ノート(31) 逮捕後初となる供述調書の作成状況やその内容
~解脱編(3)
勾留6日目(続)
堰(せき)を切ったように
この日の中村孝検事の取調べは、午後3時ころから午後9時ころまでの間、夕食を挟んで約5時間ほど行われた。予定されていた改ざん事件に関する自白調書の作成は後回しとし、まずは元上司らの関与状況などについて供述を進めた。
特に2009年の改ざんの件を誰がどこまで把握しているのか、2010年1月から2月にかけ、どのような経緯でこれを水面下に沈め、「過誤の可能性がある事案」だと話をすり替えることになったのか、といったことを中心に、記憶の限りで一通り説明した。
僕は早口の方だったが、いつにもまして早いスピードで話したので、中村検事のメモが追いつかないほどだった。これまでずっと供述を拒否してきたテーマについて全て話そうと決めたわけだし、捜査の大きな山場でもあり、限られた時間の中で少しでも多くの事実を伝えておきたいと考えたからだ。
不思議なもので、隠してきた事実をありのままに話していると、気持ちも晴れ、スッキリとした気分になっていった。おそらく僕は、憑き物が落ちたような清々しい顔をしていたことだろう。
犯人隠避罪?
もっとも、そもそも元上司や同僚、後輩検事らの行為が犯罪と言えるのか、具体的には、刑法の犯人隠避罪に当たるのか、という疑念は少なからずあった。この点、当時の刑法は、次のように規定していた。
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