決策ではありません。
赤坂氏は次のように続けます。
「コロナ禍にあって、ホテルや飲食店は、本当に必要であるのかと試されている。しかし、食はただ空腹を満たすだけのものではない。雰囲気も大切で、気持ちを満たしてくれる。コロナが終わったとしても、サステナビリティや食品ロスの問題もある。色々な問題はあるので、常にどうあるべきかを考えていかなければならない」
多くのレストランが営業を再開
ANAインターコンチネンタルホテル東京の一部レストランは、新型コロナウイルスの影響を受けて、しばらくの間、営業を休止していました。
中国料理「花梨」が6月3日、「ピエール・ガニェール」が6月4日、鉄板焼「赤坂」が6月15日、「ザ・ステーキハウス」が11月1日に営業を再開。
鉄板焼「赤坂」は9月5日にシェフズプライベートルーム「茜」をオープンし、「ザ・ステーキハウス」はアメリカンスタイルの「アフタヌーンティー・ブースト」を始めるなど、コロナ禍にあっても積極的に付加価値を高めようとしています。
そして「ピエール・ガニェール」もこういった時期だからこそ、多くの食通から愛されている白トリュフのコースを提供し、美食の灯火を消さないように努めているのです。
食事は単に空腹を満たすためのものではない
来年の「白トリュフコース」について、赤坂氏は「これまで組み合わせなかった素材でも、相性がよいものが、まだたくさんあるはず。白トリュフに色々な食材に合わせていきたい」と、未来に向けて力強い言葉を発します。
赤坂氏が先に述べた通り、食事は単に空腹を満たすためのものではありません。生物として必要不可欠な栄養であるだけではなく、人間としてかけがえのない文化や芸術であったり、人として日々の生活に潤いを与えたり、人生に鮮やかな彩りを添えたりするものです。
最高のレストランのひとつである「ピエール・ガニェール」で、最高級食材の白トリュフをテーマとしたコースが今年も提供されたことは、ゲストを幸せにするだけではなく、先行きのみえない飲食業界に大きな勇気を与えることになると、私は考えています。