ノート(30) なぜ元上司らの関与を供述する心境に至ったのか
~解脱編(2)
勾留6日目(続)
急展開
「今日は元上司の関与についても全てお話しします」
午後3時ころから始まった取調べの冒頭で、僕は中村孝検事にハッキリとそう述べた。
「自白調書へのサインと、元上司に関するお話しと、どちらを先にしますか」
次いで僕は、そう述べた。
前日の取調べでは、とりあえず改ざん事件後の状況を聴取するのは後回しとし、先に改ざん状況だけを自白調書の形でまとめようという話になっていたからだ。
「元上司の件から話してもらいたい」
突然の展開で驚いた表情を見せた中村検事は、少し間を置き、そう答えた。逮捕後の取調べで過誤ではなく意図的な改ざんだということを率直に認めていた僕だったが、元上司や同僚、後輩検事らの関与状況については一切の供述を拒否し続けていた。
勾留6日目となったこの日も、朝から独房で供述経過に関する供述調書案作りを進め、改ざん状況に関する自白調書にサインすることまでは決めていたものの、元上司らの関与を供述する気まではなかった。
しかし、既に取調べが始まる時には、彼らの件を含め、全て包み隠さず供述すると腹が決まっていた。なぜか――。
被疑者の心理
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